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7インチ盤専門店雑記554「フォガット…おかわり!」
昨日に続き、サヴォイ・ブラウンの残党、フォガットについてもう少し書いておきたくなってしまいました。如何せん大好きなバンドです。気になってnote内検索で「フォガット」と入れてみたところ、昨日もコメントを頂戴したTakeshi Tadaさんがいっぱい書いていらっしゃいました。そして自分の文章もごそっと出てきて、「あれ、こんなに書いていたっけ?」と不思議になったのですが、以前やらせていただいたラジオ番組のブルースロックの特集やカーソングスの特集などでちょろっと触れていたりしたんですね。
番組でもあまりかけた記憶がなかったので、ちょいとビックリでした。何故かけなかったかというと、1時間の特集でも悩ましいくらいに好きな曲がいっぱいあって1回では魅力を語り尽くせないなということと、ラジオでは伝わらないだろうと思われる音質の問題、そして何と言っても日本ではあまり人気がないということが引っかかっておりました。
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どう時間がかかるかというと、例えば、初期のシングルで「Honey Hush」という面白い曲がありまして、これだけでも語れば相当時間を割かれます。昨日、コメント欄でTakeshi Tadaさんも触れていらっしゃいましたが、如何せんブリティッシュ・ロックの大名曲絡みです。簡単に触れますと、1956年のジョニー・バーネットのトリオのシングルA面がタイニー・ブラッドショウのカヴァー「Train Kept A-Rollin'」B面がビッグ・ジョー・ターナーのカヴァー「Honey Hush」です。特に「Honey Hush」はファッツ・ウォーラーの「Hi-Ho Silver」へのオマージュとして作られた曲らしいです。
この2曲を混ぜて「Train Kept A-Rollin」としてリリースしたのがヤードバーズでして、両方の曲のフレーズが入り込んでおります。如何にも古い曲オタクのジミー・ペイジがやりそうなことです。ヤードバーズにジェフ・ベックとジミー・ペイジの2人が同時に在籍していた頃、ライヴで毎度演奏していた曲ですが、エアロスミスも近いかたちでカヴァーしております。一方でジェフ・ベックの1967年のソロ・デビュー曲って「Hi-Ho Silver Lining」じゃないですか…。何かもの凄く面白いことをやっていたのかな?と思いませんか?
…ま、フォガットはその「Honey Hush」をストレートなハードロックに仕立て直しているわけなんですけどね。サヴォイ・ブラウンを持ち出すまでもなく、ブルースに関して相当知識がないと、フォガットのやっていたことがうまく説明できないという印象もあり、…話が長くなりがちなんです。
簡単に概観しますと、その後フォガットは1975年の「Fool For The City」の大ヒットもあり、いわゆる絶頂期を迎えます。76年の「Night Shift」78年の「Stone Blue」79年の「Boogie Motel」と、途中大ヒットライヴを挟んだ時期で、FENではよくかかっておりました。
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元々ベーシストの体調不良等もありましたが、絶頂期は長続きしません。80年代に入ると少し活動に翳りが見え始めます。時代の音からも遊離していったかとも思います。でも自分は好きでしたから、頑張ってレコードを探しました。本当に頑張って探さないと見つけられない状況でしたね。インターネットの時代になって、若い方にはあの苦労は想像もつかないでしょうけどね…。思い入れが強いということだけはご理解いただけますでしょうか。
80年「Tight Shoes」81年「Girls To Chat & Boys To Bounce」82年「In The Mood For Something Rude」83年「Zig-Zag Walk」とコンスタントにリリースは続けますが、音楽性やテイストも変わっていき、そろそろ止めた方がいいかもと思い始めた頃に止まりました。94年ごろ復活し、さらに5枚ほどスタジオ録音もリリースされますが、やたらと編集盤も出たりして、ああ昔の栄華が食い物にされているな…という印象になってしまって、ちょいと悲しかったです。2000年にロンサム・デイヴが亡くなってからは、もう同じバンドだとは思えなくなってしまいました。
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自分にとってフォガットはやはり70年代のバンドなんですよね。実はLondonから「Before Foghat Days」という同じ面々がやっていてもサボイ・ブラウンでもない、フォガットでもない音源を集めた盤もリリースされております。ブルース・ロックかとおもいきや、全然違うことをやっていてビックリしましたけどね。「ブルー・スエード・シューズ」や「ビーバップ・ア・ルーラ」や「ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイン・オン」といった、クラシカルなロックンロールなんですが、ヴォーカルのせいか、そこはかとなくフォガットを感じて面白いことは面白いです。
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ちなみに、ヘッダー写真は1989年にリリースされたベスト盤ですが、選曲に異議ありでして、あまり楽しめません。でも89年のアナログ盤です。盤の軽さが時代を感じさせますが、音の良さというか音の違いを楽しむ盤と考えております。ベスト盤でドリルホールというのも、時の流れの無情を感じませんか。…「Honey Hush」は入っておりません。
いまだにフォガットは入手困難が続いております。特に7インチ盤はウルトラ・レアですね。