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【読書記録】十二国記 華胥の幽夢

王は夢を叶えてくれるはず。だが。
才国の宝重である華胥華朶を枕辺に眠れば、理想の国を夢に見せてくれるという。しかし采麟は病に伏した。麒麟が斃れることは国の終焉を意味するが、才国の命運は──「華胥」。
雪深い戴国の王・驍宗が、泰麒を旅立たせ、見せた世界は──「冬栄」。
そして、景王陽子が楽俊への手紙に認めた希いとは──「書簡」ほか、王の理想を描く全5編。
「十二国記 華胥の幽夢」新潮文庫 背表紙より

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感想

今回は短編5編の短編集。今回の感想、言いたい事は新潮文庫版の解説に全部書いてあるので読んでください。

冬栄

泰麒のお話。久しぶりの登場。とても微笑ましい話なのだけれど、この穏やかな時間がそう長くは続かないであろうことを知っていながら読むと、とても心が苦しかった。
漣の王様が初登場するが、この人もなかなかに自由人だった。この世界、王様らしい王様の方が少ないんじゃないだろうか。
泰麒がかわいいのが癒し。

乗月

「風の万理 黎明の空」の後の芳の話。頑なに玉座に座らない月渓と、慶国から親書を持ってきた青辛。慶と芳といえば祥瓊に関することしかあるまい。
後日談をこうやって読むことができて単純にうれしかった。月渓が玉座を拒む理由がとても丁寧に描かれていて面白かった。十二国記は主要な登場人物以外の一人ひとりにもきちんと人生があるところが本当にすごいと思う。
祥瓊にも月渓にもこれからも頑張ってほしい。

書簡

これは「風の万理 黎明の空」よりも前の話だろうか。陽子と楽俊が遠く離れた場所でお互いの近況を知らせる話。これまでにも青い鳥が連絡に使われていたが、まさか人の声を覚えてそのまま発声することでやりとりしているとは思わなかった。十二国記の世界、人ではないものが当たり前にいるのに、技術が発展していないというか、現代人からみると不便なところが多い。それがいいところでもあるのだが。

華胥

タイトルにもなっている華胥。才国が沈んでいく。失道の采麟の様子を見るのは辛かった。ただげっそりするとか、高熱にうなされるとか、そういう身体的な病ならまだよかったのにと思った。
志を同じくした人たちで朝廷が作られているから、国が傾いているのに、何を諫言すればよいのかわからない、というのが悲しかった。
そしていつも鋭いことをいう青喜、絶対下官の器じゃない。

帰山

この話一番好き。柳が危ういという噂を聞いた利広が柳の首都を訪れると、風漢という男と久しぶりに出会う。この男の名前をすっかり忘れていた自分をぶん殴りたい。誰だろうと思いつつも読み終え、この男の正体に気付いたのは解説を読んだときである。雁でこんなにあちこちふらふら出歩くような人といえばその人くらいしかいないだろうに、どうして気が付かなかったのか……本当に悔しい。柳の様子は楽俊に見に行かせたはずなのに、結局自分で見に行っちゃうんだな。その正体を把握したうえで利広にした碁の話を読むと意味がよくわかって本当に面白い。このシーンが一番好き。
利広が家に帰った後、他の国の様子を話すところで慶の話も出てきて嬉しかった。十二国記はいろいろな人が出てくるし、作品ごとに主人公が異なるが、やっぱり陽子が一番主人公のような感じがする。あちら(こちら?)の世界の人が陽子の率いる国の様子をどう思っているかは気になっていたので、好感触でよかった。

おわりに

前回の短編集と異なり、よく知る人たちのお話で嬉しかったし面白かった。今後の伏線になりそうな話もあったので、この先もまだまだ楽しみだ。

そういえば、書店から無くなる前にと思って30周年ガイドブックを買った。その中に用語解説があったので、しばらく間が空いた自分にピッタリだと思い目を通してみたところ、軽いネタバレを食らってそっと本を閉じた。致命的なネタバレじゃなくて助かった。素直に本編を全部読んでから見ることにしようと思う。






ところで、基本的に感想を書いてから次の本を手に取るのだが、読み進める手が止まらずnoteの推敲が進まなかったので、これを公開する時にはなんと次の巻を読み終えている。というか、次の感想を書こうとnoteを開いたらまだこれが下書きだったので驚いた。それほどに十二国記が面白いということで。

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