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清澄白河カフェのキッチンから見る風景 : 60s三題

「リバティ・バランスを射った男」という西部劇の映画があります。1962年8月に日本では公開されておりまして、年代的に私は観ておりません。ただゴールデン洋画劇場かなにかで観たような記憶はあるのですが、ジョン・ウェインが取り立てて好きなわけでもなく、さほど興味を持ってはおりませんでした。一方リバティ・バランス役のリー・マーヴィンは好きでして、記憶の片隅には居続けておりました。「リバティ・バランスを射った男」というタイトルでありながら、リバティ・バランスは主役ではないんですよね。リー・マーヴィンって悪役が多い役者さんですけど、この映画で主役並みの存在感を示して、その後は名優の仲間入りを果たしたということになっておりますね。

ここに一枚の7インチ・シングルがあります。ジーン・ピットニーが歌う「リバティ・バランスを射った男」です。バート・バカラック作曲、ハル・デイヴィッド作詞…なんですよね。そうなんだ、この曲、バカラック・ナンバーなんですね。当然ながらこの映画のために作られた曲なんですが、どういうわけか映画の中では使われていないんですよね。ジーン・ピットニーのヒット曲として知っていても、では何故映画で使われないままヒットしたのか、そのあたりが気にはなります。まあ聴いてみれば分かりますけど、西部劇の曲じゃねーな…。バカラックさん、ヒット曲を書きまくっておりますが、そういう配慮みたいなことはしない性質だったんですかね。

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ヘレン・シャピロという女子をご存知でしょうか?1961年、14歳のときにデビュー曲「子供じゃないの Don’t Treat Me Like A Child」が英国で3位になり、華々しくキャリアをスタートします。次の「悲しきかた想い You Don’t Know」は1位になっております。多分3曲目も1位になってます。1962年にはリチャード・レスター監督の映画「聖者が街にやってくる」に主演し女優も始めてしまいます。1963年にはデビューしたばかりのビートルズと英国内をツアーしたりしております。自分はこの辺で、彼女の名前を記憶に留めているようです。その後はあっと言う間に失速してしまいます。「子供じゃないの」と「悲しきかた想い」は弘田三枝子がやはり14歳で日本語カヴァーをリリースしておりますな。

ヘレン・シャピロの同い年のいとこにスーザン・シンガーという女子がおります。やはり歌手デビューしておりまして、英国内ではヒットしていないということですが、ヨーロッパ諸国では少しは人気だったようです。3曲目のシングル「悲しきハート Lock Your Heart Away」という曲は、やはり弘田三枝子がカヴァーしておりますな。弘田三枝子さん、やりますな…。

さて、この従妹同士のお二人、何が面白いって、後にT.Rexで人気者となるマーク・ボランといっしょに「スージーとフラフープ」というバンドを、小学生のときに組んでいたんですと。小学生がアマチュア・バンドというのも凄いなと思いますが、そこにマーク・ボランが登場するのも面白くないですか?…ついでに、どうでもいいことですが、14歳には見えませんね。ちなみに、この二人のシングル盤が手元にありまして、何だか一緒にしておいてあげたくなってしまうのですが、本人たちは知ったこっちゃありませんな。

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「ミザルー」という曲をご存知でしょうか?「ビートNo.1」とも呼びます。サーフィン・ミュージックの代表的な曲ですから、聴けば判るというヤツでしょうか。ディック・デイル&ヒズ・デルトーンズのテイクが、映画「パルプ・フィクション」で使われて、一発で定番テイクとなってしまいましたかね。昔はラテン系のスタンダード・ナンバーという扱いだったように思います。まあ、「パルプ・フィクション」、インパクト絶大ですからね。ついでに申しますとアド街ック天国の名物コーナー「薬丸印の新名物」でも使われておりましたね。ちなみに、これはカミサン情報です。私は結びついておりませんでした。よくよく聴くと「ハアッ!」とかいう声も入っておりまして、ディック・デイル版ですね。

この曲はサーフ・ロック系のバンドはみんな演る曲みたいですが、手元にザ・ライヴリー・ワンズ(The Lively Ones)という連中の同曲シングル盤があります。このシングル、ネットでいろいろ調べますと、なかなか人気があります。ドタバタしたドラムスがガレージ・パンクっぽくもあり、「こっちの方が格好いいんじゃね?」といったところです。1965年のシングルですが、ちゃんと少しはヒットしたようです。最近サーフ・ミュージック系のギター・インスト・バンドばかり聴いて遊んでおりますが、ザ・ライヴリー・ワンズ、オススメです。よくよく見たら「パルプ・フィクション」のサントラ盤に、この連中の「サーフ・ライダー」という曲も収録されておりますな。面白いんでもう少し調べてみますかね…。

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というわけで、60sネタ三題、いかがでしょうか?コロナのせいで買い出しに行けないため、オークションなどで入手した大量の古い7インチ・シングルでSaleをやったりして遊んでおりますが、まあレコ屋に行って自分が買ってくるとは思えないものばかりですから、かえって貴重なご縁を頂戴したような気分でもあります。まだまだ知らない曲で面白いものがたくさんあるようですから、勉強がてら、しばらくは楽しめそうです。




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