人間にはなれない
1回目
あなたにできるわけないって
言われて育った
変わってるねって言われた
だから気持ちを奥に閉じ込めた
周りに合わせて
自分を変えた
いつもの声が聞こえなくなった
2回目
楽しいことで
収入を得ていたはずが
苦しくて苦しくて
心が壊れた
それを周りのせいにした
自分を責め続けた
嫌になったら逃げた
自分を深く理解せず
もう迷宮だった
暗い暗い
闇の中
でも誰かのせいにして
生きてきた
聴こえていた声は
もう忘れてしまった
3回目
父は亡くなる前
人生に悔いはないと言った
初めて尊敬した
好きなことをすることは
素敵なことだと思った
でも、痩せ細って
辛そうな父を見て
何か出来ないか
考えた
僕には
何ができるだろう
4回目
天職と呼べる仕事を得た
それに浮かれていたのか
周りが全く見えていなかった
自分がどういう人間で
周りがどういう人間か
深く考えなかった
自分の好きに生きていた
周りの思いも考えず
だから、裏切られた
心が死んだ
死んでしまった
毎日誰も信じられず
震えを抑える薬を飲みながら
仕事した
仕事には誠実でありたかった
死にゆく人の言葉は重く
最期の時まで安寧でいて欲しかった
でも自分の心は死んだまま
ふと見上げた空が
美しかった
風に流されて飛ぶ蝶が
美しかった
世界は美しいもので
溢れている
人間ゆえのエゴを悟った
久しぶりに声を聴いた
大丈夫だよ
そう言われた
そうか
僕は僕であって
魂は魂で
肉体はいつか灰になる
エゴの塊の人間を眺めて
楽しめば
生きていけるのか
陰陽のこの世界で
人間だからって言葉で
全てが片付く世界で
もう気づいたから
だから何も要らない
経験して灰になるだけ
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