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SaaSのインサイドセールスをやっているだけでは見えてこなかった「現場担当者」の価値

SaaSのベンダーで約4年間インサイドセールスをやったのちに、地方中小企業でお仕事をしているRさんと申します。

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新卒でインサイドセールスとして業務を始めると、多くは社会人基礎やビジネスマナーを学んで、インサイドセールスとはから実際にアポイントの取り方、ビジネスライティングなど座学に入り、商談を取る実務に入るという段取りが一般的だと思います。この後のキャリアはインサイドセールスを極めることもできますし、フィールドセールスやカスタマーサクセスなど社内でポジションを変えて業務するセクションを変えることもできますし、マーケティング側に回ることもありうるかと思います。

特にSaaSはまさに伸びている業界で、SaaSの中に入ったら次のキャリアも社内異動か、その場を極めるか、違うSaaSの会社に転職するかで昇給や昇格などキャリアアップの道が見えてきます。

ただ、SaaSを極めることで起きる一つの弊害があります。それは、現場担当者として何もないところから実際に「DXを進めたい!」「データを整理してクラウド管理したい!」と思い、そこから社内に導入させるというプロセスを自らで経験できない点だと思います。これがなぜ弊害かというと、カスタマーサクセスであってもセールスサイドであってもどちらも現場担当者の声を取り入れ、そのフィードバックをスピード感持ってプロダクトや組織に反映させることが重要な業務になりますが、その担当者の現場感覚を肌で感じることができないからです。今回はこの現場感覚を肌で感じることの重要さという観点でお話ししたいと思っています。

インサイドセールス業務の本質

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インサイドセールスは顧客の声をヒアリングした上で、課題がどれだけ大きく重たいものなのかを見極め、解決策を提案することがお仕事です。ただ、ここで解決策を提案することでほとんどの会社が導入に踏み切ることができるのであれば、現場を知らなくてもプロダクトがマーケットフィットしているのでバカ売れすると思います。しかし、大半はそうはいきません。もちろんオンライン会議システムの様に、時代の背景で取り入れないと業務が進まないといった特殊例は一部ありますが、コールドリストでアウトバウンドで架電するうち商談化率を見ても1%から4%の間を推移することがほとんどかと思います。ではここを売れる様にするためにはどうしたらいいか、単に価格を下げるとか、プロモーションをマス向けに打つとか、営業マンの行動量を増やすとかではありません。必要なことは、「現場を知り、ここの粒度を最大限に引き上げ反映させる」ことです。

相手の現場をどう理解するか

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インサイドセールスが先方の現場担当者に対する理解を深めないと、所属している会社の掲げているビジョン(「〜〜で社会を変える!」など)からかけ離れてしまいます。

例を出します。AさんがSaaSの企業から地方の中小企業に転職した身で、その会社ではDX関係のソリューションで決済を過去にとったことはありません。SaaS界隈で働いていると、クラウドサービスは世の中で認知が広がっているのがAさんの中での感覚値としてあると思いますが、そもそもタレントを起用している某有名なソリューションなどですら「なにそれ?」「そんなのあるんだ」っていうのが地方中小企業の現場です。まずそこの部分で感覚と現場の相違を感じているインサイドセールスの方がいらっしゃれば、まだまだ現場を知るための粒度を引き上げる余地は多分にあるでしょう。それだけSaaS界隈のみで働くというのは近しい価値観のみのコミュニティで業務をしている証拠になるのです。

では、こういうクラウドサービスに対しての理解度が低い会社とどう向き合うかは、現場に対しての理解を深めようとするかどうかといういちインサイドセールスの姿勢で変わります。ここで「そんな会社は見込みではないのでリードとしては一旦積極的には追わず長期見込みや無効リードにしましょう」という選択肢が出てくると思います。ただ、それをずっと繰り返していると日本には無限に会社があるわけではないので、リードが枯渇する問題やインサイドセールスがアポインターになる問題が生じます。最悪なケースだとここで個人攻撃が始まって「あの会社は遅すぎる!」「あの担当者じゃ力が無さすぎる!」っていう愚痴などに変わります。ここで理解度を深めて、「中小企業のいち現場担当者に課題認識させてそれが重大な課題だということに気づいてもらい、やらないといけないという流れにもっていくためにはどうすればいいか」という思考を持って、担当者をその態度まで持っていくためのロードマップを敷いてそのプロセスを着実に進行していく、これが手始めです。次にその担当者が上長に上申していく、役員会議に上げてもらう、決済をとる、それぞれのプロセスの中で同じ様な粒度でプロセスを踏んでいく必要があるのです。これは相手が意思決定者でも決済者でも同じですね。いわゆるこれが、架電する前や商談する前にしなければならない「前準備」につながるのです。このプロセスを経ないと日本はいつまで経ってもDX化しない上に、身内だけがどんどんDX化していって、最終的に見える世界は日本全体のDX化のアップデートではなく二極化です。

Aさんが実際に中小企業の一担当者として業務をして、この現場担当者がDXを一から推進していくかを考えたときに「どれだけタフにこれこなさないといけないんだ」と最初に実感すると思います。インサイドセールスは、この社内共有をするプロセスを軽く見るとほとんどはここで失注案件になります。なので、担当者をいかに前向きにさせるかと、上申するときにどれだけサポートをするかはとても重要です。

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私は家を買ったことがない不動産の営業マンから、家を買うように推されて不快な思いをしたことがあります。なぜなら、家を買ったことがない不動産の営業マンは家を買う決断をする人がどういうことで悩んでいて、それに対してどんな対応をしてくれたら嬉しいかなどの顧客理解への粒度が浅いからです。(もちろん例外はあると思います。)それにある意味近しい感覚ですね。SaaSインサイドセールスだけをやっていると、この先方担当者の現場感覚を肌で感じることができません。個人的にはSaaSなどのベンダーと各会社の行き来が活発になるような市場ができたら日本のDXはもっと進むのではないかなと思います。また、実際に現場でDX推進やクラウドサービスを導入に踏み切ることができた人がSaaSの会社に入ることができれば、成果は出しやすいと思います。ここでいう成果というのは目先の営業数字、成績という意味ではなく、ビジョンを達成させる上での貢献における成果です。そこで、実際に中途採用しかしないSaaSの会社も多々あります。一つここは、どこかの会社でDXを進めて現場担当者を経験した上でのキャリアステップはありなのではと、個人的には思います。

カスタマーサクセス業務の本質

カスタマーサクセスもインサイドセールスと対象が見込み顧客か既存顧客かが違うだけで、課題の見極めと解決策の提示がお仕事です。特にスタートアップこそカスタマーサクセスのポジションの役割は大きく、成功事例や高い顧客満足度のクライアントを作らなければその事業はスケールしません。なぜなら、顧客は課題が解決できるイメージが掴めないものにはお金を払わないからです。よりサービスをスケールさせるためにはたくさんの成功事例を作る、顧客満足度を最大限に引き上げる、ここで必要なのは、くどい様ですが現場に対する理解を深めることです。

ビジネスは成功事例なく、高い顧客満足なく、仮説だけでスケールするほど甘くはありません。また仮にスケールしたとしても長くは持たないでしょう。カスタマーサクセスの機能がしっかりしていれば、業界や顧客などの現状抱えている課題と、その課題の重さなどが多角的な視点から理解することができ適切なソリューションの提案ができます。それを実行して見事に思い描いていた様な解決策が実行できればそれは成功事例と言えるでしょう。

成功事例を一つ作っただけではゴールとは限りません。その成功事例に再現性があるかどうかもスケールする上では重要です。その再現性を出すためにも必要なことは、これも同じく顧客を理解することなのです。A社でうまくいったものを丸パクリして同業同規模のB社に展開したら必ずうまくいくとは限りません。100社近しいカテゴリーの課題感をもった会社があれば、100社粒度が違う課題を持っていると考えた方が良いでしょう。一つ一つの会社に理解度を深めて、その会社ならではの解決までのロードマップを敷いてそのプロセスをこなしていく必要があるのです。そのロードマップに1日たりともずれなく組める会社はほぼないと思いますし、あったとしたら一卵性双生児よりレアだと思います。これだけ顧客への理解を深めることは重要なのです。

これもインサイドセールス同様で、実際に現場担当をやっていてそのソリューションに対する課題認識が強くこの業界を変えたいという思いを持っている人が、ベンダー側にジョインしたら、ビジネスをスケールさせる上で大きな戦力になると思います。なぜなら、現場に対する理解の粒度がビジョナリーな人と比べるとそこで優位に立てるので、現場肌ならではのプロダクトや組織へのフィードバックを反映させることができるからです。

日本のクラウドサービス導入、DX化を推進するためには「現場担当者」の力が必要

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素晴らしいビジョンをもったSaaSベンダーはたくさん存在します。ただ、そこに入社すると「俺がこの社会を変えるんだ!」「私が日本一を目指すのよ!」という視点に向きがちで、実際にその熱意はとても大事です。ただ本質として、クラウドサービス導入、DX化を推進する上で現場の存在を無しにしては進めることができないことを忘れてはなりません。SaaSベンダーの会社の方針に魅せられて入社を決めたのであれば、しっかり地面に足をつけて業務を遂行することで、顧客理解を深めることができ、ビジョン達成に近づけられると思います。

noteを読んでくださった方にはささやかながら応援しておりますので、このnoteがこれからの業務を変える一つのきっかけになっていただけたら嬉しいなと思います。


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