映画「秘密の森の、その向こう」〜喪失感を癒す物語
「人生の友達」と思える映画にまた出会ってしまった
セリーヌ・シアマ監督『秘密の森の、その向こう』(2022)
大好きな祖母を失った8歳のネリーは両親と共に、森の中の祖母の家を訪れる。母が少女時代を過ごした祖母の家を片付けることになったのだ。だが、何を見ても思い出に胸をしめつけられる母は、一人出て行ってしまう。
残されたネリーは、かつて母が遊んだ森を探索するうちに、同じ8歳の少女「マリオン」と仲良しになる。母と同じ名前の少女の家に招かれると、そこは“おばあちゃんの家”だった。
セリーヌ・シアマ監督は、『燃ゆる女の肖像』だけ見たことがありました。ゆったり流れる時間と自然の中で激しい感情のやり取りがあった映画だったという印象。
違っているけどとても似ていた。
フェミニズム、女性の連帯という括りだけでない人と人の気持ちの繋がりと、自然の中で自然の恵みを受けながら生きている人たちが描かれている。
「燃ゆる女の肖像」は海、「秘密の森の、その向こう」は森。
「秘密というのは言う相手がいないこと」
映画に出会うタイミング、ご縁というのは不思議。昨年、日本公開時ではなく、母をなくした今年出会えてよかった。身近な人を失った寂しさと喪失感に共感できて癒されたのかも。
ネリーの言葉、「秘密というのは隠すことじゃない、言う相手がいないこと。」
母が亡くなってから、言う相手がいない喪失感を幾度味わったろう。
監督の「子ども観」が感じられるおもちゃや遊び、衣装
そして、マリオンが8歳当時遊んでいたおもちゃがまたセンス良くて素敵すぎる。おもちゃも遊びもいわゆる「女の子遊び」ではないものばかり。
森で拾ってきたどんぐりや木の実を、クリスマスのアドベントカレンダーのような小さなおもちゃを入れる木製の棚に飾り付けて遊ぶネリー。
このおもちゃの木製の棚には8歳のマリオンの部屋に同じものがあって、オーナメントや小さい人形が飾られていた。
ママの部屋から見つけ出したパドルボールで裏庭で遊んでみる。
ネリーと8歳のマリオン(実はママ)がいっしょに遊んでいるのはフランスの伝統的なボードゲーム「小さい馬のゲーム」
ルドーだと思います。美しい。
子どもたちの青を基調とした衣装も中性的で可愛くて監督の「子ども観」というか、こだわりを感じた。