サーチ・インサイド・ユアセルフ(Search Inside Yourself)を読み終え
Googleで開発されたSearch Inside Yourselfの開発者が書いたこの本、一通り読み終えた。今まで読んだ本の中で、一番の本だ。
いまも、何度も読み返しているぐらい。この俺を虜にさせる本。というか、奥が深いのと、内容が濃いので、一度では理解しきれない部分もあるのだが・・・33年の我が人生に重要な役割を持たせてくれる本。
マインドフルネスとは・・・
マインドフルネスとは、私の自身の理解では「自分自身を、価値判断なく、客観的に観察・管理できる能力」といったところだろうか。自分の心中にある感情、情動を主観的に捉えるのではなく、外から見るような形で捉えると言った感じ。
要は、自分自身を知るということ。自分自身の長所、短所、過去、そして「今」を明瞭に把握すること。
マインドフルネスを鍛え自分自身を知れば、何も裏付けののない自信となり、そして他者を思いやる(Compassion)、そして共感をする能力の土台となる。マインドフルネスは、日常生活、ビジネス、人間関係、そして人生の大きな基礎となる。
Search Inside Yourself とは
Search Inside Youself(SIY)とは、GoogleのエンジニアであったChade-Men Tan氏が、Google在籍中に開発したマインドフルネスに基づくEQカリキュラムだ。元々は、Google社内のエンジニア向けのプログラムであったが、現在はTan氏自身が設立したSearch Inside Yourself Leadership Instituteが中心となって世界中でSIYを教えている。
この本は、SIYで教えているカリキュラムの内容を、誰もがアクセスできるように書籍化されたもの。
人類の叡智の集約
この書籍は、いわば人類の叡智を集約し、誰もが理解できるように解釈(翻訳)されたもの。そして、それには科学的な裏付けもなされており信頼のおけるものとなっている。この基礎となっているものが、瞑想であり、マインドフルネスである。
この本には、単に読み物的な部分だけでなく、エクササイズが用意されている。これは、1人できるものあれば、複数の人と一緒に行うものもある。そして、このエクササイズを通して、マインドフルネス、コミュニケーション、セルフモチベーション、リーダーシップ、共感力などといった能力を向上させることができる。
わたし自身、全てのエクササイズをやったわけではないが、エクササイズの内容を確認する限り、どれも効果のあるものだ。記述されているエクササイズを忠実に行えば、間違えなくマインドフルネスを始めとした能力が向上するだろう。お気に入りのエクササイズは「ボディスキャン」である。
実生活の中でのマインドフルネス瞑想
エクササイズは、フォーマル(形式的)なものと、インフォーマル(非形式的)なものに分類される。フォーマルなエクササイズは、いわばジムでのトレーニングや、陸上ではドリルのようなものだ。そして、インフォーマルなエクササイズは、実生活のなかで実践するもの、いわば本番と言った感じだ。
そして、この本で用意されているエクササイズは、日常生活や仕事のなかでも、利用できるように工夫されている。先日参加したマインドフルネスワークショップで体験した「呼吸」「歩く」「食べる」といった人間の基本動作で行う瞑想から、スキマ時間を使った瞑想など、使えるシチュエーションはたくさんある。「歩く」を応用すれば、「走る」瞑想も可能だ(←これは、日常のトレーニングの中で採り入れて実践中)
そして、読み物的な部分は、非常に面白い。科学的な解釈や、エピソード、そしてエクササイズを通してどのような効果があるのかが丁寧に解説されている。そして、何度も読み返してしまうぐらい、内容が濃くて、読めば読むほど、色々な気付きを得られる。
瞑想・マインドフルネスを実社会に浸透させる
「瞑想」や「マインドフルネス」という言葉を聞くと、どうしても「宗教」「スピリチュアル」といった特定の人たち向けのような印象を抱く人が多いと思う。
しかし、瞑想やマインドフルネスの効果は、超自然を信じるニューエイジ信奉者のような、特定の人たちだけに留まってならない。誰もが、隔たりなく、日常的に当たり前のようにマインドフルネスを使用できる環境・社会にしていかなければならない。
そのためには、マインドフルネスを科学の一分野にしないといけない。「信じるものは救われる」的な要素ではダメで、科学的な裏付け、効果を明示しないと浸透しない。近年、科学の発達により、脳を可視化する技術ができたため、瞑想の効果がようやく科学的に実証できるようになった。
あと、個人的な意見だが、やはり瞑想を効果的に行う技術、手順、そしてそれを裏付ける科学的なエビデンスといった部分は、公に無料もしくは格安で公開しないといけない。
瞑想は、大昔からあり、人類の共通の財産だ。そして、過去そして現在を生きる偉人たちの叡智が、集約されたものがSIYなのだ。著者であるメンさんも、「私が創ったものではない。わたしは、これらの叡智を、私でも理解できるように翻訳しただけ」と本書のなかで言っている。
現在、IT産業・技術がここまで発達したのは、基幹となるテクノロジー・ソフトウェアが無償で公開されているためだ。これをオープンソースと呼ぶ。オープンソースは、そのソフトウェアのコードを誰もが無料で見られるようになっており、自由に使用したり、改良したりすることが可能だ。そして、それらが繰り返して、いま皆さんの手やポケットの中に入っているiOSやAndroidになっている。macOSやUNIX、Linuxだってオープンソースの技術が使われているんやで。
SIYでは、僅か約2,000円で人類の叡智を翻訳したものが手に入る。これは、非常に凄いことだと感じた。残念ながら、この分野では、知的所有権を謳い、それを高いお金でビジネスをしている企業や団体がまだまだ存在している。この分野のマーケットを広げるには、誰もが簡単にアクセスできるように敷居を下げないといけない。
もちろん、基幹的な技術・手順を公開したうえで、短期的に習得できる合宿やセミナーを企画して、それに対する対価を得るというのは有りだと思う。これは、以前読んだことのあるFreeという書籍にも通じる話だと思う。
総括
というわけで、Search Inside Yourselfは、自分の人生のバイブルのひとつとなりそうだ。シンプルだけど、奥が深い。
もっと、このSIYやマインドフルネスの輪が広がれば、いいなと感じた。私が、何年もやっているランニングやトレイルランニングのように、マインドフルネスのクラブやチームができると面白いと感じた。ほんで、著者のメンさんは、この本を通して、マインドフルネスの輪を広げて、人々がもっと幸せな人生を歩んで欲しいと願いを込めたんだと思う。
瞑想やマインドフルネスの分野に興味はあるが、いろいろあって踏み出せてない方は、まずはこのSearch Inside Yourselfを一読されることをオススメする。目からウロコ。