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田植えの風景を新幹線の車窓から見る 昨日は渋谷のスクランブル交差点にいた 異星人のように開催中のパレードを逆流するのだ 切り取られた絵のように次から次へと入れ替わっていく中を

車窓からは山並みが見える 山の木はなぜ綺麗に稜線を描くのだろう ちゃんと線になっている 近くで見るとバラバラなのに 

スクランブル交差点は雨が降り出す ぽつぽつ 頭のてっぺんにそのひとつぶが ぽつり当たると 何かの合図か 赤は青に 右は左に わたし明るいものには嘘があると思うの 花ってそうじゃない だから蝿なの と言う ぽつり 当たったのは 言葉のさきっぽだったのか 繊毛の生えた蝿の足だったのか

車窓の景色はまた近くなり水田から工場へと変わり 家並から立ち並ぶ電線へと変わる 電線には龍が絡まっている 長い長い電線に絡まって 競走するようにやって来る 

スクランブル交差点では昨日まで髭を生やしていた男が 少し明るい声で何かを話しかけて来る 身長5メートルの男も サンチョパンサを気取る男もここでは物珍しいことではない 何もここには埋まっていないのに 誰もが宝探しをしたがるのだ 一掬いの風が吹いているだけだと気がつくまで

田園風景は消え 駅に近づく 目的地に近づくと終わりが始まる 全て終わるためにあるのだ
少なくなった乗客にアナウンスの終了が告げられる

スクランブル交差点は朝 昨日のパレードはなかったかのように ひとりの男がランニングしている もう昨日のことはかけ消され誰も振り向かない 正義も不正義もない 終わりはそう言うものだ

2022年に詩集を発行いたしました。サポートいただいた方には贈呈します