7インチ盤専門店雑記727「隙間の魅力」
ジョー・ジャクソンが好きでしたけど、リアルタイムではそのことを共有できる友人はあまりおりませんでした。ポリスやらプリテンダーズもそうなんですけど、リアルタイムでこの辺の音楽が好きという人間が身の周りにおりませんでした。パンクというほどでもないのですが、そこはかとなくパンキッシュなニューウェーブ、好きでしたね。やはり筆頭はジョー・ジャクソンでした。
なにはともあれ、ファースト・アルバム「Look Sharp」ですよ。それまでヘヴィな魅力に取り憑かれておりましたから、ここでシャープな魅力に開眼したようなものでした。ギターのカッティングが格好良いと思った極初期の音源ですかねぇ。フュージョン系の世界では、一足先にバジー・フェイトンの魅力にやられておりました。徐々にカッティング・ギターが格好良いと思うようになったきっかけは他にもいくつかあって、ロケッツのフリートウッド・マック・カヴァー「オー・ウェル」のヒットもその一つですかねぇ。
ジョー・ジャクソンの極限まで削ぎ落としたようなシンプルな演奏は、やはり驚きでした。ポリスも音数が少ないのでそういった世界は徐々に広がっていたところだと思います。それでも、ギターのカッティングの音の隙間までが魅力的でしたね。世の中のメイン・デバイスはCDに切り替わったころ、かなり早いタイミングで「ルック・シャープ」のCDは買って試しました。…あれ?全然違うじゃん。驚きましたよ、ホント。言うなれば音の隙間を再現するのは、デジタルでは無理なのかと思いました。
とにかく好きなのは、デビュー曲「奴に気をつけろ Is She Really Going Out With Him?」です。1978年にリリースしたときは英米ともダメ、翌79年にかけてファースト・アルバムから4曲カットしますが、いずれもダメ…。ここで再度デビュー曲をリカット、リイシューします。これで英国13位、米国21位まで行く大ヒットとなります。要はパンク/ニューウェーブ期、時代の変化に世の中がついて行けてないわけですよね。ポリスも初期のシングルはリカットでようやく評価されましたよね。
手元にあるLPは米国盤ですが、猛烈にいい音で鳴ります。マトは手書きでAと1がバラバラに刻まれておりますが、初期の盤のようです。国内盤7インチは見本盤でして、これがまたいい音を聴かせております。
どこがいいかというと、ギターの音と音の隙間にしっかり無音という音があるんです。そこがかなりのリアリティを持って鳴ってくれるんです。CDだと音の隙間が本当の無音で不自然な鳴りなんです。今さらにこの辺の音は、デジタルが苦手とする部分なのかも知れません。ドラムスのポンという音の減衰するカーブがおかしいというのは昔から言われておりましたが、ギターでもシャープな音だと同じことが起きるんですねぇ…。
参考までにYouTubeのリンクを貼るわけですが、当然ながら再現できません。こういうシャープなカッティング・ギターが格好良いと思い始めると、そこから随分音楽の聴き方は変わりましたねぇ…。
ちなみにお店を始めてから、ジョー・ジャクソン好きは何人か知るに至りましたが、皆さん1984年の「Body & Soul」がお好きな方たちだったりします。意外なものです。