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価値観が変わるほどの


自我が芽生える年頃から、
人とズレた部分、人と共有できない己を、
少しずつ認識していったように思う。

無論、親も、友人も、
自分ではない別個の存在なのだから、
100%理解するなんてことを、
コミュニケーションの最終地点には
し得ないのだけれど。

村上春樹の小説の中に、
『説明しないと分からないことは、
説明されても分からない。』
という言葉があって、
その言葉が好きだと言ったら、
母親が複雑な表情をしていたことを
よく覚えている。


人とズレた部分を理解はしても、
人と共有できない己の孤独さを
拭うことはできなかった20代前半。

隣に人がいても、
孤独なものは孤独なのだ。

だから、
恋愛や、結婚に、
多くの関心はなかった。

そんな私も、
結婚を考える年齢になり、
2024年の年明けから、
漠然とそのことについて
意識するようになっていた。


2024年1月末、
友人が仕事を辞める少し前に、
ある人をパートナーにどうかと
話をしてきた時があった。

それは私が自分の身の振り方について
考え始めていた時であり、
転職についてもその友人に相談していたので、
降って湧いた話に驚いたものだ。

一体何がどうしてそうなったのか、
疑わしい気持ちでいっぱいになったわけだ。

なぜなら、
その人にとって、
私は所謂"好みのタイプ"ではないと、
思っていたからである。

それを分かっていたから、
時々飲みに行くのにちょうど良い相手として、
私自身も安心していた節があった。


友人からその話を受けてから、
彼とは、
かなり多くの時間を過ごしたように思う。

彼はよく、
私を食事に連れ出したし、
私もその時間が好きだった。

私と彼とは基本的に全てが真逆だった。

直感とバックグラウンドから人を捉える私と、
観察と会話で人を知る彼。

芸術に関心のある私と、
体を動かすことが大好きな彼。

1人の時間が必要な私と、
人といるのが好きな彼。


彼は私に一等優しかったが、
恋愛対象として好かれていると
感じたことはなかった。

私も彼にどきどきすることはなかった。
というよりも、
私を恋愛対象として見ていない彼のことを
好きになるのが怖かったのかもしれない。

それでも、
私が彼と一緒に居た方が良いかもしれないと
思ったきっかけがある。

何度目かの外食時、
私は仕事終わりで大変疲労していたのだが、
彼と過ごすことで気分が和らぎ、
身体が楽になったのだ。

彼の隣はとても安心していられた。

私の人生において、
誰かと過ごす時間が、
1人でいるよりも心ほぐれると思う日が来るとは、
想像もしなかった。



しばらくして、
私は彼と一緒に居ると安心する理由に
気づくことになる。

彼は優しいのだ。
計画的かつ、慎重で注意深いが、
そこに計算高さは全くなかった。

それは、人のことを直感しない故の、
"優しい"でもある。

だから、彼が私のことを分からないことと、
彼がとことんまでに優しいこととは、
引き換えなのだ。



結論を述べてしまうと、
彼は結局のところ、
私をどうこうするつもりはないらしい。

彼は私のことが分からなさすぎたし、
(私の友人知人の中では群を抜いて、
私の思考が分からない様子であった。)
私は彼が良いと気づくのに時間がかかりすぎた。

あと1年早ければ、
彼が私の心の特別複雑に結ばれた糸を、
器用に解いてくれたように、
私も彼との間に横たわる谷に
橋をかける努力をしてみたかった。

私は近く、今いる場所を去るだろう。
本当はもっと早くにそうなる予定だった。

回り道をした甲斐はあった。

1人でいる時とは違う部分が
満たされる感覚を知れた。

初めて自分自身にベクトルを向けて、
己の気持ちを分析することができた。

新しく大切な持ち物を手に入れたような、
そんな気持ちでいる。

彼のことは例え今以上の関係にならずとも大事だ。
私は一度大事の部類に入った人は、一生大事だ。

だから幸せになって欲しい。

私も幸せになりたい。
次に大事にしたいと思える人に出会えたら、
今度はもっと、
大切な気持ちをたくさん伝えたい。
関係を作ることを、努力したい。
満たされる時間を、
あげられる自分になりたい。


彼についての分析を記して、
この文章は終わりにする。

彼の明るさや、悟らせないようにするところは、
早くにお父さんを亡くされたことが背景にある。
感情の動きは早いが、気持ちの切り替えも早く、あまり引きずることがない。判断は早いが決断は遅い。優しい故に、突き詰めた話は苦手。
好みははっきりしているが、大変器用で人に合わせることもできる。人の話に耳を傾けることができる。
物持ちがよい。生活音は静か。趣味が良い。見た目にも気を使うことができる。
視覚的に処理できる情報量が、圧倒的に多い。故に人の表情や、周りの状況がよく見える。人のことを直感しないため、相手への理解は観察と会話によるもの。人から得られる反応を面白がるところがあり、時に度を越したいたずらを仕掛けることがある。
甘いものは好き。辛いものも好き。お酒は日本酒が最も好きで、静かに飲める場所よりは、人との会話が多くある場所の方が良い。
慎重かつ注意深いため、ミスがない。
可愛いところがある。
計算高さがない、優しい。


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