マガジンのカバー画像

サブカル小説『クローサー』

5
鯛巻めきめ杯応募作品。ポストパンク・サブカル小説。こんなのだけど、超頑張って書いた。
運営しているクリエイター

記事一覧

クローサー  (5)

クローサー  (5)

■クローサー(1)■
■クローサー(2)■
■クローサー(3)■
■クローサー(4)■

 あれから2週間が経った。
 ポストをパンクさせた老人は逮捕され、悪臭で問題になっていた家は行政が立ち入り清掃作業が行われた。
 逮捕時に側に倒れていた集配員の男は、怪我の治療を受けつつ取り調べが行われたが、俺達との喧嘩については詳細を隠した様だった。

 俺は相変わらずケーキ屋でバイトしつつ、夜はクローサー

もっとみる
クローサー  (4)

クローサー  (4)

■クローサー(1)■
■クローサー(2)■
■クローサー(3)■

 はしゃぐ蔓押、ムニエル、マスターに怒りを向けたのは、あの集配員の男だった。
 どこを探しても老人が見つからない。
 深夜になっても捜索を続け、なお諦めきれない彼は、公園で一休みしていたのだった。
 そこへ馬鹿馬鹿しく騒ぎながらパン食い競争を始めた蔓押らが現れた。
 気が立っていた彼は、第三のビールを飲みつつ、 彼らをベンチからじ

もっとみる
クローサー  (3)

クローサー  (3)

■クローサー(1)■
■クローサー(2)■

「ぶっ殺してやる……!思い知らしてやる……!」
 男は歩き、顔を強張らせ独りごちた。
 すれ違った中年女性が恐ろしげに男から距離を取る。
 男は血走った目で前を睨みつつ、時折殺す殺すと呟きながら歩を進める。
 狂った老人と掴み合いになり、汚物に塗れた集配員である。
 彼は老人を自力で捕まえる事を諦めていなかった。

 老人は未だに検挙されていない。
 

もっとみる
クローサー (2)

クローサー (2)

『前章 クローサー(1)』

「ポストパンクは終わった。いや分かってた!だが遂に今日破滅した。終わりなんだ!もう、この音楽は何の役にも、何の助けにもならない!」 マスターは激高し叫ぶ。 正直よくある事だが、今日は一段と様子がおかしい。「いやいやいや!」「落ち着いて下さいよー」「終わりなんだ!!!」 マスターは大声で吠え、カウンターのグラスを勢いよくスライドさせ、床に落として割った。

 先週来た時

もっとみる
クローサー  (1)

クローサー  (1)

 蔓押 寧(づるおし ねい)は困った男だ。
 気分屋で、思い立ったらすぐ突拍子もない事をおっぱじめる。
 酔っ払うとさらに行動が予測できない。
 そしていつも大体酔っ払っている。
 泥酔して、路上で寝転ぶ事などはしょっちゅうだ。
 気持ち良く酔っ払ってニコニコしてるかと思いきや、ふとした事で激昂して見知らぬ人に喧嘩を吹っかける事もある。
 家に帰る電車賃が無いと言うから、小銭を貸してやっても、3分

もっとみる