7インチ盤専門店雑記461「アリス・クーパー(2)」
アリス・クーパーに関しては、やはり自分の音楽趣味に与えた影響が大きいので、後々振り返るコトができるように、意識して集めておりました。それでも手に入らないものはあります。一部のアルバムはヒットしておりますが、売れてない盤もいろいろありますからね。
とにかく、どういった影響かというと、デザインすることの面白さが第一、そして感性の自由度が高かったこと、子どもの目にもアレを真面目にやっていると映ったわけではなくて、なりきり度の高さは笑えつつも、すごいなーと。他人様と違う方、違う方を選ぶ自分の性格に少しは影響しているようにも思えます。
自分はバンドとしてのアリス・クーパー、つまり1974年頃までが好きなんですけど、ソロ・アーティストとなったアリス・クーパーもバラードは好きでした。何だかんだでどの曲もメロディアスですし、個性もあって他にはない価値を提示していたと思います。結局あのイロモノ感というか、とても高尚とは言えない下世話なスタイルが、実に1970年代のアメリカ、それもデトロイト臭プンプンでいいんですよ…。
結局泥沼化したヴェトナム戦争やウォーターゲート事件のような恥ずかしい事態を直視できず、旧き良き時代に憧れる「アメリカン・グラフィティ」的な世界観に浸っているのと大差なく、非現実的なものが一定の価値を生み出せた時代背景を如実に表しているのではと考えております。
アリス・クーパーに「アリスは大統領 Elected」という曲がありました。まだ英語の歌詞がよく分からないガキは、メロディだけで好きになり、ベスト盤を購入して聴きまくりました。今となっては、痛烈な政権批判であったことは理解できるのですが、やり方がアメリカンというか、他の国ではあり得ませんよね。大貫憲章氏はライナーノーツで「「正気の沙汰でない国」の「正気の連中」」とまで言っておりますね。
実際に出馬したのは単なるプロモーションだと思いますが、ヘビを首に巻いた地獄の使者みたいなヤツに「オレのほうがマシかも」と言われたニクソンも、さすがに笑うしかなかったでしょうよ。こういうシニカルな笑いを全力でやって見せるアメリカンは好きです。さすが自由の国ですね。
余談ですが、このライヴ盤は名盤です。ショーは観るものかもしれませんが、あるアーティストの最高の瞬間を記録したライヴ盤は非常に価値があると思います。実際にはシアトリカルで、音楽が聴きたい人間には冗長だったかもしれません。でもそれを含め、時代の空気感と個性を封じ込めてあると思います。
アリス・クーパーが時代の象徴と言ったら笑われるかもしれませんが、歴史(年表)を縦軸に、音楽を含めたカルチャー/サブカルを横軸にしてマトリクス的に見たとき、単なる流行で済ませられない"符合"を見つけることが面白いわけです。