バーキン適齢期
私が飲食店を営んでる時、若いお嬢さんがカウンターで言いました。
『30歳になったらバーキンが欲しいんだよね』
どうして30歳になったら、なの?と私が聞き返したら、その方はまだ27歳だから、早すぎるという答えでした。そしてさらに
『雑誌とかでも30才でバーキンっていうのはよく特集を組まれているよ』
と教えてくれました。
なんじゃ?それは。
30歳はバーキン適齢期なのか?
そう言えば、すごく昔、近所のお姉さん(東京に出てスタイリストの専門学校に行ったけど、スタイリストの職がなくて、高知に帰ってきたら、もっと職には付きにくくなって実家の魚屋で働いてた)がファッション誌を読みながら私に
『早く30才になりたい、だってトレンチコートが似合うようになるから。小林麻美さんがananで言ってるよ』
小林麻美!今も昔も大人の女の代表!
彼女に言われたんじゃ、その気にもなるもんです。その頃、魚屋のお姉さんが24才くらいだったと記憶していますが、私もお姉さんもその頃来ていたコートと言えば、ダッフル、ダッフルコート。ああ子供丸出し。大人の女は遠く感じたものでした。
ところが、その冬、彼女が東京に遊びに行って買ってきたものは、バーバリーのトレンチコート、あれれ?目標としていた30才には6年も前倒しです。話を聞いてみると、
小林麻美のトレンチ姿を雑誌で見てから もー頭の中が毎日、トレンチでいっぱいになって、トンカチって文字見てもトレンチに見えちゃって、思い切ったの。
なるほど。
しかし、お姉さんは少しぽっちゃりさん、彼女が着るのと小林麻美の着こなしでは、かなりの隔たりが、、、やはり、早過ぎたのか、と勝手に想像していました。
そして年を越した3月、久しぶりにお姉さんにばったり街で会ったのです。彼女は驚くほど痩せていて、見事にウエストをキュッと絞ったトレンチを着こなし、輝く笑顔を私に向けます。
好きで好きで焦がれた分、彼女が着こなしたいトレンチのスタイルにに自分を寄せていった努力が見えました。
その後、私は一生使えるものを揃えたいと、20歳そこそこで、エルメスバッグを買おうと決めたのは、このお姉さんの影響が強かったんだと思います。
一応、母に相談し、値段を言ったら、
母『そんな分不相応なもの、なんで欲しいの?あんたワンルームに住んでるでしょ?もっと生活レベルが上がって、高いバッグを持っても人から納得されるようになってから、買えば良いいいよ』
私『そんなの、どうやって判断するのよ?バッグ買って良いのはどういうレベルの人なの?』
母『・・・・・・・だ、暖炉が部屋にある人』
なんだそれ?(笑)
世論として、大した収入もないのに高級なものを買うことに、母のような意見が一定数あるのは承知しています。でも私は、その世論よりお姉さんの笑顔を断然信用しました。
冒頭のお嬢さんの追加意見として
『30才(大人の女性)にならないと似合わないって言われてるんだよねー』
んーこれにも、反論したい、29才11ヶ月まで似合わないものが30才迎えたら急に似合うようになるのかなー。
と、結論としては自分の収入なり貯金なりで買えるならば、その時点で手に入れて、自分に馴染ませて行けば良いんじゃないかな?と思います。誰かが言った年齢設定に縛られる必要はなし。つまり、
バーキンに適齢期はない!
欲しい時がその時!と言ってしまおう(笑)
おまけ。
小学生の頃、友人のお兄さんが(多分20代)でポルシェを直接外国から買いました。彼は6畳一間のアパート暮らしで収入の70%は車のローン。馬鹿げた買い物だと非難する人もかなりいました。
しかし、高知の田舎ではそれは珍しい事で、わざわざ見に行く人も多数。その頃はメジャーでなかった個人輸入だったこともあり(彼は必死で必要な英語を勉強した)新聞、雑誌にも取り上げられ、たちまち有名人に。
ローンが終わる頃には、名古屋で外車のディーラーになっていました。
ポルシェ適齢期もない。
ね、
欲しい時が適齢期!