新宿中村屋と末廣亭
「林家つる子、三遊亭わん丈 真打昇進披露興行」
新宿末広亭・二日目(主任わん丈)に行ってきた。
昨年師走小晦日、「第一回ミテ!演芸会」のチケットをもらったので夫と出かけた。
中入りなし、ノンストップで玉川太福(曲師:玉川みね子)の浪曲、三遊亭わん丈の落語にライブの臨場感で熱く燃えた。
わん丈さんのお見立ては、さすが元ロックバンドのヴォーカリスト!伸びやかな高音で活舌のよい声、グッドルッキングで演じ分ける登場人物の表情に目が釘付け、テンポよく笑いが満ちた廓噺は江戸時代でありながら昭和20年代の日本映画の気品ある俳優が演じているように思えた。
若手浪曲師玉川太福さんの陸奥間違いは、穴山が上司の指示を仰ぎに江戸城の門前まで馬を走らせる場面で、次々と語られる門の名前と共に私も馬を走らせている臨場感と江戸城までの流れる景色が浮かび、そして義にぐぐっと胸が詰まり、まるで活劇を観ているような名浪曲だった。
終演後、迷わず新宿末廣亭での「三遊亭わん丈 真打昇進披露興行」のチケット購入。
さて当日。 新宿だもん、新宿中村屋でしょ。
夜の部の時間を考え、遅めのランチを取る。
開演時間まで夫に付き合って新宿三丁目の本屋に向かう。
あっ!原田芳雄の写真!思わず足を止める。
新宿御苑からの観光客の大きな流れは、ほとんどが海外からの観光客で、円安、インバウンドだねぇとつぶやきながら末廣亭に戻る。
16時45分から20時30分まで、落語、漫才、奇術、ものまね、太神楽、本日の主任三遊亭わん丈さんの落語「幾代餅」とバラエティーに富んだ演目を堪能、新真打口上で目出たさのお裾分けに、ああ、縁起がいいね、寄席は心のオアシスだわと楽しんだ。
特に私たち的には三遊亭天どんさんの新作落語「飲みたい‼︎」が強く印象に残った。
居酒屋でくりひろげられる会話、若い女性の飲み過ぎで呼ばれた救急隊を横目に見ながら、呑めない雰囲気の中、あーだこーだと時に世相を取り込んだ屁理屈が続き、後半いきなり一気に呑んでからのハイテンション、ブレーキが効かない狂気じみた暴走となる変貌ぶりに爆笑、こういう演じ方、好きです。
夜、一段と賑わいを見せる新宿の街。
ちょっと「どん底」の様子を見てみようか。
またの機会に「どん底」には来ることにして、帰宅。
夫、軽くうち飲み。
私はやはりどうも納得いかないんだなあ、幾代餅の演じ方が。
前半の女将さんと清蔵の会話は小気味良いテンポで、時に清蔵の一途さに胸が詰まった。だけど後半、幾代大夫のキャラが見えてこないからストーリー展開にリアリティーが感じられなかったのは私だけだったのか?ちょっと駆け足でさらっと進んだからか?
で、餅屋だからの 下げで終わられても、、、、ねえ。
廓噺だから観客、特に若い女性への遠慮があるのかと思ったけれど、廓噺を演じるという時点でそれは要らないんじゃないのか。
(これはあくまでも落語素人の私の個人的な感想です)
古今亭志ん朝の「幾代餅」をyoutubeで聴きながらうち飲み(私は白湯飲み)。
いや、全くお見事!
幾代大夫の半生も、純な性格も、はっとする美しさも演じられた古今亭志ん朝の落語に二人して拍手喝采、ぐっと胸に迫るものありの江戸っ子ならではの廓噺の名演。