ストレッチの効果・効能
ストレッチの効果・効能として、身体が柔らかくなったり、肩こりが改善される、などは聞いたことがあるかと思います。なぜストレッチで身体が柔らかくなったり、肩こりが改善されるのでしょうか? ストレッチには次の3つの効果があります。
1つ目の効果として「関節の動きづくり」が挙げられます。人間の身体には「骨」があり、この骨が繋ぎ合わさった「骨格」が土台となり身体を支えています。そして骨と骨とを繋ぐ「関節」が動くことにより人は身体を動かすことができます。骨を動かすのは骨に付着している「筋」です。例えば、膝を伸ばす際、大腿の前面に付着する筋である大腿四頭筋が収縮して膝を伸ばします。大腿四頭筋が膝を伸ばす主な筋群となるので、”主働筋”として働きます。しかしこの際に大腿四頭筋群のみが短縮収縮して膝が伸びているわけではありません。
主働筋には必ず拮抗するもう一つの筋もしくは筋群があり、関節を動かす際には必ずこの”拮抗筋”も同時に働きます。一つの筋が単独で関節を動かすという事はまずありません。膝を伸ばす動作を考えた時、大腿四頭筋の拮抗筋群にあたるハムストリングスが”伸びて緩んだ”時に、初めて膝を伸ばすという動作が可能になります。いくら大腿四頭筋の収縮が強くても、拮抗筋であるハムストリングが硬く、充分に伸びなければ膝は曲がったままです。つまり関節も硬く曲がったままということになります。この場合、ハムストリングをストレッチする事により、短縮と伸張のバランスがとれ、関節の可動域が拡大して初めて膝が伸びるのです。このようにストレッチは関節の動きを発揮しやすい条件をつくりだすのです。
2つ目のストレッチの効果は、「筋の長さを整える」ことです。では、筋の長さが整っているとはどのようなことをいうのでしょうか?
主働筋と拮抗筋を例に考えると、電柱のように立っている一本の骨を、前からは主働筋が、後ろからは拮抗筋が付着していると想定します。主働筋、拮抗筋ともにバランスが整っていて長さが同じであればこの骨は真っすぐに立つ事ができます。いわゆる筋バランスが良い状態です。逆に筋バランスが整っていない状態になると、例えば主働筋が硬くて短くなり、拮抗筋がそれに引っ張られるように長くなってしまった場合、真っすぐ立つはずの骨は、真っすぐに立つ事ができずに硬くて短い主働筋の方向に傾いてしまいます。
筋のアンバランスがある場合、骨が傾き関節が正しい位置に収まることができず、背中が丸まってしまう猫背や内股、ガニ股といった不良姿勢となります。この姿勢で日常生活が続けば、ストレスとなり、コリや痛みの原因となります。逆に拮抗関係にある筋バランスが整えば、姿勢改善や日常生活における身体へのストレス軽減や怪我の予防にも貢献します。
3つ目のストレッチの効能として「筋のポンプ作用」が挙げられます。筋には”ミルキングアクション”という反応があります。筋には血管が通っていますが、通っている血管は自分で動く(収縮する)力はないので、周りの筋に頼っています。筋が縮む、伸ばされるというポンプのような動きを繰り返す事によって血液を循環させて心臓へと戻しています。これを筋ポンプ作用、”ミルキングアクション”と呼ぶのです。もしこの筋ポンプ作用が機能しなかった場合、血液がうまく身体を循環することができず、活動が減少し、「むくみ・こり・冷え性」などといった症状につながっていきます。他にも、血液は栄養を身体の各組織に運ぶという重要な役割がありますから、これがうまくいかなければ疲れやすくなったり、身体の回復が遅れたりといった問題が起こります。ここで活動が低下していたり縮んでいる筋にストレッチをかけて動かしやすい状態にしておくと、筋ポンプ作用が活性化し、血液循環を促進させることができるのです。これによって身体に溜まっていた老廃物なども循環されて疲労も溜まりにくくなります。
美しく、しなやかに開脚するためのストレッチについて
開脚が出来る人をみて、羨ましい!って思ったことはありませんか?広範囲で開脚ができる=身体がしなやかで美しい、と連想させるほど開脚には魅力があります(バレリーナのように開脚でき過ぎるのも問題ですが)。さて、そんな開脚ですが、何をすればあんなに開くようになるのでしょうか?それは「一部位に対して長時間のストレッチを行う」ことです。伸ばしたい部位に長時間ストレッチを行い、軟部組織(筋、靭帯、腱、関節包)に持続的な力を加えることにより、可動域を広げます。研究ではターゲットの筋肉に20分のストレッチを行ったところ、可動域が5°広がったという結果が報告されています。加えてストレッチ後の2分後には元の硬さの50%に戻り、30分以上すると元の硬さに戻ったという結果もでています。このような結果から、可動域を大幅に向上させるには、できるだけ長い時間かつ頻繁にストレッチすることが有効だと思われます。ただ、例えば筋トレ前などはあまりやり過ぎると、筋の収縮を妨げるおそれがあるため、静的ストレッチはあまりしない方が良いです。
関節可動域(ROM)とは?
「関節可動域」は英語ではRange of Motion(レンジ・オブ・モーション)と表記します。「Range=範囲」で「Motion=可動」という意味です。つまり関節が動く範囲を意味します。例えば、肘を目一杯伸ばした状態から完全に曲げた状態を肘関節の関節可動域(ROM)と言います。この関節可動域は各関節に存在します。”関節可動域がアップ”=”可動する範囲が広がった”という事です。 ストレッチは関節可動域(ROM)をアップさせるのに効果的です。関節可動域を広げるには通常より比較的長い時間かけてストレッチするのが効果的なようです。可動域が広がれば、筋トレもより効果的になります。
柔軟性はどのくらい必要?
日常生活において関節可動域(ROM)をいっぱいに広げて行う動作というものはありません。そのためストレッチで必要以上に関節可動域が広がっても、あまり意味がないということになります。例えば、仰向けに寝た状態で片膝を伸ばしたまま脚を上げていって、つま先を頭の方の床へ着けるとします。いわゆる縦に行う股割りみたいなものですね。果たして日常で片足を頭の上まで上げる動作があるでしょうか?つまり、ストレッチで縦股割りのような関節可動域を手に入れたとしても、日常で使わなければ無駄な可動域といえます。必要以上に関節可動域を広げる事はあまり意味がないと言えます。逆に広がり過ぎると怪我につながることもあります。