「無職底辺氷河期世代、死ぬことを思いとどまり少し働いてみる ~その⑧完~」

しばらくMバーガーでバイトしていたことで少しは心の状態が安定していた。しかし、またしても辞めることになった。

カネがなさすぎて生活が立て直せない。
私のクルマは28万キロも走っているせいか、何となく燃費が悪くなってきた感がある。たった2時間のバイトにクルマを出すにはガソリン代がキツすぎる。自炊をしていることもあり、食材を買ったり、コーヒーを飲んだり、実入りがない財布の中の紙切れはどんどんなくなって行く。クルマに入っているガソリンもどんどんなくなる。

ガソリンを入れるカネがない・・、このままだとバイトに行けなくなる。

そして、何だかんだで結局やめることになってしまった。たった数日バイトに出ただけで、Mバーガーの店長には迷惑をかけただけになってしまった。申し訳ないと思い丁重に謝ったが、店長は私を叱るようなことはしなかった。世の中には良い人がいるものだ。私は社会の人を嫌っている人間なので少し反省した。社会の人間なんてくだらないと嫌っていたが、自分のほうがよっぽどくだらない人間のように思えてきた。

そして、一つ悩みがあった。
2、3年前から持病のアトピー性皮膚炎が再発したことだった。それ以前は空気が乾燥する秋~冬だけ皮膚の痒みや乾燥があり塗り薬を処方してもらって軽く済んでいたが、なぜかここ数年は一年中身体が痒くて、皮膚の炎症と掻痒感が酷くなった。
かかりつけの皮膚科に行っても、強いステロイド剤の塗り薬とかゆみ止めの飲み薬を処方されるだけで、塗った時はおさまるものの、またしばらくすると痒くなり、掻きむしって酷くなる。塗り薬がなくなり、カネがかかるから我慢していると、どんどん皮膚の状態が酷くなり悪化する。この繰り返しだった。現在もあまり良い状態とは言えない。

もうイヤになってきた。こんな自分は社会に不要な人間だ。どうせ何をやってもうまく行かない。
私は社会の枠の中から自ら出て行くことになった。刑務所に入っていた囚人がせっかく娑婆に出られたのに、また罪を犯して自ら牢屋に入るようなものだ。
本当は誰かに必要とされたい。社会の役に立ちたい。少しは自由に何かを買えるお金が欲しい。何か美味しいものが食べたい。自由にどこかへ行きたい。願望はたくさんあっても、何一つ叶わない。何もかもうまく行かない。

心がまた不安定になり始め、死にたいと思うようになった。バイトを辞めた明日からまた誰にも必要とされない生活を送ることになる。誰とも口をきかない生活。誰とも一緒に食べない食事。

いつも一人、いつも孤独、いつも空虚。

昔を思い出す。若い時の私はすごく寂しがり屋で孤独感が強い人間だった。若かった時と今とでは、ちょっと「孤独」の感覚が違う。「秋」という人肌恋しい、どこか寂しさ、侘びしさ、虚しさを感じるこの不思議な季節は、心の中の「孤独」を残酷に掻きむしる。そして最後には言葉では言い表しようがない、何とも言えない悲壮感と憂鬱感と空虚さだけを残して去って行く。毎年それが私にとっては耐え難いことだった。

なつかしい、、でも、人間ってなんて面倒な生き物なのだろう。明日からまた孤独に耐えて生きていかなくてはならない。