ワタシの『俺の家の話』認知症介護日記 その3 「父、警察に保護される」
警察からの猛プッシュに追われながら、大急ぎで電車を乗り継ぎ移動。
ところが、例の若い警察官から、移動中も執拗に電話がかかってくる。
「今どこ?」
「あと何時間?」
……もうほぼ、「GPSつけてる?」レベルの監視体制。
そのイライラぶりに負け、つい母が警察署の近くに住んでいることを口走ってしまった。
さらに勢いで母の電話番号を教えるという禁断の一手を繰り出す。
しばらくして、警察から再び電話。
「お母様に連絡しましたが…… 『ワタシには関係ありません』の一点張りでした』」
うん、知ってた。
普通の親なら「すぐ行きます!」ってなるんでしょうが、ウチの母は自由を何よりも愛する人間。
正直、対応を聞いて「まぁ、そうなるよね」としか思わなかった。
とはいえ、このままじゃ埒が明かないので、今度は妻経由で妹にも連絡してもらう。
が、こちらも
「今忙しいから無理」
えっ、妹よ、お前、昔は父に何か奢ってもらうときだけ、異様にベッタリだったじゃないか!?
……そうか、こういう時だけ「今忙しい」って言える大人になったんだな。
ある意味、成長を感じる。
というわけで、結局ワタシが迎えに行くしかない。
でもここで、ふと思う。
そもそも、なぜ父は、母や妹じゃなく、ワタシの番号を警察に教えたのか?
いや、ワタシが一番距離を置いてたはずなのに!?
(結論:謎)
で、電車とバスを乗り継ぎ、ついに警察署に到着。
すると、玄関にはすでに一人の警官が待ち構えていた。
(えっ、VIP待遇?)
案内されると、なんと中には5、6人の警察官が集合。
全員が一斉にこちらを振り向く。
(えっ、歓迎セレモニー?)
そして、その中にいた眼光鋭い若い警官。
直感で分かった。
(……あっ、この人だ。あの21回鬼電してきたのは)
背後から**ズシズシとした「圧」**を感じながら、調書にサイン。
さて、肝心の父はというと……
どうやら**「家の玄関の暗証番号を忘れ、入れなくなり、警察に保護」**されたらしい。
(※ 保護されるまでの間にいろいろ事件があったらしいが、それはまたの機会に)
久々に見る父。
ワタシの中ではまだわだかまりが消えていなかったが、目の前の父は……なんだか小さくなっていた。
寒空の下、フリース1枚だけの姿だったようだ。
警察から借りた毛布を羽織って、申し訳なさそうに座る父の姿を見て、思わず涙がこみ上げそうになる。
……が、その瞬間、父がワタシを見て一言。
「おっ、お前、太ったな〜!」
……。
(ほっとけ!!薬の副作用だよ!!!)
ちなみに、やたらと大勢の警察官が丁寧に対応してくれたのは、後で父に聞いたところ……
「身元確認の際に、ちょっと親族の名刺をちらつかせてみた」
……って、おいオヤジ!!!
「身元を証明する」じゃなくて、「なんか偉い人に見せかける」方向に全振りしてたんかい!!!」
やれやれ。
こうして、ワタシの**「父、警察に保護される」**事件は幕を閉じたのでした。
(でもまだ続く予感)