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7インチ盤専門店雑記619「やり残した感」

英国ジャズ/アシッド・ジャズを代表するサックス奏者、コートニー・パインのデビュー盤です。とにかくメロディアスな曲が多く、ポップな印象ですが、テクニックも相当なものでして、スムース・ジャズといった線では語りたくない人です。この「Journey To The Urge Within」というアルバム、リリースが1986年でして、時期的にはジャイルス・ピーターソンたちがTalkin’ Loud 〜とか言って、アシッド・ジャズのムーブメントが勃興するタイミングです。この新人さんのアルバムがいきなり39位までランクインしたことが、当時のカムデン辺りのクラブでジャズが踊る音楽として爆発的な人気となっていたことと相乗効果があったことは間違いないと思います。個人的にはもう少し後の音源の方が好きです。

その後、全体の流れとして、インコグニートやブラン・ニュー・ヘヴィーズやジャミロクワイといった比較的ポップな人気アーティスト主流になって行ったために、コートニー・パインのようなテクニックを聴かせるという要素も強めなアーティストは、シーンの中心から少し外れてしまったように思うんです。そこが実はすごく残念でもあり、音楽の歴史の中でやり残した感が否めないような、もどかしさを感じております。

主要メディアがデジタルに移行したタイミングがまたよろしくなくて、自分もこの辺はCDで聴いていたのですが、やっぱりアナログレコードで聴きたいという欲求がムックリと頭を持上げまして、時間が経ってから探すことになりました。時期的には12インチ・シングルはそれなりに売られていましたが、LPはあまり見かけなくなっておりました。90年代に入って、その傾向はさらに顕著になっていきました。

コートニー・パインのファーストもかろうじて入手できましたが、彼に関しては12インチはレアでした。その後のアルバムもついに見かけませんでした。…そもそもリリースされたかどうか確証がないので、探すにしても集中力は欠いていました。残念ながら、今となっては、最もアナログレコードで(聴けないけど)聴きたいアーティストの筆頭になってしまいました。

また、YouTubeでいろいろ楽しめる時代になって、コートニー・パインの音源を検索したりすると、様々なリミックスがヒットしたりします。自分が持っているCDと違ったヴァージョンが出てきたりして、これはこれでいまだに楽しめる有り難い要因だったりします。…きっと数は少ないかもしれませんが、12インチ盤はあったんでしょうね。

さらに、自分にとってもやり残した感が強い原因に、ミカ・パリス(ミーシャ・パリス)のレコードが全然手に入らなかったということがあります。彼女のデビュー・アルバム「So Good」は1988年8月リリースなので、アナログレコードが手に入らなくても仕方がないのですが、彼女に関してはCDもどういうわけかご縁がなく、とうとう手に入らずじまいなんです。そこにはコートニー・パインがフィーチャーされていることは知れておりましたから、頑張って探していたんですけどね。他にも聴きたいものが多すぎて集中できない時代だったということでしょうか。今さらに、当時手に入れていたら、自分の音楽嗜好が少しは違う方向に行ったのではないかという気もします。

1992年頃まではインコグニートとコートニー・パインにハマり、そこからロニー・ジョーダンの方に行ってしまいますが、コートニー・パインは90年代中頃までカーステレオでさんざん聴きました。夜のドライヴのお供には最高でしたからね。「I'm Still Waiting」のメロディは、今でも夜にハンドルを握ると勝手に脳内再生されることがあります。

「Don't 'XplaIn」は12インチで持ってましたけど、先日売れてしまいました。…これもいいんです。…今さらにオススメです。


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