委託調査報告書の使い方(備忘録)
経済産業省は、経済に関するあらゆる分野の調査をコンサル会社等に委託している。そして、納品された報告書は誰もが見られるホームページに掲載されている。
経済産業省「委託調査報告書のご案内」
https://www.meti.go.jp/topic/data/e90622aj.html
報告書の情報の粒度はまちまちであるが、普通の企業に勤めている会社員が、プロジェクトを進めるにあたり参考にできるレベルの情報が揃っている。
今回は自分の備忘録代わりに、使い方を記載したいと思う。
1.内容がビジネスに直結するもの
内容自体がビジネスに直結する報告書がある。例えば、TMI総合法律事務所(五大法律事務所の一角)が毎年報告している「主要国・地域における貿易措置等の国際ルール整合性に関する報告書」は、タイトルからも分かるとおり、外国にある企業と貿易をするためのルールブックとして参照できる。
他にも、各国の人権リスクに関する法令や、データの越境流通(外国に個人情報を送る際の保護)に関する規制概要をまとめた報告書が存在する。
これらの報告書は「法律事務所」や「事務所」とHP掲載一覧から検索をかければすぐに出てくる。なお、ルールは常に変わり続けるため、年度はなるべく新しいものを参照することが望ましい。
2.調査手法がビジネスに役立つもの
内容自体は自分のビジネスに直結しないものの、調査手法が役立つ報告書もある。
例えばアビームコンサルティングの報告書では、調査手法が時系列、対象ごとに整理されており、別の分野でも考え方がそのまま使えることが多い。
アビームコンサルティングが行なった令和4年度の要件定義に関する調査は、調査対象や項目が整理されており、また調査結果を踏まえた個別の検討も行われ、電子化をどのように実行するかという観点で有意義な報告書となっている。
アビーム以外に参考になるものとしては、リベルタス・コンサルティングや、企業評価総合研究所の報告書では、どのようなシート等で調査・評価を行ったか、参考資料が掲載されている傾向にある。
実は、いわゆる有名なコンサル会社よりも、メジャーではない機構や、研究所の方が、手法については積極的に開示していることが多い。
そのため、調査手法に困ったら、上記のような機関が出している報告書を片っ端から読むというのも一つの手である。
3.おまけ
報告書は、その機関が最も得意とする分野のものを参照した方がいい。例えば、ファッション・ブランドならローランド・ベルガー、ニッチな研究分野なら企業が持つシンクタンクといった形である。
また、委託元がどこかということも重要である。例えば、委託している担当課が大臣官房だと概要的な報告書が求められ、それ以外では専門的な報告書が求められる。
このように、どこが報告しているか、誰が報告を求めているかといった観点にも注意を払って報告書を読むと、自分にとって本当に使える情報を無駄なく収集することができる。