見出し画像

7インチ盤専門店雑記737「ネオ・ルネサンスちゃう」

自分は色盲なので色に関しては全くもって自信がありません。子どもの頃から写生でも木の幹を赤く塗ってしまったり、ピンクとグレーの区別がつかないようなヤツです。でも困ったことに、何故かアートは好きなんですよね。

創造性ばかりを求める学校の美術の授業は嫌いでしたが、欧州的な旧いアートは時間を忘れて見入ってしまう方です。美術館巡りは相当好きですね。モダンアートに限らず、旧いものが好きだったりします。

その傾向を意識したのはジョン・フォックスのおかげかもしれません。ウルトラヴォックスの提示する美はかなり敷居が高かったのですが、繰り返し眺めていたらいつの間にか好きになってしまったようです。リーダーがチェンジしてからのウルトラヴォックスにそれほど惹かれたわけではないので、ひょっとしてジョン・フォックスか?となったわけです。ニューロマンティックスも素直に受け入れるのではなく、そこの中に自分の感性と呼応するものを求めて聴き漁ったりしておりました。

旧い教会建築なども好きなのですが、建築様式まで語れるわけではありません。ロマネスクからゴシック様式、そしてルネサンス期のものは本から得た知識のみで、あまり実物を見たわけではありませんが、好きみたいです。時間の積み重ねが織り成す美のようなものに惹かれ、そういったものに関するスクラップブックも作ってましたねぇ…。まあヘンかもしれませんが、法隆寺の大判写真集とか買って眺めたりもしておりました。土門拳さんの写真集も買いましたねぇ。…まだどこかにあるはずなんですけどね。

ジョン・フォックスの音源を聴き漁っていた頃、上手いのか下手なのかよく分からないものの、本人が良ければそれでいいのかと思えるようになり、随分いろいろな音楽を聴く敷居を下げてくれたような気がします。LPも凝ったデザインでしたが、写真を掲載した12インチ・シングルもしっかり作り込んであり、その美しさに惚れ惚れしておりました。

古いものを消化して新しい美を生み出す作業が見て取れるようで、しかも「The Garden」あたりの音源は、随分新しい音が鳴り響いておりました。…80年代初頭のはなしですけどね。そこでたまたま出くわした「Endlessly」という曲にドはまりして、もう繰り返し聴きましたよ。かなりハードなシンセ・ポップ的な音なんですけど、あの当時はこれがデフォルトになるという感覚を持っていましたね。実際になりかけたようにも思いますが、ハードロックや80sプログレ、LAメタルの波も結構強烈で、完全にそちら側に行ってしまうことはありませんでしたね。…行くと思ったんですけどね。

ただ自分の聴き方の問題かもしれませんが、12インチ・シングルが流行した時代でもありまして、かなり低音が強調されたリミックスが横行していた時代です。「Endlessly」もLPやら7インチ・シングルやらいろいろ聴き比べて、やっぱり12インチ・シングルの低音成分豊富なヴァージョンでないとダメだと思い始め、かなりTPOを選ぶ音源であるという認識も持っておりました。…残念ながらYouTubeの音源は満足できるものではないのですが、それでも、いまだに時々聴きたくなりますから、よほどハマっていたんでしょうね。

日本でネオ・ルネサンス様式と言うと辰野金吾とかの建築の話に行ってしまうのですが、そういう音もあったということで…、いやあウチのお店のスピーカーから出すと気持ちいいんですよ、これが。




いいなと思ったら応援しよう!