【ものづくり現場でドラッガー編7:総括】
*前回までの投稿は上のマガジンに入れています。
対話形式で製造現場での改善活動を通して、ドラッガーの言葉を解説していきます。
これまで勉強してきた紫耀(ショウ)の同期、雄大が現場マネジメントについて悩みを抱え先輩のタケルに相談し、これまで6回使ってドラッガーを勉強しながら実践し、マネジメント改善を目指してきました。今回、これまでの総括をして本マガジンは終了とします。
・・・・・・・・・
🧒;おはようございます。
👱🏼:おはよう。解説自体は前回で終わったけど、その後調子はどうだい。
🧒;だいぶ、権限委譲のための教育できてきました。でも、、
👱🏼:でも?
🧒;うそです。笑。今回は、“でも”はなくて、僕も育成や改善目標の設定・方針の作成など時間が取れるようになってきました。それと社内のES調査で部で一番の従業員満足度となりました。
👱🏼;そうか、それはすごいね。顧客価値を見いだせたということだ。よかったね。最初にあった時から、半年くらいかかったかな。早い方だと思うよ。
🧒;はい。ありがとうございます。今回、健さんに解説をしてもらいながら、自分でマネジメントを実践していきましたが、やってる最中はわからなかった言葉も、今になってやっと意味が租借でき始めた気がします。
👱🏼;そういうのはあるよね。ではこれまでやってきたことを総括してみよう。まずはマネジメントとは何かだったよね?
◆マネジメントとは何か
🧒;最初にマネジメントができていないって言ったときは、マネジメントがなにかってことを1㎜も考えたことないのに勝手なイメージでぼんやり悩んでいました。そこで、まず、ドラッガーのことを教えてもらって、マネジメントの定義について
「マネジメントとは、人の強みを生かして組織の成果につなげること」
と教わりましたけど、この時は、正直、なにを言っているのかよくわかりませんでした。
👱🏼;そうだったの?
🧒;なので、その後“テクニカルな部分も当然あるけども、人間的な部分を理解しなければならない”と言われても、なんだかピンときませんでした。
👱🏼;まあ、そうだよね。言葉だけでは所詮伝わらないんだよね。同じ経験をして、文脈をお互い理解できるようになる理解が深まるんだよね。
🧒:はい。わかります。例えば、今になると、ドラッガーの言葉、
「人は弱い。悲しいほどに弱い」
「マネージャーに必要なのは才能ではない。真摯さである。」
という言葉が、当時よりは実際の場面を浮かべながら理解できます。ただ、最初の時点でも今までぼんやり思っていたマネジメントというものは、何かやり方や考え方があるのだなということは理解していました。
👱🏼;そこが重要だよね。簡単にマネジメントといってしまうし、知ったところで当たり前だと思うこともあるんだけど、それをしっかり認識、考え方をもって進めていくことが重要だよね。でもこの時、一番気になったのは下記の言葉ではないか?
マネージャーの資質についての言葉、
-学ぶことのできない資質。後天的に獲得できない資質
-初めから身につけなければいけない資質が1つだけある。
-才能ではない真摯さである。
なんだこれはって思ったんじゃない?俺も最初そうだったよ。
🧒;そうですよ、よくわからないし、なんか、マネジメントの入り口から否定された気分になりましたよ。そんな気持ちのまま、「事業とは何か」、「顧客とは何か」ということを学び始めました。
👱🏼;最初は、みんな同じだよ。
◆「事業とは何か」、「顧客とは何か」
🧒:「事業とは何か」、「顧客とは何か」は私にとっては目からうろこでした。最初、
「あらゆる組織において。共通のものの見方、理解、方向付け、努力を実現するには、“我々の事業とは何か。なんであるべきか”を定義することが不可欠である」
「“顧客とはだれか”の問いこそ、個々の企業が使命を定義する上で最も重要な問いである」
って読んだときには、そりゃ、顧客は、商品を渡す取引先で、事業はモノを売ることだろうと思いました。でも、健さんに言われて自分の利害関係者まで考えた時、最も僕と接して、価値を提供しなければならない人は誰かを考えることが重要だと気が付きました。
👱🏼;そうだったね。
🧒;その結果。事業は“現場メンバーの作業を通して価値を取引先に提供すること”、目標は“現場メンバーを満足させかつ、設計されたものを既定の品質、最適化されたコストで納期通りに製品を造ること”と定義づけをすることができました。でも、これって”最終的に取引先に価値を提供するために効率的な組織にする必要があって、そのためにまず社内のメンバーを顧客としてとらえ、結果いい製品を作って客先に価値を与える”という合理的な考え方ですよね。でもこの時においてすごい反省があります。
👱🏼;そうだね。目標の設定のところだね。定量的な目標設定ができていない。確かに詰めがあまい。これは致命的なミスになることもある。でも今回のような題材では、定量的ではないにしろ決めたことに意味があるよ。問題の種類によってそれは異なる。そして、一度やってみて今自分で反省できているなら、次はさらに良くしていけばいい。だからあまり突っ込まなかったよ。
🧒;確かに、完璧なんてないし、振り返って反省する。それが重要なんですね。
👱🏼;その通り。それと定義は一定期間考え抜くことが一番大事だけど、その後は、あっている間違っているよりも、明確にすることが重要だ。この時もきちんと定義ができたから次に進めたよね。マーケティングにね。考えすぎて進まなくなってしまうのも良くないからね。
◆マーケティング
🧒;そうですね。この時は、その顧客となる現場メンバーの欲求・関心・期待は一体どんなものがあるんだい?って言われて、ちょっとドキッとしましたが、これはドラッガーの
-真のマーケティングは顧客からスタートする。すなわち、現実、欲求、価値からスタートする。
-我々は何を売りたいかではなく、顧客は何を買いたいかを問う。
をそのまま実践すればよかったです。でも、ヒアリングの際は、聞くのは良いが受け入れるのは別だという健さんの言葉は響きました。
👱🏼;そうか。その上で各リーダーのヒアリングを行ったんだよね。でもその時はメンバーのお互いの気持ちがすれ違っていて苦労していたね。
🧒;はい、皆プロで自分の経験や考えをもって話すからなかなか、コミュニケーションがうまくいかなくて、ドラッガーの専門家についての言葉
-専門家は専門用語を使いがちである。専門用語なしでは話せない。
-ところが彼らは理解してもらってこそ、初めて有効な存在となる。
-組織の目標を専門家の用語に翻訳し、逆に専門家のアウトプットをそ
の顧客の言葉に翻訳するのもマネージャーの仕事である。
という言葉が身に沁みましたよ。。こりゃ大変だと・・。いままでここから逃げていたわけだからうまくいかないわなと思いました。
👱🏼;そして、事件が起きたよね。
🧒;はい。クレームがでて、一人の三交代のリーダーが別チームのリーダーに対して、仕事に対して不誠実だって怒鳴ったんですよ。ただ、誰も不誠実な人なんていなくて勘違いだった。本人は下向いていて、、それで僕が説明をしようとしたら、統括リーダーがさらに大きな声で、「そんなやつはいない、品質・生産、両立させようとした結果であるだけだ」って言ったんです。それで、皆がアイデアを出そうとなって、チームがまとまるようになってきました。
👱🏼;ほんと、これあるよな。何か、変化起こそうとしたり、改善をしようとした時、最初は不満があってもみんな黙っているんだよな。しかし、それが進んでいく中では必ず、何かトラブルや難しさがでてくる。その時、不満が爆発して、ぶつかるっていうのがある。でもそれはほぼ必ず起こることで、実は改善が進んでいる証拠なんだよね。でも、そこで諦めてしまうと次に改善しよって言えなくなってしまう。実はこの時すごく大事なタイミングだったんだよね。
🧒:その時は、必死で何も考えられなかったですが、今となってはあれは必然でもあり、一つのターニングポイントだったと思っています。
◆つよみを活かす
👱🏼;そして、それなりにメンバー同士の信頼関係ができてきた上で、それぞれの強みを活かすことを考えたんだよね?
🧒;はい。この時は、まだ統括リーダーがまだ消極的であまり三交代リーダーたちに口を出したくないという状況でしたし、各リーダーたちも雰囲気は悪くないものの、自主的に何かするということはなかった時でした。
そこで、ドラッガーの言葉をまた参考にしました。
-人は最大の資産である。
-人のマネジメントとは人の強みを発揮させることである。
-組織の目的は、人の強みを生産に結びつけ、人の弱みを中和することにある
を教わって、マネジメント側での仕掛けが必要ってことに気づきました。その後、専門知識を持ったベテラン統括リーダーとやる気に満ち溢れる若手リーダーで組んでもらって改善を行っていきました。
👱🏼;ここでさらに工夫をしていたよね。成果の見える化を行って、「自己管理目標」を設定させていたね。
🧒;はい。ドラッガーの言う、
「自己管理目標は強い動機付けをもたらし、最善を尽くす願望を起こさせる」
という言葉を参考にさせてもらいました。
👱🏼;ここで非常に重要なマネジメントを実施しているよね。ドラッガーは「実践」、「責任」、「結果」と言っているけど、ここでは、「競争」、「結果」、「責任」、「協調」という言葉にちょっと変えて言及した。これはマネジメントにとって非常に重要な内容だ。どんなチームでもこの4つをうまく機能させれば結果が必ずついてくる。君は、OEEという稼働効率の指標を使って、各チームで実践・競争させ、リーダーに責任を与えて、結果を見える化、そして知識の共有をさせた。これはものすごいマネジメントだよ。よーく、覚えておいてほしい。
🧒:そうなのですか。。ありがとうございます。そこまで深くは考えていませんでした。
◆イノベーション;
👱🏼;そして、段階的に改善していくことはできるようになっていったから、飛躍的に改善するというイノベーションについて次に解説したね。製造現場ではやはりイノベーションというものは難しいけども、概念としては持っておくべきだよね。
🧒;はい。ドラッガーにおけるイノベーションの定義は、
「イノベーションとは、新しい満足を生み出すことである」
であると言っており、さらに
「マネジメントによって、停滞に対して抵抗する組織を作ることが最も重要」
と言っている。つまりイノベーションを促進するマネジメントが必要だっていっているんですよね。
👱🏼;その通りだ。そして、一つの例として、ザゴールのTOCを解説したね。これは、是非別のマガジンで確認してほしい。そして、他業種の改善の展開がイノベーションへのヒントになるということも説明をしたよね。君はその後、回転ずしに行って、新幹線レールを見て、自分の工程の緊急品オーダーの管理の改善を実施していたね。これは素晴らし他業種の横展開だ。
🧒;そして、イノベーションというのは、確率を伴うもので、ドラッガーも
「真のイノベーションは成功1件に付き99件の失敗がある」
と言っている。ということも教えてくれました。要するに可能な限り確率を上げて挑戦しまくれってことですよね。
👱🏼;その通りだ。
◆トップマネジメントと権限委譲
🧒;はい。そして、イノベーションを勉強した後、トップマネジメントについて解説してもらいました。この時私は、チームの状況改善でき始めたものの、すべてを自分で抱え込んでしまって、自分が首が回らない状態になっていたんですよね。
👱🏼;そうだったね。自分が決めることと、任せることがごっちゃになっていたよね。そこでドラッガーのトップマネジメントに関する言葉を解説したね。
-トップマネジメントのメンバーは担当分野において、最終的な決定権を持たなければならない。
-自らの担当以外の分野について、意思決定を行わない。
-攻撃しあってはならない。
-トップマネジメントはチームである。
🧒:そして、これに付随して権限委譲についてのドラッガーの言葉も解説してもらいました。
-「現場のマネジメントの仕事を可能なかぎり大きなものとして最大限の権限を与えるということは、意思決定を可能なかぎり現場に近いところで行うということである。これは、従来の権限委譲の考え方とは根本的に異なる。」
-「マネジメントの仕事は、下から決めていかなければならない。生産、販売、設計の最前線の活動からスタートしなければならない。」
-「あらゆる権限と責任が最前線にある。彼らにできないことだけが上層にゆだねられる。いわば、最前線のマネジメントが組織のDNAである。上層の機関のなすべきことは、すべてそこで規定される。」
-「最前線のマネジメントにできないことを期待しないこと」
このトップマネジメントの立ち位置と権限委譲の言葉で、現場で起きて事実をつかめることは現場に任せて、自分にとっての現場、つまり全体の方向性や長期的な活動に関して、私が責任と権限を持つべきだと腹をくくることができました。
👱🏼;そして、さらにどうしたっけ?
🧒;役割の明文化です。ドラッガーは、これについて
「担当する仕事について行うことのできない決定は、すべて明文をもって明らかにしておかなければならない。他のことについては、すべて権限と責任を有するものと解さなければならない。」
実際はそんなにすべてはっきりとは分けるのは難しいですけど、役割のオーバーラップ部分があったとしても、それを認識し、まず明文化を意識していくことが重要ということですよね。
👱🏼;その通りだ。そして、権限委譲のための事前準備、つまり教育も怠ってはならない。
🧒;はい。ここまで来て、やりきってみて、やっと真摯さということの重要性が腑に落ちたってところでした。やっぱり、逃げずに考え続けて、めげずにやりきってみるっていうのは真摯さがないとできないですね。でも、これって俺は養えるものだと思いましたね。なんとかしたいという思いがあって、今回のようにサポートというか、羅針盤をもらえれば頑張れると思います。そうやっていくうちに考え抜こうという姿勢が育っていく気がします。もちろん私はまだまだ全然だめなんですが。
👱🏼;そうかもしれないね。俺もそうだよ。
◆総括
🧒;でも、これまでやってきた
-マネジメントの定義の理解
-事業とは何か、顧客とは何か
-マーケティング
-強みを活かす
-イノベーション
-トップマネジメントと権限委譲
というのは、言われればその通りで特別すごいことをいっているわけではないんですよね。でも、見落としがちな、本質の部分を突いてくる。そして、実践するには人間的の心の部分を理解する必要があることも、暗黙知のように教えてくれる。だから、ドラッガーの本は読まれ続けているのだなと思いましたね。そして、読んで実践することにこそ、意味があるんですね。
👱🏼;そうだね。俺も定期的に読んでいるけど、常に自分の足りない部分に気づかされて常に改善に挑戦しているよ。さて、これまで6回にわたってきた説明してきたドラッガーはここで終わりだ。お疲れ様。引き続き頑張っていこう。
🧒;ありがとうございました!これからも頑張ります!!
・・・・・・・・・・
今回は、まとめとしてこれまで紹介したドラッガーの言葉とマネジメント改善の流れを一挙に説明しました。最後の方に書いていますが、特別すごいことを書いているわけではないのですが、日々忘れてしまいがちな本質がたくさん書かれているのがドラッガーの本だと思います。ただ、ここでの内容は、本当にほんの一部でしかないので是非自分でマネジメントを読んでいただくことをおすすめします。私も定期的に読んで復習をしていきたいと思います。今回でこのマガジンは終了です。ありがとうございました。次のマガジンは、製造管理者にも、もちろん必須の管理会計を対話形式を使って解説していきたいと思います。ぜひフォローお願いします。
なお、今回は下記を参考に投稿をしております。
#製造
#現場
#理論と実践
#ものづくり
#トヨタ生産方式
#リーン生産方式
#改善
#かんばん
#7つのムダ
#TOC
#制約理論
#ザ ゴール
#マネジメント
#ドラッガー
#もしドラ
#OEE