社会と会社の狭間で夢をみる
箱で揺られて始まる一日。
無機物な額縁を白黒の凹凸が流れていく。
視点も骨格も固定された空間に、人生を費やすことほぼ三年。
初めて乗車をした時の感動は途中駅に置き忘れ、最後に降車する時への期待を持ち運ぶ。
何事も、始まる未来に期待する。時が経てば、終わる未来に待機する。
社会と会社の狭間で揺れながら、終わった世界の夢をみる。
早起き、通勤、仕事に人付き合い、自己投資、教育ローンと住宅ローン、明暗分つ渡過の産物。
寝たいだけ毎日寝ると、どれだけ幸せか。
仕事がない生活では何をしようか。
ローンの返済を終えたら何を買おうか。
子どもたちの孫は見れるだろうか。
老後に妻と二人で、どこに旅へ出ようか。
耽ける自分を痴痴しく感じ始めた、彼は誰時。
家庭を守ること二十五年。
草臥れたスーツは丸十年。
髪の毛散ること約七年。
下の子が成人までもう三年。
仕事から解放されるまであと十年。
何かが伸びれば何かが縮む、そんな世界に私はあと何年いられるだろうか。
先刻から、視界の真ん中に貼られた美女が、主張している。
『縁が溜まれば、円になるよ』
そうだ、今度休みを一週間とって思いっきり……
「次は、東京、とうきょうー」
酔夢から、はたと目覚めて働き手。
会す社に、皆勤励む。