柳田国男『遠野物語』と『遠野物語を読む』
柳田国男『遠野物語』 大和書房 1982年13刷 /『遠野物語を読む』 青土社 現代思想7月臨時増刊号
例えば井戸尻考古館などを訪れて縄文時代と記紀神話の関係が気になっていたし、考古学と民俗学の関係も気になっていた時にこの『遠野物語』を再読したくなってきた。また書店でタイミングよく『遠野物語を読む』という本を見つけた。
有名?な柳田国男の序文「願わくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ」に魅入られ三島由紀夫がここに小説があった、と絶賛した「丸き炭取なればくるくるとまはりたり。」にめまいがした。
現在では語りの保存活動とかサイクリングで遠野物語のスポットを巡ろうとか、『遠野物語』のルーツは縄文文化にあるなどすっかり観光産業となっている。確かに六八話には「矢の根を多く掘り出せしことあり。」とか112話には「あまた石器を出す。」など遺物を掘り出す話もあるし、この本が世に出た明治の頃にはまだ縄文時代に起源を持ち、連綿と受けつながれてきた風習や言い伝えが色濃く残っていても不思議はない。
現代思想『遠野物語を読む』は赤坂憲雄、三浦佑之、藤井貞和他各界30数人からの寄稿で、民俗学はもちろん神話学、心理療法、近代文学、アイヌ文化との関りや柳田国男自身について多様な考察が特集されている。