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【自工程完結編1:自工程完結という考え方】
本マガジンは「自工程完結編」です。
ご存じのようにこれまでトヨタは、トヨタ生産方式を展開し、世界で確固たる地位を築き、その生産方式自体米国でも研究され体系化されリーン生産方式としても名をはせています。そんなトヨタがさらに仕事の質を改善するため、10年以上にわたって取り組んでいる「自工程完結」について対話形式で解説していきます。自工程完結とは、「良い仕事しかできない(やり直しがない)、良いものしか作れない(作り直しがない)という条件は何かということを徹底的に科学的に実現しようとする」考え方です。
さて、今回は過去のマガジンで心理的安全性を学んだ、製造課長の正輝が再登場します。
ある時、課内の工程主任であるの流星(若手)が現場への仕事指示の仕方、仕事の進め方で苦労しているところを目にします。そこから自工程完結の指導を実施し、実際の導入に取り組んでいきます。
・・・・・・・・
現場リーダー;流星さん、なんだよ。これじゃないんですか。先日の改善結果の報告したいからデータほしいって言ったじゃないですか?
👱(流星) ;あ、はい。そうなんですが、ここまで細かいものは上の人に話してもわからないので、もう少し全体をまとめたものでよかったのですが、、大丈夫っす。この資料があれば私の方でまとめます。
現場リーダー;なら、いいっすけど。じゃ、お願いします。ちゃんと指示してくださいよ。。
カスタマセンターリーダー;おーい、今日中にやっておいてお願いした商品別納期リストって完成しました?
👱 (流星) ;あ、すみません!いま対応しています。急ぎます。
カスタマセンターリーダー;あと、当然、納期リストにその期間に受けられる最大数量の項目も記載しているよね?
👱(流星) ;あ!抜けています。追加します・・・。
👨(課長の正輝);あ、ごめん。流星、今度、来月の改善勉強会のスケジュールや内容考えておいてくれた?
👱 ;あ、はい大丈夫です。
👨;あ、あとあの会議室抑えにくいけど大丈夫だった?今回人数多いから他の部屋だと難しいぞ。
👱 ;あ、会場確保忘れていました。今取ります・・・。あ、、、もう予約されていました・・。どうしましょう。
◆基本的なことが、実は職場ではできていない。
👱 ;はぁ・・。だめだめだなぁ・・。
👨;どうした。さえない顔して?ちょっと時間いいか?
👱 ;はい。時間、大丈夫です。すみません。ミスが多くて。しっかり現場に指示が出来ていなかったり、受注からの宿題できていなかったり、さっきの会議室の予約だって。
👨;それはミスってことではないのではないかな?それに、そんなに落ち込むことはない、だれしもそういうことがあるし、どの職場にもあるといっていいだろう。そして、それは改善もできるし、課長の私の責任でもある。
👱 ;え?どういうことですか?
👨;今君が言ったことが起きた理由は、下記の6つのうちのどれかが理由なんじゃないか?
1 .何のために資料をまとめるのか 、 「目的 」の共有がない 。
2 .どんな資料をまとめるのか 、 「アウトプットイメ ージ 」を共有していない 。
3 .どうやって資料を作るのか 、具体的な 「手順 」が共有できていない
4 .それぞれの仕事で 、どういう状態であれば大丈夫なのかが共有されていない 。
5 .仕事に必要な情報を漏れなく把握できていない 。
6 .手順やル ールには 、なぜそうするのか 「ワケ 」があるのに 、勝手に判断してしまう 。
👱 ;あ、はい。すべてが当てはまってしまう気がします。
👨;ああ、そして、上記は言ってしまえばすべて基本的なことだ。実は、同じようなことがほかのプロセスの主任でもちょこちょこ起きていてさ、この課ではその基本的なことができないと認識したほうがいいと思っているんだ。だから、私の責任だ。やり直しや資料の作り直しは大きな無駄だよな。そして、同じことが現場で起きていることも知っている。だから、ちょうどトヨタの言う「自工程完結」の概念をここにも導入してみようと思っていたところなんだ。
◆自工程完結という考え方
👱 ;トヨタ、、自工程完結?
👨;仕事の質を向上させるためにトヨタが取り入れた考え方だ。作り直しや、やり直しという状況を生み出さないために必要な事項を洗い出し組織に落とし込む取り組みのことを言う。それを自工程完結と呼んでいるんだ。これは現場にもスタッフにも適応できる考え方なんだ。そしてこれは、トヨタ生産方式のJITおよび自働化を支える考え方なんだ。
👱 ;そうなのですか。トヨタ?そんな一流どころで基本的なことができていないなんてあるのですか?
👨;今はないかもしれない。だが2010年頃までは少なくともあったそうだ。きっと今はかなり改善しているはずだがな。当時は現場でもあったし、特にスタッフ部門で多く発生していたそうだ。実際に工場からスタートしたこの活動は、主に品質管理の検査の部分で成果を上げて、生産現場での成果をスタッフ部門にも広められないかということで、2007年から「自工程完結」トヨタの会社方針となったんだ。
👱 ;全社方針・・・。現場だけでなくスタッフすべてに展開ということですね。仕事の質を高める手段であると。
👨;そうそう、ところでさ、この考え方に興味ない?導入するトライアルを一緒にやってみたいと思っているんだが。
👱 ;まだ概念的でイメージがなかなかわかないですが、仕事の質を上げていけるのであればぜひチャレンジしてみたいです。
👨;そうか、ありがとう。今回、活動の参考書として下記の本を使わせてもらおうと思っている。
著者の佐々木さんは、トヨタの副社長にまでなった人だ。そして、品質管理出身の人で、この自工程完結という考え方を自ら社内に広めていった張本人だ。この本はまさにこの概念の創始者が書いた教科書だ。2015年に出版されている本で、目次は下記のようになっている。
序章;トヨタが今、全社で取り組みを進めている「自工程完結」という考え方
第1章;トヨタのリーダーたちに求められる新しい仕事の考え方は、いかにして生まれたか
第2章;「自工程完結」にすると、どうして成果が出せるのか
第3章;新しい考え方のツールはかつてのトヨタのリーダーたちにあった
第4章;「自工程完結」をスタッフ部門に浸透させるために何をしたか
第5章;トヨタのスタッフ部門では実際にどのように「自工程完結」は活用されているのか
第6章;「自工程完結」はトヨタに何をもたらしたのか
おわりに;大事なことはぶれることなく続けていくこと。
👱 ;なるほど。興味が湧いてきました。
👨;スタッフ部門の部分にも入っていくが、まず第一章を解説して、現場管理の部分から取り入れていこうか。
ーーーーそんな時、流星の電話が鳴る。ーーーーー
👱 ;もしもし、はい、はい。え?本当ですか?まさか、あれだけチェックしているのに??
👨;どうした?
👱 ;カスタマーセンターから連絡があったのですが、客先向けの品質レポートの数字と客先の受け入れ検査での数字が異なっているみたいなのです!!どんな管理しているんだと客先からクレームの電話が入ってしまったようです。。。ちょっと、情報確認してきます!失礼します。
👨;やはり、起こってしまったか・・。この問題をきちんと対応して「自工程完結」の導入をしていかなければならないな。じっくり、現場にも事務所でも取り組みを進めていくとしよう。
・・・・・・・・・
今回は導入編ということで、自工程完結についてざっくりと記載しました。最初に記載したコミュニケーションのトラブルは結構あるあるなのではないでしょうか?自工程完結は、現場作業者にも事務所のホワイトカラーにも適応できる考え方です。次回から具体的なエピソードを入れながら活用方法について解説していきたいと思います。仕事の質を上げていくという点でに興味がある方は、チェックしてただければ幸いです。
下記の固定記事に、このnoteのコンセプト、これまでのマガジンについて説明しています。ご興味あればスキ・フォローいただければ嬉しいです。
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