7インチ盤専門店雑記776「クルセイダーズの低音」
クルセイダーズの1974年リリースのアルバム「サザン・コンフォート」が何故か手元に2枚ありまして、どちらも国内盤です。一方がオリジナル、もう一方が再発盤ということになりますが、こうも音が違うものかと驚くほど違います。前もって書いておきますが、音が良い悪いではないのです。オリジナル・リリースの盤は低音がやたらと響いて、ベースが妙に前面に出てきております。無骨な鳴りとでも申しましょうか、粗削りな印象すらあります。
オリジナル・リリースも国内プレスのようで、手書きのマトリクスとかではありませんが、「1-1-1」とはなっております。そしてレーベル・デザインも全然違うもので、オリジナル・リリースの方は妙に渋いデザインなんですよね。ブルー・サムの青い指紋のデザインはよく目立ちますね。
一方、再発盤の方は、通常イメージするクルセイダーズっぽい音がしております。好みの問題なのかもしれませんが、スッキリしているのが再発盤の方で、バランス型とでも申しましょうか、フツーならこちらのほうが聴き易いかもしれません。いわゆるフュージョン全盛期によくあるタイプの音です。
ここまで書いて思い出したのが、ここからのシングル・カット曲「スーパー・スタッフ」の7インチ盤の鳴りでして、実は一度ラジオでもかけております。2022年1月OAの「7インチ盤でフュージョン特集」という回です。番組が始まって4か月ほどのタイミングですから、結構早い段階で渋い選曲をしております。実はこの7インチ盤が物凄い低音で、フュージョンの特集なんですけど、フュージョンのイメージをぶち壊すほどファンキーで無骨な鳴りだったんです。
よく見ると、7インチ盤もオリジナル・リリースのレーベルと共通のデザインですね。見本盤か何かかと思わせるシンプルさですね。
でもよくよく考えると、この盤、1974年リリースなんですよね。既にフルムーンは出ておりますし、前年にデオダートの2枚も出ておりますが、いわゆるフュージョンというカテゴリーのタイトルでは極初期のものでしょう。当然ながら、リリース当時はフュージョンとは呼ばれておりません。ファンク・グルーヴなどと言われておりましたが、ジャズ・クルセイダーズ期のバリバリにニュー・オリンズ系のトラッド・ジャズといった趣きから脱却しようとしていたわけですよねぇ…。1978年のフュージョンを代表する大名盤「ストリート・ライフ」よりもかなり前ですよねぇ…。後に思い切りフュージョン的な音を聴かせるジョー・サンプルもまだそういう考えに立ち至ってはないですよねぇ…。
そう考えると、オリジナル・リリースはよしとして、再発盤がどのタイミングでリリースされたかよくわかりませんが、フュージョンっぽい音質や鳴りに近づけるリマスタリング的なことをしたということなんですかねぇ?アーティスト・サイドごの意向なら別にいいんですけどねぇ…。
リアルタイムではまったくそそられなかったクルセイダーズですが、最近気になっていけないんですよねぇ…。