サクラローレルの知られざるエピソード〜調教助手の仕事〜
小島良太著「調教助手の仕事」を読みました。
この本では、調教助手の小島さんが携わった競争馬のエピソードや調教助手のお仕事のことなどが愛情たっぷりに綴られています。
この記事では、小島さんが調教厩務員だった頃に担当した、サクラローレルにまつわるエピソードを本からの引用を交えてご紹介します。
ローレル好きの方もこれまで知らなかったエピソードがあるかもしれません。
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種牡馬失格の危機!?
サクラローレルは競走馬時代、牝馬に発情することがありませんでした。
小島さんは冗談で
「ローレルは種馬になっても牝馬に興味持たないよ」
引用元:小島良太(2002)『調教助手の仕事』ミデアム出版社
なんて言っていたそうです。
ところが、冗談は現実になってしまいます。
なんと、ローレルは種牡馬になっても牝馬に発情しなかったのです。
困った牧場の方々は小島さんに相談します。
牧場から「ローレルを興奮させる方法を教えてくれ」とか「こっちに来てローレルを興奮させてくれ」などと相談されていた。
引用元:小島良太(2002)『調教助手の仕事』ミデアム出版社
このお話、珍事件として書かれていましたが、関係者の方は相当焦ったのでは。
小島さんから"自分だけの世界を持っていた"とも評されていたローレルですから、何か自分なりのポリシーでもあったのでしょうか。
そんなローレルは、種付けシーズンも終わり頃になって、やっと発情を見せて周りをホッとさせたといいます。
後のお話で小島さんとローレルの子どもが初対面するエピソードも感慨深いものがありました。
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笹針治療を乗り越えて
サクラローレルは笹針後、産經賞オールカマーを皮切りにG1で活躍してくれた。
引用元:小島良太(2002)『調教助手の仕事』ミデアム出版社
笹針とは、馬がうっ血状態から全身コズミや跛行を呈した際に刺す、笹の形に似た針のこと。
この針を肩、腰等部分的にあるいは全身に刺してうっ血をとるのだそうです。
「笹針」で画像検索して頂くと、見るだけで痛そうな治療法であることが分かるかと思います。
ローレルはこんなに大変な経験をしていたのか。
しかし、オールカマーのあとの戦績をみると確かに、ライバルのマヤノトップガンやマーベラスサンデーを退け、有馬記念を制しています。
笹針の痛みを乗り越えられたからこそ掴んだ、勝利だったのかもしれません。
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寝ぼすけローレル
「寝る、という行動ひとつ取っても馬は性格が違う」と小島さんは言います。
朝、厩務員さんのバイクの音で起きるような、臆病で野生の心(?)を忘れない馬がいる一方で、人間が起こしても起きない図太い馬もいる。
ローレルはどちらのタイプかというと、
競馬場では決して見られない顔で「グーグー」寝ている。
中には口を開けて、ヨダレをたらしながら寝ている馬も。
実を言うとローレルもそうだった。
引用元:小島良太(2002)『調教助手の仕事』ミデアム出版社
完全に寝ぼすけタイプのようです。
でも、草食動物である馬が堂々と眠れるということは、それだけ人間のことを信頼している証なのでは。
ローレルに言及しているのはほんの一文ですが、小島さんとローレルの絆が感じられる、とても微笑ましいエピソードです。
G1を勝ってしまうようなスーパーホースのだらしない姿を見られるのも、厩務員さんの特権なのかもしれませんね。
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以上、サクラローレルのエピソードをご紹介しました。
実はこの本に書かれているローレルのエピソードはそれほど多くありません。
けれど、その小さなエピソード一つ一つから小島さんがローレルをとても大切にしていたことが、しみじみと伝わってきます。
競馬好きの方はもちろん、馬好きの方にもお勧めしたい一冊です。