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清澄白河カフェのキッチンから見る風景 : 環境の変化
もう無理かなと思っていたのですが、何と新人さんが入りました。年度末とか年度当初ではない12月ですから、こちらもビックリです。常時募集の貼り紙は掲出していますから、おかしくはないのですが、やはり人手不足と言われて久しい世間の動きと連動するものですからね。
先週のランチタイムですが遅めの時間に食事後声をかけられましてねぇ…、どういう店かも知らずに「ここで働きたい」ということでした。メイン・スタッフのMさんが舞台で一月まるまるお休みしていた最後の方でしたから、それを理由にして、「相談してから連絡します」と回答し、私のインタビュー記事が載っている資料やらを手渡して、この店を知る時間をとってもらいました。如何せんクセの強い店ですからねぇ…。ただの飲食店だと思ったら全然違った…みたいなことになりかねません。
4日ほど間をおいてまだ働く気があるか電話で連絡したところ、「働きたいです」ということで、翌日から入っていただきました。当然いきなり使い物になるわけはなく、メニューを知ってもらうところからですが、有り難いことにその日のランチタイムはかなり落ち着いており、売上げの心配よりも、ちょうどよかったという気持ちの方が大きかったですねぇ…。
何と絵描きさんですと。やはりカルチャー/サブカルの匂いを嗅ぎつけて、ここならと思いましたかねぇ…。マニュアルの無い大人スタイルの職場は最初は戸惑いますが、慣れればやりやすいでしょうから、早く慣れて欲しいところです。マニュアル通りに動いていればOKというハンバーガー・チェーンみたいな店でも稼げるわけですから、マニュアル人間はそちらへどうぞという世界です。自分で考えて、どうすればお客様がより快適に過ごせるかが優先される世界へようこそ、というわけです。あまりそういう経験はないようですが、礼儀正しい真面目そうな方ですから、期待してしまいます。
お若い方ですから、アナログレコードに触ったことはないようです。でもその点はランチタイムの他の2人も同じです。問題ありません。この手の話はもう少し慣れてからでいいでしょう。まずは飲食店のフロア担当の基本部分からですね。とにかく面接をしていて、面白いと思った一つが絵を描くという話で「アナログもデジタルも」と言うわけです。今やイラストであれ、デジタルが主流ですからねぇ…。フツーの紙やキャンバスに描くのをアナログと言うんですね。音楽と同じように、アナログに拘り続ける付加的な価値がそこにはあるのでしょうか。
そういえば、スタッフの中心的な存在のMさん、舞台本番ウィークが終わって戻ってきましたが、今回は絵描きさんの役だったんですと…。凄いのが、舞台で使った油彩やらデッサンはちゃんとご自分で描いたんですと…。元々絵心がある人だなとは思いましたが、舞台で使えるものまで描けるとは、恐れ入りました。
彼女の舞台、かなり好評でした。常連さんから「行った?」とか訊かれたりするのですが、行けるわけないですよねぇ…。彼女がいない分、余計に店にいなければいけない時間が増えていたんですから。そのしわ寄せで買い出しにも影響が出て、いまだに解消しきれておりません。随分余裕を見て買い込んでいたんですけれど、11月後半は妙に混みましたからねぇ…。いまだに休憩時間も削って、走るように買い出しに飛び回っております。いまなお戦争の影響は大きく、ヨーロッパ方面からの輸入食材が酷いことになっておりますから、影響を最小限にとどめないと厳しくなってしまう小規模飲食店の仕入れは、ホント簡単ではないのです。Amazonだって安い物もありますけど、妙に高いものもありますからね。足で価格チェックしている人間の強みというものは確かにあります。
思うに環境の変化はあらゆる分野で起こっており、しかももう戻れない状況ですから、心して自分から変わる覚悟も必要かと思われます。コロナ禍や戦争で飲食店を取り巻く環境は大きく変化しましたが、そもそも地球温暖化などのじわじわくるヤツは特に気がつき難いですし、慣れて行くしかない部分も多々ありますから、恐ろしいことです。そのじわじわくるヤツというのをプッシュしてくれたのは、やはりインターネットやスマホの登場なんでしょうね。ホンの20数年前、ミレニアムなどと言っていた頃までインターネットなんて知らなくてもフツーに暮らせたわけですが、今ネット抜きに文化的な生活を送るのはかなり厳しいでしょう。この環境の変化を予測できていた人間はどれくらいいたのでしょうね。長い目で見たら、かなりドラスティックな変化ですが、同時代に暮らしている人間にその感覚は得られませんからねぇ…。
2000年代、主にシステム関連の仕事に就いていた自分でも、ここまでの大きな環境の変化は予測できませんでしたね。自分が早く慣れてしまえば有利に動けるという実感はありましたから、IT関連のビジネス書は読みまくりましたし、実際に情報セキュリティ関連の仕事では相当頑張ったと思います。02年までは中小企業のIT化支援をやっていて、総務省の方が「江東区で何が起きているんだ、誰だお前は」と尋ねていらっしゃいましたからね。IT系の雑誌とかにも随分顔出しで掲載されていましたし…。
その後、情報システム課で6年過ごし、その後も各所でシステム更新関連の仕事をやりましたから、…自分自身、大きな環境の変化の中にあえて身を置いたわけです。…この手の情報系の仕事をはじめとした新規事業に関しては、できない人間を配属すると壊れてしまうので、事前に打診があるんです。私は一度も断ったことがないので、その結果、役所では例外的な、異動回数が猛烈に多い人間なんです。
まあ、何が言いたいかというと、今現在の時分は、老後に好きなことを仕事として楽しくやっておりますが、環境の変化に対応できる柔軟性がないと、何をやろうとしても厳しいことになりがちなんです。今の飲食店経営も、レコ屋経営も、インターネット抜きには考えられません。しかも、そこで求められるITリテラシーは、実は結構高度で、知らないで済ませることはできますが、絶対に経営に無理がくるんです。そういった分野での柔軟性は、能動的に身に着けるように積極的に動かないと得られないものなんですよ、これが。
情報セキュリティなんて自分には関係ないと思っている方も多いとは思いますが、恐らく関係ない職種なんて一つもなありません。できないよりはできる方がいいに決まっている社会、現代社会の情報セキュリティなんて、できないままに済ませてくれる事業者などは、優しいわけではなくて、危険に晒してくれるだけですから。…「君子危うきに近寄らず」なんて言っているのがイチバン危険だったりしますからね。
思い切り話が逸れてしまいましたが、思うに、今の若い人たちって可哀想なんですよ。我々が若かった頃よりも遥かに多くの知識を身に着けてないといけないんですよ。特に就職なんかするときに、ITリテラシーという部分で、求められるものが随分大きかったりするわけですよね。入社してから研修で身に着けられるという方はいいでしょうけど、…そう思う時点で出遅れているわけで、もう組織内の競争で負けてますよね。
ついでに、最もアタマを使わないでも簡単にできると思われている飲食店などのサービス業でも、このインバウンド需要が大きくもの言う時代、当たり前に英語くらいはしゃべれないと使い物になりませんからね。通販サイトだって自分で作らないと、外注はカネがかかりますからね。…本当に厳しい時代です。…若い人にはやさしく接しましょう。頑張れ~新人!