7インチ盤専門店雑記668「Bad Anima」
1970年代後半から80年代前半にかけてのフュージョン・ブームは思い切り引っ被りました。当時、77年リリースのプリズムの1stにドハマりしており、フュージョンや聴きやすいジャズあたりを一生懸命ディグしておりました。実は同時にニューウェーブも、古いタイプのロック…すなわちプログレも…サザンロックも、しっかり聴いていたんですけどね。
自分のジャズの入口はソニー・ロリンズという自覚はあるのですが、その前にジャパニーズ・フュージョンやナベサダさんあたりは相当聴いておりました。ナベサダさんは「My Dear Life」や「I'm Old Fashioned」あたりを、「よく分からないが何か格好良いぞ」と、背伸びして聴いたクチです。
ヘッダー写真は、四人囃子やプリズムで活躍した森園勝敏のファースト・ソロ「バッド・アニマ」です。1978年リリースでしたが、コレがリリース当初は手に入らなかったんですよねぇ…。かなり経ってから入手しましたが、借りパクか何かで見当たらなくなり、ちょっと前に再度お安く買ったものです。…管理状態が悪過ぎですね。盤の状態は皆んないいんですけどね。
この時期、ジャパニーズ・フュージョンは魅力的な盤がいっぱいです。渡辺香津美は79年に「KYLYN」、80年に「To Chi Ka」という名盤が続きます。その前、「Olive's Step」や「Lonesome Cat」なんかも好きでしたけどねぇ。高中も79年の年末に「Jolly Jive」がリリースされて、80年は「Blue Lagoon」をやたらと耳にしました。そんな時期、ナベサダさんは78年が「カリフォルニア・シャワー」、79年が「モーニング・アイランド」、81年が「オレンジ・エクスプレス」、人気急上昇の若手が名盤をバンバン出してくるのを横目に、ヒット作を連発しておりました。「フュージョンならこんなもんでどうよ」といった余裕すら感じるクオリティでした。我が家では兄貴がナベサダ、私が香津美や海外勢という風に、ダブらないように買った記憶があります。…スクエアとカシオペアはリアルタイムでは全く聴いてないですね。
海外勢は、80年にはスパイロジャイラが「モーニング・ダンス」や「キャッチング・ザ・サン」といった代表作を立て続けにリリース、リー・リトナーは一連のダイレクト・ディスクの後、81年に「RIT」、ラリー・カールトンは78年に「Room335」を擁する「夜の彷徨 Larry Carlton」、80年が「ストライクス・トワイス」、ニール・ラーセンは78年「ジャングル・フィーヴァー」、79年「ハイ・ギア」、80年が待ってましたの「ラーセン=フェイトン・バンド」といった状況です。ニューウェーブだって面白い連中がドッと出てきて、おカネがいくらあっても足りない状況でした。
プリズムの「サプライズ」も80年、あれは強烈でしたね。もう森園勝敏はおりませんが、海外勢を凌ぐ魅力的な楽曲が詰まっておりました。森園勝敏の「バッド・アニマ」を買うのが随分遅れた理由を思い出していたら、他にも欲しいレコードが溢れていた、あの時代の感覚が蘇ってきましたよ。
「バッド・アニマ」もホント好きでした。テクひけらかしのアルバムを嘲笑うかのような、大人の余裕みたいなものを感じたアルバムです。ギタリストのアルバムなのに、キーボードの方が目立ちますし、ミドル・テンポの曲がかえって格好良いわけですよ。今考えると、四人囃子的でない部分に魅力を感じていたんだなぁと、不思議に思うわけです。