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7インチ盤専門店雑記860「月は無慈悲な夜の女王」
「月は無慈悲な夜の女王」は大好きなロバート・A・ハインラインのSF小説のタイトルです。原題は「The Moon Is A Harsh Mistress」、アイザック・アシモフと並ぶ古典SFの人気作家ですが、最も好きな作品は「夏への扉」ですかねぇ…。猫が登場する小説としても人気があるもので、ストーリーも好きですが、タイトルをはじめとした彼が使う言葉の語感が好きなんです。
先日、帰宅途中のバスの車窓から流れゆく景色を眺めていた時に、「待てよ、そういうタイトルの曲もあったな」ということがアタマの中を巡り始め、昔だったら数日間悶々としたことでしょう。ウェブで簡単に調べられる現代は本当に便利です。
ジミー・ウェッブが書いた曲でした。おそらくリンダ・ロンシュタットのヴァージョンで知っているのでしょう。グレン・キャンベルやジュディ・コリンズやジョー・コッカーも歌っているようですね…。しかし、メロディは直ぐには出てきませんでした。YouTubeで検索して、「ああ、これか」となったわけで、ウェブの恩恵に感謝、感謝です。
1982年にリリースされたリンダ・ロンシュタットの「ゲット・クローサー」、大好きなアルバムでした。ソウル・クラシックのカヴァー曲が多いアルバムですが、ポップなタイトルチューンに続いて出てくる、あの2曲目ですね。実は「月は無慈悲な夜の女王」ともう一つ、ジミー・ウェッブが書いたバラードが入っていて、実はその「Easy For You To Say」の方が好きでした。
ついでに書いておきますと、このアルバム、キャッチ―なタイトル曲から始まりますが、そのオープニングからイメージする内容とは大きくかけ離れたものでした。しかし、そのアルバムの中で、もう一つキャッチ―なロッカ・バラードが収録されておりまして、ジェームス・テイラーをフィーチャーした「I Think It's Gonna Work Out Fine」です。アイク&ティナ・ターナーのカヴァーですが、実はこれがもの凄く好きでした。世間的にはソウル・クラシック・カヴァーが評判で、ここらで自分と世間一般の感覚の違いを思い知らされたようなアルバムでした。
えー、「ゲット・クローサー」のことが書きたかったわけではないので、個人的には思い切り話が逸れてしまったのですが、「語感」というものが気になったということです。
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先般、自宅の書棚で吉田篤弘さんの短編集「針がとぶ Goodbye Porkpie Hat」を見つけまして、「このタイトルがいいんだよな」と思い、ついつい読み返してしまいました。最近は目がダメで読書のペースがうんと落ちてしまいました。それでも吉田篤弘さんの本は枕元に数冊置いてあり、ときどきパラ読みしてはそのまま眠りに落ちるようなことをしています。如何せん読後感とまで行かなくても、この方の文章は読んでいて気持ち良いものが多く、妙に気分が落ち着きます。使われている言葉が好みなのでしょうか。「語感が好き」といったところです。
表題の短編では、B面の最後の方で針がとぶビートルズのホワイト・アルバムが登場します。「グッドバイ」と口癖のように言う伯母の遺品を整理している女性の話ですが、同じ話の中にポークパイ・ハットも登場します。特にストーリーとは関係ないにしても、これを読むと、当然ながらホワイト・アルバムと同時に、ミンガスの「Goodbye Pork Pie Hat」も聴きたくなります。
言葉遊びかもしれませんが、「月は無慈悲な夜の女王」と「グッドバイ・ポークパイ・ハット」どちらも好きな語感です。