7インチ盤専門店雑記722「親御さんへのお土産」
インバウンドに関してはウチも少しは有り難い思いをしております。ここのところ、お食事を済ませたあとに7インチ盤の売りボックスをかなりしっかり見て行かれる外国人のお客様が続いており、なかなかに面白いことになっております。
昨日、アラサーといった年恰好の白人さんのカップルがいらっしゃいまして、イチバン混んでいるときに入って驚異の目で周囲を見回しながらも、空いてきた頃を見計らってレコードを見始めました。100円ボックスの値段が客席から見えるので、そこに興味を示したようです。
そう、このカップル然り、自分たちで聴くものではなく「親御さんへのお土産」なんだとか。オードリー・ヘップバーンのシングル盤数枚に加えて80sのポップなあたりを10枚お買い求めでした。男性の方がニヤニヤしながら近寄ってきて、「何でこんなものがあるんだ?」「アナタはDJか?」「状態がいいのに、こんなに安くていいのか?」と言ったことを矢継ぎ早に訊かれまして、答えながらもむしろ疑問になって「こんな古いのを聴くのか?」と訊いたところ、「親がよく聴いていたからみんな知っている、スティーヴ・ミラーは好きだ」ということでした。
さらに「どうしてNENAがあるんだ、ドイツ人だろ?」ということを言うので、「日本でも大ヒットしたんだよ」ということを言うと、「アメリカじゃ誰も知らないぞ、俺は知っているけど」ということでした。さすがにドイツの一発屋はもう忘れ去られた存在なのでしょうか?もうそういった会話が楽しくて仕方がないといった風情で、日本に着てからゆっくりしゃべる機会があまりなかったようです。お二人で顔を見合わせて、「おもしれー」ということで、腕をつかんで「コレ、あの曲だぞ」みたいな会話は延々続いておりました。
試聴しないかと返したところ、「アブラカダブラ」を差し出してきたので、ちょいとボリュームを上げて鳴らしてみました。…もう大喜び、「グッド・サウンド」とサムズアップの連発でした。…まあ、10枚で1000円、さほど荷物にもならないので、いい御土産でしょうか。…日本語が書いてあるスリーヴが面白いみたいですね。
ここのところ、J-POPブーム、シティ・ポップ・ブームで、日本人の盤をお求めの外国人のお客様は多いのですが、親御さんへのお土産となると、80sあたりのポップな洋楽曲の方がウケるというわけですかね。そういう意味では、これは新しいマーケットという気もしないでもないですね。若いカップルが親御さんへのお土産で買って行くというのは、これまであまり気づいていなかった需要です。しかも昨日のカップルみたいに、もう興奮状態で「おもしれー」というリアクションだと、こちらも楽しいですし、お買い上げいただければ当然ながら有り難いものです。
日本のレコードはプレスのクオリティも高いですし、ウチのように状態のいいものしか置いてないような店に出くわすと、アメリカのレコード・ショップとは違った驚きと面白さがあるんでしょうね。
外国人のお客様も口コミを見ていらっしゃる方が多いので、ウチの場合は台湾とヨーロッパ系がこれまで多かったわけですが、少し新規のフィールドを開拓できるといいですけどね。…面白いじゃないですか。
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