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清澄白河カフェのキッチンから見る風景 : 思いの承継

台風がゆっくり進んでいるので、予定が定まらず、何とも難しい舵取りを求められます。東京・清澄白河は、今日はまだ台風直撃というわけではありませんが、かなり雨はひどいようですから、お客さんは少ないでしょう。こんな日に町歩きもないでしょうからねぇ。平日はご近所のビジネス・パーソンのクイック・ランチを賄う店ですが、土曜日は町歩きのお客さんがほとんどです。…少しレコード目当てのお客さんもいらっしゃいますかね。

たまたま両方の様子を知っている常連さんに言われたのですが、平日と土曜日では随分雰囲気が違うので驚いたんだそうです。平日は1秒でも早くお料理を出すために、キッチンは殺気立ってますからね。そりゃあ、土曜日の「レコード終わるよ〜…次どうする?」とか言いながらやっているのとは違いますよ。平日夜ものんびりしてますけどね。

最近はnoteで発信している音楽好きの皆さんがご来店くださることが多くなりまして、本当に有り難い状況です。今週は水曜木曜とnoterさんがいらっしゃいまして、のんびり音楽談義を交わしておりました。イベントで紹介したい類の面白い話題がいろいろ飛び出すもので、メモでもとりたくなってしまいます。加えて金曜日はご近所さんだと思うのですが、ギタリストのH氏がご来店くださり、ニール・ショーン~バジー・フェイトンあたりの話題でいろいろ聴きながら、盛り上がってしまいました。こういう時は、キッチンをスタッフさんに任せきりになってしまうのですが、最近は慣れたもので、「私ではお相手できませんから」と、当然のようなことを言っております。有り難いものです。

結局働く目的なんですけど、スタッフ君たちと私とでは、全く違うものですよね。私は音楽を楽しむために働いているんです。「好きなことを仕事にする」ということに否定的な考え方を持っている方がいらっしゃるということを最近知りました。「じゃあ、好きなこと以外やらないのか」ということをおっしゃってましたが、それでは仕事は成り立つわけないですよ。性格にもよるのでしょうが、好きなことのためなら、少々面倒な雑事も積極的にやりますよ。飲食店につきもののグリスト清掃とか、卸売業者を活用していない今なら、買い出しもシンドイ作業です。面倒なことも積極的にやるのでなければ、好きなことを仕事にするのはむしろ難しいと思います。

10年近く飲食店なんぞやっていると、やはり居抜き専門仲介とか、M&A専門業者さんから目をつけられるわけで、毎日のように電話がかかってきたり、メールが着たりします。今週はM&Aの業者さんと会ってみました。「ただの飲食店だと思われると、かなり違いますよ」ということで、そんなに興味あるなら見においでということで会ったのですが、やはり「ゲー」みたいな顔をしてましたね。

かなり真摯な態度の若者でしたから、店のコンセプトやオーナーが何を考えてやっている店かという部分を、少し細かく語っておきました。ローカル・カルチャーやサブカル近現代史関連の情報発信とか児相のお手伝いについてや、間もなく予定されている展示イベントについても話し、コンセプトを引き継ぐことができるかという目線で話し合ったわけです。結局パーソナル・ブランディングの結晶みたいなものですから、継承するのも簡単な話ではありませんよねぇ…。

レコード・ショップも内包しており、アナログレコードがゴソっとあるという、音楽好きが集う店という個性は非常にわかり易い側面です。そろそろ引退が見えてきたオーナーの年齢も把握していることでしょう。最近は「こんなにレコードがあっても、棺桶に入り切らないから」と、レコードを売却するか、そのまま譲り渡すかということも考えないといけない事情を笑い話にしております。コレクターの末期は迷惑なものです。

店には全体の3分の1程度が持ち込んであるわけです。例えば廃業したとしても、持って帰る場所もありません。自宅のレコードラックもパンパン状態ですからね。コンセプトを継承してもらえるなら、レコードも置いて行きますよ。ローカル・カルチャーやサブカル関連の貴重な資料もいっぱいあります。一式まとめて引き受けて貰えるなら喜んでお譲りしましょう。何なら自宅にあるレコードも含めて…。一万枚とかいうレベルの枚数ですからね。…最悪、中古盤店や買取業者に引き渡すことになるのでしょうが、できればまとめて引き受けてくれる先が見つかる方が望ましいですよね。

M&Aもこういった事情に左右されることになるのでしょうが、そうなると働き方そのものにも思い切り反映していることが、ご理解いただけるか、…ですよね。こういった事業をやるには、長年の蓄積やオタッキーなレベルでの思い入れがないと本来はできないわけです。カルチャー、アート、人の繋がり、様々な要素が絡み合っているものですから、最終的には「思いの承継」なんですよね。

あ、ちなみに、ヘッダー写真は、昨夜営業を終えて一旦帰宅してから、まだ仕事をしているカミさんを迎えに行った時に東陽町で撮影した景色です。私にとっては見慣れた景色です。好きなことを仕事にする場合、家族の理解は非常に大きな要素となります。家事も含め、家族のためにできることは積極的に、そして徹底的にやらないとダメですよ。


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