プレゼンテーション2

身のこなしで外見がグレードアップ -メディアが見たイメージ戦略 vol 10- :『PRIR』寄稿記事

※本記事は『PRIR』 2月号(2006年)に掲載された日野江都子の寄稿記事からの転載です。

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2019年9月19日現在の所感

コンサルティングを通じ、目的に即し、状況を踏まえつつ様々なアドバイスとそれを実行しやすい方法を長年ご提供している中で思うこと。

先日も、日本では調達できないアイテムをコンサルティング先のクライアント用に、NYで見繕い発送した。このように目的を果たすために必要な「物」は、筆者が探し出し、入手し、お届けすることができる。なぜならこれらはパーツだからだ。しかし、それだけではエグゼクティブ・プレゼンスは完成しない。ポスチャーやジェスチャー、身のこなしなど、その方自身の本体の動きという、取り付ければ良いパーツではなんともできない事柄は、こちらのアドバイスをどれだけ理解し、本人がそのことから目を背けずに現状を把握し、それがなぜ改善すべきかの理由を理解し、目的を果たすにあたり適切なことを意識して行動に移していく必要があるからだ。そして、それを継続することで体になじませ、自分の当たり前=日常にする必要がある。それが「身についている」ということなのだ。

「プレゼンの時にはこうすればいい」「人前に出た時にはこうすればいい」というポスチャーやジェスチャーのテクニックを習い、頭で「わかっている」「知っている」という方は多いだろう。しかし、「できている」人は本当にわずか。「知っている」と「できる」の間には、雲泥の差があるのだ。

自分の現状を知らないのであれば、知ることから始めればよい。知っていてもできていないのであれば、できるように行動すれば良いのだ。しかし一番厄介なのは、「知っている」ことを「できている」ことと勘違いしているケース。この場合、どれだけ具体的かつ理論的にアドバイスをしても、聞く耳を持つことはない。「知ってるんだ」というプライドが邪魔をする。否、できていない自分をどこかでわかっているのだけれど、認めたくないのだ。この時点で、残念な結果が待ち受けている。せめて少々違っていても「やっている」のであれば、具体的に望ましい方向へと導くためのリードをして差し上げることはでき、良い結果に限りなく近づいているのに。

身のこなしは語る。やはり行動し、体が示すことに、「その人の真実がある」と見た人は一目で判断する。そして、とってつけの動きやポーズを、人は思いの外、いともたやすく見抜く。身のこなしとは、幾億もの上手な言葉にも勝る。いつの時代も。

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イメージを形成するのは五感の中でも視覚的な要素が大きいことは、ご承知のとおり。そのためにアピアランスによるイメージ戦略が、人前に出る機会の多い経営トップにとって、非常に有効で取り入れる価値のある事柄であることをお伝えしてきました。

その中でも、中心としてきたのはビジネス上の装いに関して。ビジネスパーソンのイメージが作られやすく、誰もが身に着ける物であるビジネスウエアだからこそ、ビジネスパーソンのイメージ戦略には不可欠であり、基本中の基本といえるからです。

しかし、アピアランスによるイメージ戦略は、服装だけでは完成しません。外見イメージにおいて非常に重要なのが身のこなし。体が作り出す動作は、その人の性質や生活の中でついた癖など、とても本質的な面を表し、どのような人なのか予測させるだけの大きな材料になります。

体型と顔立ちがそっくりの2人が、まったく同じ服を着ていたとしても、ちょっとしたしぐさによって、それぞれの個性の違いははっきり見て取れるほどに、身のこなしはイメージに大きな影響を与えるのです。そしてこれは、衣服のように着替えることで簡単にイメージチェンジできるものとは違い、付け焼き刃が効かないからこそ、外見イメージの信ぴょう性を高くしていると言えるでしょう。

この身のこなしの良さで、勝利を手にした人がいます。それは第6代アメリカ合衆国大統領になった、ロナルド・レーガン氏。70才にあと数日という、歴代の大統領の中で最高齢での就任でした。その大統領選で彼と競り合っていたのは、当然ながらレーガン氏よりも年若い立候補者。ケネディ対ニクソンの大統領選のときもそうであったように、お年を召した立候補者と若々しく精悍(せいかん)なイメージを与える立候補者がいれば、後者の方が有利です。

しかし、レーガン氏は大統領となったのです。そこにあった効果的なイメージ戦略のひとつが身のこなし。

それは、各地を遊説で回る際に、移動で使用する飛行機から降りるときのこと。ただTVカメラなどに向かって手を振りながら笑顔でゆっくり降りてくるのではなく、大きな笑顔を浮かべながら、タラップを「タタタタッ」とかけ降りたのです。

その軽快な身のこなしは、若々しくアクティブで生き生きした印象をTVで見ていた視聴者に与えました。 もちろん服装にも十分配慮されていましたが、どんなに完ぺきな装いであっても、身のこなし次第では、すべて台無しになります。例えば、どんなに実年齢が若くても、動きが緩慢だったり背中を曲げてトボトボ歩けば、疲れて老けた印象になりますし、反対にどんなにお年でも、姿勢が良く歩き方がさっそうとしていれば、肉体年齢の若さを感じさせ、非常にエネルギー値の高い印象になるということなのです。それに、このようなシャキッとした動きをする体にこそ、装いが映えるもの。

身のこなしは、すべてのアピアランスによるイメージをより一層効果的に、確固たるものにします。

まずは皆さんも、背筋をすっと伸ばし、顔を前に向け、いつもよりほんの少し大きな歩幅で、ゆったりとリズミカルに歩いてみてください。すべての外見イメージが一瞬にして活力を増し、グレードアップすること間違いありません。


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