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7インチ盤専門店雑記743「ホッター・ザン・ジュライ」

先般、「キー・オブ・ライフ」から「シークレット・ライフ」について書きましたが、何だか凄く中途半端になってしまったような印象が拭えず、その後もスティーヴィー・ワンダーを聴き続けております。…と言っても、その次、1980年9月リリースの「ホッター・ザン・ジュライ」です。これはリリースされたときのインパクトをまだ憶えておりまして、ソッコー買いに行った一枚です。

何はともあれ、「マスター・ブラスター」ですよ。第1弾シングルがレゲエだったもので、結構驚かされました。まだボブ・マーレーも存命中ですね。彼は81年5月11日に亡くなっておりますが、この時期、海外ニュースは意外なほど早く伝わってきました。ジョン・ボーナムが死んでしまった直後で、サンバ的なリズムを叩くジョン・ボーナムを悼む一方で、「マスター・ブラスター」のダブ・ヴァージョンが結構ラジオでもかかっていたように記憶しております。

スティーヴィーもレゲエをやるかということを言ってましたねぇ…。彼には「ブギ・オン・レゲエ・ウーマン」という曲もありましたが、「マスター・ブラスター」はもっともっと本格的というか、B面がダブ・ヴァージョンだったりして、レゲエの語法で語っているような徹底さがありましたからね。しかも大ヒットしました…。世の中がディスコ色に染まっていて、ちょいと路線は違えどツェッペリンまでダンサブルになって、というときに、スティーヴィーはレゲエできたかという一事は物議を醸したんです。ただ、そういったことも含め、ジョン・レノンの悲劇が全ての流れを変えてしまったかという程にインパクトがありました。いろいろなものが吹っ飛びましたねぇ…。

そういったバタバタの中で、いつの間にかリリースされていたのが「疑惑 I Ain't Gonna Stand It」でした。「マスター・ブラスター」が騒ぎになる前にもうリリースされてしまったような早いタイミングで、「いやいや、レゲエばかりでなくて、こんなのもありまっせ」と言いたげな、カントリーの語法に則ったような曲でして、不思議なことをするなという印象でした。実際セカンド・シングルのリリースは1ヶ月後というタイミングでした。この曲は20年後にエリック・クラプトンがカヴァーしますが、私的には「やめときゃいいのに」的なカヴァーでしたねぇ…。

年明けには「レイトリー」もシングル・カットされますが、これは名曲ですが、個人的には何でシングル・カットしたのかなという印象だったんです。このアルバムには他にもっといい曲があるのにという気持ちがあったんですね。実は「ハッピー・バースデイ」が個人的には超絶大名曲だったんです。

この曲は、マーティン・ルーサー・キングに捧げられたものなのですが、要はキング牧師の誕生日、1月15日を国民の休日にしようという運動をやっていたということで、ただのお誕生日オメデトー曲ではなかったんですね。そんなことは後々知るわけですが、とにかく大好きなメロディでしたから、何でこれがシングルじゃないのという思いとともにLPを聴いておりましたね。

結局アルバムから4曲目のシングルとしてリリースはされるのですが、まあ例の如くでアメリカではヒットなし、英国では2位まで行ったということです。…いろいろあるんですよね、この人の場合。シングル曲なんてぜーんぶ名曲ばっかりなのに、ヒットしたりしなかったり、…でも文句なしにクオリティは高いわけで、安心して聴けます。ま、80年代の大ヒットはちょいと違う方向に行ってしまいましたけどね。…その辺はまた別の機会に。


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