7インチ盤専門店雑記598「スリーヴの広告が面白い」
7インチ・シングルのスリーヴに別の曲の広告が載ってますよね。同じレーベルの別のアーティストだったり同じアーティストだったり、…でも同時期の曲に限られたスペースと思われます。7インチ盤はレコ屋の限られた新盤を売るスペースの取り合いなわけで、古いヒット曲の広告を載せてもお取り寄せになってたでしょうからね。先日、ヘッダー写真のテン・イヤーズ・アフターの7インチ盤をチェックしていて、広告が目に留まってしまいましてね。さほど変わらない時期のつもりで眺めていたら中身が全然違っていて、時代を感じさせることに驚いてしまったんです。
ヘッダー写真は1969年8月の4thアルバム「Ssssh.」からのシングル・カット「夜明けのない朝 I Woke Up This Morning」、1970年3月の5th「Cricklewood Green」から彼らの最大ヒット・シングル「ラヴ・ライク・ア・マン Love Like A Man」、そして1970年12月リリース6th「Watt」からの「アイム・カミング・オン I'm Coming On」の3枚です。要はホンの1年半の間に3枚のアルバムがリリースされ、そこからシングル・カットされたものです。しかも、ロックが最も熱かった年と言われる1969年から70年にかけてなんですよ。…発売元キング・レコードの担当者の感覚なのかもしれませんけどね。
まず1969年8月の広告が、フェラス、ブーツ・ウォーカー、クリス・モンテス、ボビーとヴェラ、セルジオ・メンデスとブラジル'66、トム・ジョーンズ、レーモン・ルフェーブル、ジリオラ・チンクェッティ、トミー・ロウといったあたり、つまりポップスもポップス、王道ポップスばかりなんです。
7カ月後、1970年3月の広告は、サヴォイ・ブラウン、フリジド・ピンク、テン・イヤーズ・アフター、ブロードウィン・ピッグ、ハンブル・パイ、カントリー・ジョーとフィッシュ、デイヴ・メイスン、B.B.キング、ジェイムス・ギャングなんです。いきなりロックですよ。それも凄いラインナップです。…これ、全部ほしい。1枚だけ持っておりますな。「ファンク#49」のスリーヴ・デザインが知れただけでも収穫ですけどね。
1970年12月が、ラトルズ、フリジド・ピンク、デイヴ・エドムンズ、ムーディ・ブルース、ハンブル・パイ、プロコル・ハルム、ジョー・コッカ―、メリー・クレイトン、ラヴ、B.B.キングとなります。引き続き、凄いメンツです。
1969年の盤は訴求するべき相手が違ったということなんですかね?1970年の2枚のラインナップが思い切り時代も感じさせますが、今でも通用する当時を代表するようなロッカーが並んでますよね。まあ洋楽部門ということだったのでしょうが、見ようによっては凄いラインナップです。両方に登場するフリジド・ピンクなんて、日本ではもう忘れられたバンドじゃないですかね?…まあ、そもそも、テン・イヤーズ・アフターが忘れられた存在かもしれませんけどね。この2枚の広告は眺めているだけでも楽しいですね。
…えっと、テン・イヤーズ・アフターの中身ですけど、まあ上手いですよ。…あまり得意ではないバンドなんですけど、アルヴィン・リーに限らず、みんな上手いです。でも、時代の音、当時だから人気もあったかもしれませんけど、時代が違えば、このくらいの上手い人たちはいくらでもいるわけで、話題にもならなかったかもしれませんね。…久々、聴いてみて、思い切り古びて聴こえてしまって、そこがビックリでしたかね。…まあ、個人的には、時代の空気感という意味で、「むしろ価値があるかも」と思いたいです。