(連載16)巨大なフリマからインスパイアされたハンドバッグの作品群:ロザンゼルス在住アーティストの回顧録:1990-1991年
お話は、前回からの続きです。
ロザンゼルスの巨大なフリマ。パサデナのローズボールであります。
フット・ボール・スタジアムのまわりの駐車場に、2500軒以上のベンダーが並ぶ、月一回の、ご存知のアレです。
私にとってフリマというと、それまでは、ファッション雑誌などに、海外のフリーマーケット(フリマと当時はまだ、短縮してなかった)で、
オサレな人がオサレなものを、超破格なお値段でゲットして、もともとオサレな部屋に飾ってご機嫌!みたいな自慢話。。。
「そりぁ、あんたはそういう機会があるから、いいよねー。」ってジェラシー剥き出しで言いたくなるような。雑誌の切り口は、みな同じ。。。。。
しかし、ですね。このフリマはそんなレベルではなかったのです!!
アタシャ〜は度肝を抜かれました。
これ自体が一つの『宇宙』でした。
恋人と見上げる星が散らばる、宇宙
遥か彼方の昔から存在し、未来につながる、宇宙
生命体のロマンについて限りない想像を膨らます、宇宙
では、 な く て 。
目の前にある、 手の届く、 手で触れる事のできる宇宙。
目にも見えるし、形もわかる、
ただ目の前にゴロ〜ンと、何もしないで、昼寝しているだけの宇宙。
です。
そこに並んでいる、ほとんどのモノは、大量生産の排気口から噴き出された、以前は新しい希望に満ちた商品だったもの。(もちろん、そうじゃないモノもありますが)それが、なんの因果か、そのパサデナのフリマにわんさかと大集結した。
つまりここに、アメリカ社会で使われていた過去のモノ達が、時空を超えて自分の目の前に、並んでいるという現実世界。
そのモノ達は、生み出された時代も違い、存在の目的も違い、色も形も質感も、すべてが違うのに、驚くべき事に、他と比較できない、同じ等しい輝きと、カオス=混沌を持っていた。
そして、それが、
一つの調和を、美しく保っていたのであります!
それはまるで、美術館や博物館のようでした。
そして眺めて鑑賞するだけでなく、
すべてが、買えるもの!(時々はタダみたいな値段で)
つまり、
見て
触って
家に持って帰れる 宇宙です!!!
これって、スゴくないですかぁ〜〜〜〜〜???
そしてまた、資本主義社会の中では、コマーシャリズムにそって作り出された、モノの価値基準が渦のよう我々を取り巻いていて、気がつかないうちに、我々の日常は、その中心に向かって巻き込まれている。
でも、その渦からはじき出されたモノ達。
それが集まっているこの場所では、その渦自体に、強い求心力があるわけでもなく、一人一人が、それぞれの価値観にそって、取引されています。
それまで、私はパリやロンドンなどのフリマ経験はありましたが、ヨーロッパなどでは、主に「アンティーク」を買う場所という「価値基準」がやはりありましたし、それなりの相場もある程度決まっていたように思います。
しかし、このローズボールのフリマは、何に価値があって、何に価値がないのかというような、指標の振り幅が限りなくデカい。
何が骨董品か?ビンテージか?でさえ、本人次第。つまり、てんで、バラバラで、骨董品から粗大ゴミが「同じレベルの存在感」をふりまいている。
つまり。
価値はアタイが決めるんや!
ですよ。
((((((((素晴らしい!!!!!!!!))))
このキャッチが、アタイの脳に、グサっと〜〜と突き刺さり、
パノラマ・レベルで、想像力のマップを最大限に横へ広げていったのであります。
当時は今のようなネットの情報がなくて、相場もわかりにくかったので、余計に、信じるのは自分の目と直感だけでした。このスリルに満ちた決断の連続。そして、一期一会の出会い。。。。
その頃はまだ90年代でしたから、アメリカが実際に物を作っていた時代の良質な「メイド・イン・USA」も、たくさんありましたし、小さい頃、アメリカのテレビ番組でしか、見た事なかったものや、「こんなもの、何に使うんだろう?」と思うモノも多くありました。
とかく「用途がわからないモノ」というのは、形自体からの刺激が受信しやすいですので、クリエイティブな想像も、ガンガン膨らみます。
そうやって、アメリカの古くて新しい歴史や、学校では教えてくれなかったカルチャーを、自分のファイルに吸収してゆきました。
そんな中で、特に私の目を引いたものは、ヨーローパのイメージを模倣したようなアメリカのデコラティブな装飾品でした。
もともとアメリカのルーツはヨーロッパなので、そのイメージのコピーのようなものがたくさんあって、本物のアンティークとはいえない、ちょっと軽い。。。。ヨーロッパの歴史の積み重なった重厚な部分を削ぎ落として、子供向けにしたような、(たとえば、ディズニー・ランドがいい例です。笑) そんな軽いプラスティックのオーラを放っているものに、私は目がいきました。
なんせ、自分の子供時代は、バービーのドール・ハウスはプラスティックだったし、そのドール・ハウスの装飾の部分はバロックでした。つまりオリジナルのコピーのコピーのコピーで、育ってますからねー。苦笑
ローズボールで売っている天使の飾り物なども、ヨーロッパのコピーのコピーのコピーで複製しすぎて、天使の顔がやけに、ま〜るく、ホリが浅い顔になっていたりとか。笑
そういうヨーロッパの複製のアメリカのイメージにアメリカの独特のオリジナリティがあるようにも感じました。
またロヲザ・ルナティックの頃に好きなテーマだった、
人形は人間のコピーなのか?それとも、実は人間が人形(つまり今だったらロボットやアバター)を模倣しているのか?
そんな「複製」というコンセプト
にも、大変そそられました。
おかげで、その時のアパートはこんなプラスティックなバロック状態!
(トッシュの電話に注目!!こんな時代でありましたよ。。。。)
そして、前回も申しましたように、私のハンドバッグ・プロジェクトは、フリマで買ってきたモノや、その形や材料からアイデアを発展させたものばかりとなりました。
遅くなりましたが、さっそく、お見せいたします!
洋服の作品もそうでしたが、このハンドバッグから、一つのお話が展開していくような。これ自体が一つのストーリーになっているようなテーマのバッグです。
例えば、これ。
シアター・バッグ
カーテンが中心からの開閉可能で、中にものが入れられます。ハンドルは、古いヤカンのハンドルの部分ですー。
これは、元々はウクレレですが、
ギター・バッグ
本体は、もちろんフリマで調達。全体に黒い生地を貼り、肩にかけられるような皮のベルトをつけて、 ボディが開閉できるように、ジッパーを取り付けました。
中は、人工芝で敷き詰めて、オルゴールを取り付け、開けると同時に手がクルクル回り出します。
ジッパーをつけるのが、極ムズ。。。。かった。
これはバッグの中にバッグが、またその中に。。と。いう複製コンセプトの
バッグ・イン・バッグ・イン・バッグ・イン・バッグ
たまたま一つの額縁からインスパイアされて、作った作品。
これは、二番目のフレームの部分だけが、フリマで見つけたオリジナルで、それ以外は全部、イチからそれを模倣して作りました。一番外側は、リノリウムの床材、周りはビーズを固めたもの。ハンドルは、もちろんヤカンであります!笑
鍵穴バッグ
(今見てみると、全てのタイトルが、見た目のまんま!で、すみません)
中には鏡がついていて、鍵穴から覗くと自分の目が見えます。
この内側は、ドールハウスの壁紙です。
鳥籠バッグ
上部の部分で開け閉めできる様になってます。
鍵やクレジットカードは真ん中の穴に収納できる、使う人の身になった
消費者フレンドリーなデザイン!!
これはフラットな針金を、一本、一本、手で同じ角度に曲げて作ったのでした。ま〜、当時はヒマだったんだな〜。笑
自分でいうのも、なんですがー、笑
このハンドバッグのシリーズは、なかなか評判がよく、あの!ビバリーヒルズのティファニーがウインドウに飾ってくれました。
じゃ〜〜ん。
この写真、なんだか、自分のバッグより、お店の名前の方がデカイわ!!笑
そんなこんなで、やってるうちに、
今までやってきた洋服の方は、どうなってたのだろうか?と。
ご心配の方???。。。。。
たぶん、誰もいないと思いますがぁ。。。。。苦笑
この頃、どうなってたのか?
それは次回にお話しします!
引き続き、よろしくお願いします!!
つづく。
L*
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