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短いもの

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#月

釣りをする顔面にともしび

橙々とした叢雲を掻い潜る月光下、銀色流るる川に竿のぶら下げたのがひとりふたり。やれ鱸が跳ねる、鯉が口をぱくぱくさせる、水面の無に立ち騒ぐ原は竿から伸びた釣り糸で。おっと、こりゃあ大物だぜ、月色の艶を纏った竹竿のしなり、足をぐっと踏み込んで恍惚。えいやっ。竹の節がぎしぎし。腰を低くして引き上げると、ずるずると暗闇の釣れに釣れて、引きずり込んで、星に舞い、月に謡い、蒼い魚の流れ星。お猪口に淡水、酒をつ

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うつらうつらする。

うつらうつらする。

うつらうつらする。

名月はもや

わたしはぼんやりと横に

空気の流るる音を聴く

音の流るるは

もやの中にあるから、うつらうつらする。

あなたのかお

あなたのて

あなたのこえ もう、うつらうつらする。

さいごのあなた

月見だんごのように

つめたくてやわらかくてあまい

あまいゆめをわたしにみせて

ああ、うつらうつらする。

なみだはおちない

もやになって月をかくすの

うつし

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