7インチ盤専門店雑記741「キー・オブ・ライフ」
スティーヴィー・ワンダーの「可愛いアイシャIsn't She Lovely」、1975年の「キー・オブ・ライフ Songs In The Key Of Life」のSide3冒頭を飾る大名曲ですよね。でもアメリカではシングル・カットされておりません。6分以上ある長尺曲でして、スティーヴィー・ワンダーが編集して短縮することを嫌がったからだとか。でもラジオ・オンエア等でポイントを稼いで、アダルト・コンテンポラリー・チャートで23位まで行ってしまいます。凄いですね。
日本では7インチ・シングルがプレスされておりますから、この辺の事情はずっと後になって知ることになるわけですが、如何せん大名盤「キー・オブ・ライフ」収録曲です。他にもシングル・ヒットして当然というべき名曲が目白押しです。まずはリード・シングル「回想 I Wish」が76年12月にリリースされます。アルバムが9月リリースなんですけど、この辺のゴタゴタを象徴する事実ですかね。
1973年の交通事故で一時は昏睡状態にまでなったということですが、何だか凄く不思議だったんですよね。そんなビッグネームの全盲のアーティストがクルマにはねられたのかなとしか想像できなかったのですが、実際は友人のクルマで送ってもらっている最中に、たまたま荷崩れを起こしたトラックの積み荷の丸太がフロントグラスを突き破って直撃をくらったんですねぇ…。よく生きていたなというやつですね。
ただ1974年は「インナーヴィジョンズ」は売れ続け「ファースト・フィナーレ」も大ヒットでしたから、あまり気がつかなかったけど、1975年の空白が絶頂期であることからも酷な人生を歩んでいるなぁと、他人事ながらよくぞ生還してくれたと思います。その後のアイシャちゃんの誕生ですから、嬉しかったでしょうね。
ちなみに「キー・オブ・ライフ」からの2ndシングルは「愛するデューク Sir Duke」、3rdシングルが「アナザー・スター」、4thシングルが「永遠の誓い As」、アルバムに一曲あればと言うような大名曲が4曲5曲、そう考えるともの凄いアルバムですね。
それでもこのアルバムは世に出るかあやしかった一面もあるそうですね。ヤマハのGX-1というシンセと出会ってなければ音楽活動も止めていたかもという話は昔からよく耳にしますが、確かにこの盤の演奏では大活躍してますね。ただ問題は次作で、創造力は衰えるところを知らないわけですが、一般人がついて行けないレベルに達してしまったようでした。79年のサントラ扱いになるアルバム「シークレット・ライフ Journey Through The Secret Life Of Plants」というドキュメンタリーは、問題作ですが、ヒット作ではありません。…4位までは行きましたけどね。GX-1は全面的に大活躍しております。
世間的には、またモータウン的には、さらに次の「ホッター・ザン・ジュライ」がヒットしましたし、よかったんでしょうけどね。大ヒット曲「マスター・ブラスター」はレゲエですし、「ハッピー・バースデー」はマーティン・ルーサー・キングに捧げられた政治的なメッセージ・ソングでしたから、大いなる分断も生んだようですけどね。…結局「ウーマン・イン・レッド」や「イン・スクエア・サークル」までしばらく時間を置くことになるわけですか。…やっぱりこの人の人生は大変だなぁ。激動の人生って、このレベルじゃなかなか無さそうな気もしますね。
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