地銀再編とメガバンク

地銀大再編(高橋克英)と地銀大再編(東洋経済ビジネス新書)を読んでいる。タイトルは同じであるが、内容としては前者がコロナ前の各地銀の施策について、後者がコロナ中にいよいよ地銀がピンチに陥っている様子が書かれているという点が違う。

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現在、低金利政策や、少子高齢化、地元産業の衰退によって例え県内の地銀が1行になったとしても収益的に存続が難しい地域が存在する

そのような地域もコロナ前にはインバウンド戦略や、航空機産業・鉄道産業へのアプローチ、移動型店舗によって、着々と対策を進めていた。また、多くの地銀が海外、特に中国に支店を持ち、ビジネスチャンスをうかがっていた。地銀関係の本は多く出版されているが、コロナ前は口を揃えて「インバウンドが地銀を救う!」と唱えていたように思われる。

しかし、それらもコロナによって、ほとんどが白紙状態に。
預金貸出残高も政府が推進した実質無利子、無担保融資によって増大したが、問題は貸倒れだ。Go to キャンペーンも一時的なもので終了し、いよいよ地方にお金が回る気配はない。
海外支店も多くは中国の上海や香港にある。香港の情勢については全く未知数だ。

唯一希望があるとすれば高齢者向けの金融商品でとにかく手数料を稼ぐくらいだろうか。また、ヘッドハンティングされた運用のプロによって収益を伸ばしてもらう事、あおぞら銀行の事業にもあるように、金融機関向けに営業された金融商品から収益を得るという方法もある。

地銀の生き残りは、そこに住む地域の人々の暮らしにも影響する。分かりやすい例がATMだ。よくメガバンクのATM障害が問題になっているが、にも関わらず株価が暴落する訳でも無い。これはATMの存在そのものが銀行にとって負担であり、ATMの銀行における収益源としての重要性が減少しているからである。

幸い地銀は近くの県同士でシステムを共通化している所が多く、仮に統合したとしても障害は起きづらいだろう。しかし、今までのようにATMを稼働し続けるだけの体力が今後残っているかどうかは分からない。利用が見込まれる地方都市部はメガバンクのATMが残っているが、では過疎部に地銀がATMを置けばいいかというとそれも難しい。都市部であればメンテナンスや現金輸送は比較的容易であるが、過疎地になればなるほどその手前は増える。
多分銀行からしたら全員ネットバンキングを利用して、その上で不正送金をする輩が全員居なくなれば天国だろう。

また、法人に対しては貸し渋りも考えられる。体力が無い中で、リスクの高いものに貸し出す事は出来ず、信用金庫もそれは同じだろう。

では地銀や信用金庫が無くなってしまうかといえば、そんな事はあり得ない。何故なら過去に何度も公的資金の注入により救済され、特に県に一つしか地銀が無い場合は救済せざるを得ないからだ。

信用金庫も信用金庫法によって存在が保証されている。労働者の観点から見れば、不況の時こそ地銀や信用金庫が強いとはそういう事である。

個人的な見解ではあるが、メガバンクが地方から撤退を始めている中、地銀が踏ん張らなければ地方は産業が衰退して、さらに人が減少する悪循環に陥ると考えている。既に陥っているかもしれない。

メガバンクが地方創生を推進する事は難しい。実際地方と言いつつも、東京や地方都市に対して行った支援ばかりが取り上げられている。SMBCのように社内ベンチャーを立ち上げ、その中で地方創生を専門とした事業を担当させるのが妥当か。

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