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戻さなくていいよ(木靴の樹)

 「木靴の樹」(原題:”L'Albero degli zoccoli” 1978年)というエルマンノ・オルミの映画がある。19世紀末北イタリアのベルガモの農村が舞台。世はイタリア統一戦線の最中。これまた俳優ではなく現地の農民を実際に使って、そしてほとんどを自然光で撮った、徹底的リアリズム映画である。あまり物語らしい物語はなく、とにかく小作人の生活をあるがままに映像に収めたというような映画だ。ゆっくりしたテンポでまるでコローの絵画のよう。家畜小屋と小作人たちの生活領域が一緒で、アヒルの首を落とすシーン、家畜の豚を殺すシーン(死期を感じた豚の声のなんとおぞましいことか)、本当に映画ということを忘れてしまうような、間近でみているようなリアルさだ。(今だったら動物虐待なぞ言って撮影できないような貴重な映像かもしれない)このような家畜を殺すシーンなどもあるが、なんと優しい映像だろうか。時代はもちろん異なるのだが、今とは同じ地球とは思えない。

 コロナがやってきて、外出をしなくなって、私はだんだんと帰って家の中にいる方が居心地良くなってきた。家の中でできることが増えてきた。ガサゴソガサゴソ、ティッシュペーパーを切り刻む、籠の中のハムスターになっている気分にもなる。そんなにあまり外に出たいとも思わない。家に居れば、バリケードがはられているし、やっぱり落ち着く。高波とか大地震がおきたら身も蓋もないけど。

 以前も書いたが、買いものに行きたくないので、消費が少なくなった。ティッシュは手に入らないから、じゃあ使わないようにしようってなった。そしたら布の歯切れで、なんていろいろなものが拭き取れるんだろうって思った。ゴミももちろん減るし、むしろティッシュよりキレイに拭き取れたりする。ビニール袋も買い物に行かないから家にたまらなくなった。すると以前ならば捨てていた、小麦粉、米、パスタのパッケージが、まだまだ使える袋となり変わり、その袋に小さなゴミを捨てたり、食べ物の保存袋にするようになった。そしたらプラスチックゴミが減った。スーパーにも行かないし、今金曜日のプラスチックゴミはほとんどない。肉とかも買いたくなったら近所のお肉屋さんで紙に包んでもらうからプラスチックトレーのゴミが出ない。サランラップもきれいなら使い回し、野菜を包んでいた紙類も乾かしてまだ使えるなら使い回し。

 買い物ってするとなんだかものが増える、ゴミが増える。最低限の食糧はもちろん買わなければいけないので、宅配で済ませている。宅配業者は割と環境のことを考えているところが多いから、通箱とかもあるし、プラスチックトレーもあまり使わないし、牛乳パックなども回収してトイレットペーパーなどに再利用とかしている。そもそも牛乳も瓶で売ってたりもする。

 コロナがやってきたので、経済活動も縮小されているから、中国やイタリアの大気汚染も減少していると言うデータもあるらしい。(中国は流行前よりも30−44%低下とのこと。以下参照URL)

 今だんだんと日本は通常運転に戻そうとしているけれども、戻らなくていいものもあるということ、みんな薄々気付き始めている。

 ところで電力会社の自由化になってから、本当に自分の家の電気を見直している人がどれだけいるだろうか。みんな面倒だからとか新しいことを始めるのがなんとなく嫌で結局変えていなかったりするようだ。もしくは電気代を節約するためだけに電気会社を選んでいる人も多いと思う。アフターコロナで環境問題に改めて目が向き始めた人は、自分の家の電気を再生可能エネルギーに変えてみてはどうか。

 私はパルシステムのパル電気を使用している。311があってから火力電力にも原子力発電にもNoを突き付けたかった。現地の人が気の毒だと思い、いろいろ考えたり寄付したりしても、私は生きているだけで偽善者な気がしたから、せめてそういう偽善者的なポイントをできるだけ少なくしたかった。

 パルシステムの電気供給量のうち、72.5%が再生可能エネルギー、その契約発電所は全国58箇所にのぼる。使用電気のほとんどが太陽光、水力、風力発電、つまり火力発電、原子力発電ではないということだ。そしてそのうち25%はバイオマス電気だ。これがユニークで、パルシステムのバイオマス電気は、畜産業者が処理に困る大量の鶏糞を使った電力発電を行っている。(今後は50%のバイオマス発電を目指しているそう)消費者に野菜や肉を提供している生協組合だからこその生産者との強いコネクション、安定的な発電、供給ができるようだ。

 実際に使っていて、以前の東京電力となんら変わらない。いつ変わったっけというぐらい。電気の供給が不安定ということもないし、値段も変わらない。しかしもっと環境に優しい生き方に変化していることは間違いないと思う。

 パル電気以外は使ったことがないので、使い勝手のところは何も言えないのだけれども、他にも再生可能エネルギーを利用した電気会社はあるようだ。

 今黒人差別の問題で、NYではデモ活動が続いている。今までのデモと違い、参加者は20-30代の若者なのだそう。(InstagramなどSNSで集まっているので)香港のでもなども然り。意識の高い若者たち、CO2排出量を減らすために牛肉を断固食べない若者、いろいろと行動にうつす若者たち。しかしわかっていてもいろいろな事情で何かと行動に移せない人たちがいるのもわかるし、自分もその一人。しかしなんでもいいけれど、自分の生活を大々的に変えることが難しいのなら、ちょっとこういうことをしてもいいのかもしれない。



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