お金じゃ買えない「時間」を創るには
新聞記者として10年くらい働いた後、僕は今のITベンチャー企業に2017年8月に入社した。
良くも悪くも昭和の気質と仕組みを今も脈々と守り続ける新聞社から、平均年齢20代のスタートアップ・ベンチャーへの転職は、大きな方向転換だった。
人から話を聞いて、形にして、発信するという基本的なフレームワークは変わらない。
でも、ウェブやモバイルで読んでもらうための編集や、フックとなるクリエイティブの作成、配信後のSNSでの拡散、グーグルアナリティクスを使った計測など、新聞記者時代にはなかった仕事が今はいくつもある。一つ一つが新鮮で、人生いくつになっても勉強だなと感じながら働いている。
実は、仕事の内容以上に大きな変化と得難い価値が、スタートアップへの転職で生まれている。
35日間の自由な時間を創出
前職はオフィスまで片道最低2時間半、往復5時間はまじできつかった。事情があって引っ越しもできず、通勤時間は苦痛でしかなかった。よく死ななかったなあと思う。
今は会社まで自転車で20分、往復40分だ。なぜ劇的に通勤時間が短くなったのか?答えは単純明快、通勤電車が嫌だったので、家に近い会社を選んだからだ。
前職との通勤時間の差は1日あたり260分、1年間の通勤日数をすこし少なめに見積もって235日(休日130日)とすると、削減した通勤時間は少なくとも1年間で5万1700分=861時間=35日間に上る(!)。
前年に比べ、1ヶ月以上、僕は自由な時間を新たに創出したのだ。時間はお金では買えない。プライスレスな価値だ。
スタートアップは職場に近い場所に住むことを積極的に推奨している企業が多い。僕らの会社の場合、徒歩圏内に住むと毎月2万円の職住近接手当が支給される。そのため、社員の9割が徒歩15分圏内に住む。僕はこれでも遠い方なのだ。
たくさん仕事ができるというのもあるだろう。会社の費用面でもプラスのインパクトがある。だがそれ以上に、人生の限られた時間をどう過ごすかを考えた時、通勤時間の短縮は大きなメリットになるということを、多くの起業家が自然と理解しているからだと思う。
今の会社に転職する前は、スタートアップは時間に忙殺されて大変かもなあと覚悟していた。しかし、実際は、たしかに忙殺されることはあっても、通勤時間の短縮分と満員の通勤電車に乗らなくても良いという負担軽減分がそれを上回り、体力や気持ちの余裕がむしろ生まれている。
1年間の通勤時間を計算してみよう
いろいろな事情で遠距離通勤を余儀なくされる場合もあるだろう。電車の中で本を読んだり有意義に過ごしているという主張もあるだろう。
でも、通勤時間の短さを基準に会社を選ぶこともできる。リモートワークだって今は選択肢に入ってきた。
多様な働き方を受け入れる土壌があることは、企業の魅力アップにつながり、中の人もみんな幸せになる。
仮に今、あなたの往復2時間の通勤が1時間になっただけで、1年あたり235時間、9.7日もの自由な時間が生まれる。その時間は何をやってもいいのだ。
もう一度言う。時間は買えない。二度と戻ってこない。
さらに、会社はあなたが費やした通勤時間について何もケアもしてくれない。
であれば、自分からその時間を勝ち取るための引っ越しや転職というのも、今の時代、僕は全然ありだと思う。実際、僕のクオリティオブライフは劇的に向上している。
通勤時間を減らしてお金じゃ買えない時間を得ることができれば、例えば副業で稼ぐとか、趣味の時間をたくさん持つとか、家族や恋人と過ごすとか、勉強するとか、次の価値の創出につなげられる。
僕はこれからも家と職場が近いことを価値基準として仕事をするだろう。もう通勤電車で毎日消耗するのはごめんだ。
ちょっと今の1年あたりの通勤時間を計算するところから、ぜひ始めてみてほしい。けっこうな割合ではっとさせられると思う。いやほんとに。平成最後の夏に人生変わるから。