ビクトル・エリセ「マルメロの陽光」とモーパッサン「ピエールとジャン」の序「小説について」 ――日本語を書くために
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「ピエールとジャン」は、モーパッサンが1887年12月から1888年1月まで雑誌に発表した。それを単行本化するにあたって、「小説について」という小説論をこの作品の序として冒頭に置いた。川端康成が引用したのは、この「小説について」からであった。
モーパッサンが、なぜ小説作品の前書きに小説論をわざわざ配置したのかという疑問には、今は向かわない。「新文章読本」で川端康成が引用した「小説について」は、そこに書くことの要諦が簡潔に抜粋されていて、それは、なんらかのかたちで書