7インチ盤専門店雑記140「ハーレム・ジャズ」
ハーレムって地名なんですよね。あの男性1対女性多という状況を意味するハーレムはHaremなんですけど、ニュー・ヨークのハーレムはHarlemなんですと。スペルは調べたことも無かったので、同じスペルかと思っておりました。そもそも地名のハーレムも、どの辺かよく分かっていませんでしたけどね。音楽的な話でいけば、アポロ・シアターやコットン・クラブがあるエリアという程度の知識しかありません。
そんでもって、問題は「ハーレム・ジャズ」という言葉です。一定の音楽スタイルなのか、一時期このエリアで流行したものなのか、よく分かりません。「そんなことも知らんのかい」と小林真人さんに怒られそうですが、観光ガイドさんが語るような内容のウェブサイトの情報をいくら読んでも、結局明確にはならんのです。1929年頃から1939年頃までの音源がコンピレーションされているものを目にしますから、時代はその辺、戦前の1930年代中心なんでしょう。まあ、昔のコットン・クラブで流れていた煌びやかなジャズあたりをイメージしていれば、当たらずとも遠からず…でしょうか。
ヘッダー写真は「ハーレム・ジャズ 1929」というオムニバス・アルバムでして、1面がヘンリー・レッド・アレン楽団、2面がお目当てだったキング・オリヴァー楽団の演奏が収録されております。ハーレム・ジャズといえばという感じで検索するたびに目につくキング・オリヴァーの方もいいんですけど、全然知らなかったヘンリー・レッド・アレン楽団が予想外にいいんです。何とも落ち着く音質で鳴ってくれますが、「生演奏だともう少し迫力があったのかな」などと考えてしまいます。でもこのレコードで鳴らしているときの音質がいいんです。この感触がよくて、こういう盤を買うわけですから。
加えて、これ、オークションでお安く出ていたので落としておいたものなのですが、恐ろしく状態がいいんです。相当古いもののハズです。まず定価1,500円1950年代から1960年前後のリリースであることがここから知れます。レーベルのデザインからも、ジャケットのペラさ加減でも、折り返しのかたちでも、古いということは分かります。
オマケに「ジャズ・コレクターズ・アイテム」なる記述があって、RCAビクターの音源から再編したもので、LPとしては日本最初の発売であります、とあるんですね。嬉しいことに解説は油井正一氏です。そしてもう一つ嬉しかったのが内袋なんです。
どうも書いてある内容から、東芝のエバーグリーン・レコードと同じもののようですね。60年以上前、ヘタすれば70年ほど前のレコードですから、この内袋の状態のよさにもビックリです。酸化して焼けやすい紙質ですからね。しかも、これは経験からですが、盤の状態がミント・コンディションもいいところで、何回も再生されてはいないようなピカピカ状態なんです。レコードの中身よりも、この盤のあまりの状態の良さに興奮してしまっているんですけどね。本当にタイム・マシン・ランクですね。
実を言うと、もう一枚同時に入手したものがありまして、チャーリー・パーカーです。こちらはジャケットも盤も、もっとキレイだったりします。こちらは、また別の機会に中身もしっかり聴きこんだうえで書こうかなと考えております。同じ袋に入れてある盤は、特に関連がなくてもイメージがリンクしていたりします。人間の脳は面白いものです。