ぐーるど☆

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最近の記事

ゴールデンカムイ 野田サトル

集英社ヤングジャンプコミックス  生まれて初めてこんなにたくさんのシリーズ本を購入した。いや、まだしている。  知人に勧められたり、縄文時代の研究史にアイヌ(コロボックル)が出てくるために興味を惹かれて読みはじめたが、ハマっちゃった。  なぜか第15巻が重複しているし、まだ終わりでない、30巻以上あるようで少しづつ読み進めている。  あらすじは一切省略するが、アイヌには北海道アイヌ、千島アイヌ、樺太アイヌと居住地域で呼ばれる人たちがいること、少なくとも日本の中では歴史的に和人

    • 「蜜のあはれ」「われはうたえどもやぶれかぶれ」 室生犀星

      2016年2月 第30刷 講談社文芸文庫  「蜜のあはれ」は金魚の赤子役の二階堂ふみと年老いた作家役の大杉漣のキャストで映画化され、それを観てこの本を手に取った。”遠くで消滅するキラめく光芒”のような生命。毎朝、人間の女の子になって「おじさま」と戯れる赤い金魚。このまるでメルヘンのような物悲しい物語に魅入られる「おじさま」は少なくないのではかなろうか。  室生犀星がこの物語を生む、恐らくキッカケとなったフランス映画の『赤い風船』(Le Ballon Rouge)もメルヘンのよ

      • 納屋を焼く 村上春樹

         「バーニング」という韓国映画に触発されて原作の「納屋を焼く」を読んだ。30ページのこの短編は、僕の彼女の恋人から、2か月に一度他人の納屋を焼く、という話を大麻を吸いながら聞いたことが鍵となっている。これがいうところのミステリかどうかはわからない。  それより、この短編から詩情あふれる脚色と映像を紡ぎだした、イ・チャンドンという監督に敬意を払いたい。とても良い映画だ。  主人公の僕と突然不在となった僕の彼女とお金持ちの彼女の恋人。  最も染み入ったのは彼女の哀しみ、と彼女の恋

        • 考古学の散歩道 田中 琢・佐原 真著

          1997年4月 第13刷 岩波新書  もう覚えてもいない昔、この本を購入して読むこともなく本棚の奥にしまってあったのを先日、発見した。考古学とは何を研究する学問なのか、以前は専門的な知識はなかったが民族学や民俗学、ひいては考古学(と思われること)に興味があった。  今、改めてこの本を読んで考古学の難しさが若干ではあるけれど理解できたような気がする。考古学における国際化とは何か、特に海外に発信することに意欲的でなかった日本の状況、戦争、大規模な他社の殺戮を伴う争いはいつ始まっ

          或る「小倉日記」伝 傑作短編集(一) 松本清張著

          平成29年9月80刷  新潮文庫    この本に納められている12の短編は、いずれも男と女の愛憎や執着、下積みから這い上がろうともがく人々の姿が描かれている。  僕が手に取ったのは、「断碑」「笛壺」「石の骨」などの考古学を舞台とする短編を読みたいと思ったからだ。考古学ほどアマチュアと学閥が拮抗し、時にはアマチュアが以前の学説を覆してしまうような学問はないだろう。それだけに、功を焦り、嫉妬に振り回されることがあるようだ。  他にも鴎外の事績調査に生涯をかける薄幸の息子とそれを支

          或る「小倉日記」伝 傑作短編集(一) 松本清張著

          堀 辰雄ー郷愁の信濃路とレンブラント

          『燃ゆる頬・聖家族』堀辰雄著 新潮文庫/『菜穂子・楡の家』堀辰雄著 新潮文庫/『かげろふの日記・曠野』堀辰雄著 新潮文庫/『大和路・信濃路』堀辰雄著 新潮文庫/『風立ちぬ・聖家族他三篇』堀辰雄著 旺文社文庫 堀 辰雄は1904年(明治37)堀家の跡取りとして生後まもなく麹町に住んだ。17歳のころ旧制高等学校で神西清と親交を結んだ。同期には小林秀雄、深田久弥がいた。その後、肺結核を患い療養した軽井沢は、堀の作品の舞台となった。堀は荻原朔太郎や芥川龍之介をはじめ、ジャン・コクト

          堀 辰雄ー郷愁の信濃路とレンブラント

          マルセル・デュシャンについて

          『THE ESSENTIAL DUCHAMP デュシャン 人と作品』フィラデルフィア美術館/『マルセル・デュシャンDUCHAMP』ジャニス・ミンク TASCHEN/『マルセル・デュシャン全著作』ミシェル・サヌイエ編 北山研二訳 未知谷/『マルセル・デュシャンとは何か』平芳幸浩著 河出書房新社/『デュシャンとの対話』ジョルジュ・シャルボニエ著 北山研二訳 みすず書房 美術が好きで例えばルネサンスやシュール・レアリズムなどの区分でもいいしルーベンスとかゴヤとか特定の画家や彫刻家

          マルセル・デュシャンについて

          老いらくの恋

          「荒地の恋」ねじめ正一著 文春文庫/「コーヒーと恋愛」獅子文六著 ちくま文庫/「悲しみよ こんにちは」フランソワーズ・サガン 新潮文庫/「蜜のあわれ・後記 炎の金魚」室生犀星著 講談社文芸文庫/「つゆのあとさき」永井荷風著 岩波文庫 「荒地の恋」については以前にも書いたが、一緒に公開した「あちらにいる鬼」はどうにも好きになれなかった。なのでもう一度この本を含めて想いやることにした。 「荒地の恋」の明子、「コーヒーと恋愛」のモエ子、「悲しみよ こんにちは」のセシル、「蜜のあわ

          老いらくの恋

          ちょっとPopな哲学入門書 5選

          『読まずに死ねない哲学名著50冊』平原 卓著 フォレスト出版/『J ポップで考える哲学』戸谷洋志 講談社文庫/『僕とツンデレとハイデガー ヴェルシオン・アドレサンス』堀田純司 講談社文庫/『シュレディンガーの哲学する猫』竹内薫+竹内さなみ 中公文庫/『武器になる哲学』山口 周 KADOKAWA 哲学なんてちゃんと習ったこともないし、サラリーマンやってた時も退職して第二の人生を送り始めたときにも救いの手を求めたこともない。まあ、怪しい新興宗教がなんでこんなに流行ってしまったの

          ちょっとPopな哲学入門書 5選

          『PAUL SIMON the life』      ポール・サイモン音楽と人生を語る

          ロバート・ヒルバーン著 奥田祐士訳 DU BOOKS あまり出来の良くない高校生の頃、授業が終わった後、商店街の狭い階段を上がった2階の喫茶店に友人と3人でほぼ毎日たむろしていた。生意気にタバコなど吸ってジュークボックスの音楽を聴いていた。その時に初めてSimon&Garfunkelの「明日に架ける橋」を聴いて、僕は身体が震えた。いや、比喩じゃなくて本当に。それ以来、新聞配達をしながら下宿生活をしていた僕は、安いレコード・プレイヤーとヘッドフォンを買って、S&GのLP も中

          『PAUL SIMON the life』      ポール・サイモン音楽と人生を語る

          将棋の読み物 文庫本5選

          『真剣師 小池重明』団 鬼六 幻冬舎アウトロー文庫/『盤上のアルファ』塩田武士 講談社文庫/『勝負師』坂口安吾 中公文庫/『将棋の子』大崎善生 講談社文庫/『将棋エッセイコレクション』後藤元気編 ちくま文庫 以下、『盤上のアルファ』塩田武士より抜粋 「人間は丸くて短いものに、愛情を注ぐように出来ている。」「洗顔と洗髪に曖昧な境界線しかないのは、丸坊主の特権である。」「女が別れを告げるときは、沈黙の臓器と言われる膵臓に癌が発見されるようなもので、大抵はどうにもならない。」「

          将棋の読み物 文庫本5選

          『水木しげるの遠野物語』

          著者 水木しげる・柳田國男 発行 小学館 2010年第5刷 この本が欲しくて近くの書店で探したが見つからない。そこでBOOKOFFに行った。僕のような年配者がコミックを探してるなんて珍しいらしく、店員の青年が懸命に探してくれ、合い良く手に入った。 『遠野物語』発刊から100年の記念でこのコミック刊行もその一環。柳田國男に倣って実際に遠野を訪れたコラムも掲載。(最もこのコラムは水木氏の文ではなさそうだが) 内容も原作の題目に従ってコミックとして忠実に再現しようとしている。そ

          『水木しげるの遠野物語』

          柳田国男『遠野物語』と『遠野物語を読む』

          柳田国男『遠野物語』 大和書房 1982年13刷 /『遠野物語を読む』 青土社 現代思想7月臨時増刊号 例えば井戸尻考古館などを訪れて縄文時代と記紀神話の関係が気になっていたし、考古学と民俗学の関係も気になっていた時にこの『遠野物語』を再読したくなってきた。また書店でタイミングよく『遠野物語を読む』という本を見つけた。 有名?な柳田国男の序文「願わくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ」に魅入られ三島由紀夫がここに小説があった、と絶賛した「丸き炭取なればくるくるとまはりたり。

          柳田国男『遠野物語』と『遠野物語を読む』

          源氏物語 男君と女君の接近       ー寝殿造の光と闇ー①

          著者/安原盛彦 2013年10月初版 河北新報社刊 源氏物語を読み始めてからずっと頭の中にひっかかっていたことがある。 光君と様々な女君達が出会う場所、舞台のことである。 帝の御所であったり、源氏邸であったり、帝に仕える大臣の屋敷であったり、宮中の住まいであったり、通りすがりの屋敷であったり、たまには年中行事の最中であったりするのだが、つまりは建物、屋敷の中がほとんどだ。当時の貴族階級の屋敷の造りは「寝殿造」と呼ばれている。そして当時の上級階級では女性は屋敷の奥深くに引き

          源氏物語 男君と女君の接近       ー寝殿造の光と闇ー①

          源氏物語 通読記③少女−おとめ−

          この河出書房新社版角田光代訳の源氏物語上は、「第二一帖 乙女」までを収録する。この巻では光君の新しい邸宅である六条院の完成及び夕霧と雲居雁の幼い恋が発覚する。夕霧は六条御息所の生霊に祟られて亡くなった光君の正妻、葵上との息子で13歳前後。雲居雁は葵上の兄でかつて頭の中将であった内大臣の娘、当時15歳前後である。 幼いとはいえ、当時のいわば成人式とも言える”元服”がこのぐらいの年齢だからもう大人であるし、この時点では結婚を許されずに離されてしまうのだが、すでに契りも結んでしま

          源氏物語 通読記③少女−おとめ−

          雑誌「アルプ」二冊

          この山の雑誌「アルプ」は僕が会社勤めをしながら山登りをしていた30代の初め頃に神田神保町の古書店で購入したものだ。だからもう30年以上前になる。第196号「特集 尾崎喜八」は昭和49年(1974年)発行で定価1,000円だったものが5,000円、第208号「特集 木」は昭和50年(1975年)発行で定価750円だったが3,000円の値がついていた。かなり思い切って購入したことだろう。 帰りには多分、今はなき「キャンドル」というおじいさんとおばあさんがやっていた珈琲店で薄暗い明

          雑誌「アルプ」二冊