催花雨のころ おいでませ山口 Ⅰ〜山口市菜香亭と湯田温泉・小熊屋咖喱
一年ぶりの山口
何十年振りだろう、飛行機ではなく山陽新幹線で山口県に帰省するのは。
東京駅を午前十時過ぎに出発、新山口から山口線に乗り換えて湯田温泉駅に着いたのは午後三時半ごろ。県庁所在地としてはすこぶる交通の便が悪い。
急ぐ旅でもなし、流れる懐かしい景色を眺めながらの、単線のとろとろ乗車時間は嫌いではない。
夫の所用に合わせて二日間湯田温泉泊、その後防府市へ帰省して一泊、三泊四日の旅 noteです。
今年一月に発表された米ニューヨーク・タイムズ紙による 2024年に行くべき52ヶ所で日本の山口市が3番目に選出されたというニュースに、山口市民、隣市の住民、山口市に縁のある者たちは「なんで?」と一言、というリアクションが多かった。
それは決して山口市が魅力ある町ではないということではなく、西の京都と称されるこの町で、人混みを避けて寺社巡りや食事を堪能、京都らしさを味わえると思って来られたらそれは違うからで、「日本三大がっかりにならんとええと心配しちょるんよ」という心情からだ。少なくとも私の友人たちは山口市の魅力を十分知っている。
山口市は山口市だ。
生憎の雨だし、今回は山口市観光はしなかったけれど、なだらかな山に囲まれ 椹野川と一の坂川が静かに流れるこの町の空気を吸い込むだけで、私たちは穏やかでニュートラルになれる。
今回の一番の楽しみは、山口市菜香亭の二階北客間を借りての高校のミニ同期会だ。
大広間に掲げられた26の扁額(書)をひたすら鑑賞する。
かつてこれほど多くの、歴史に名を残した人物が来亭し揮毫されたという事実も凄いことだ。
明治から平成へとつながる歴史の時間に身を委ね、今、目の前にある筆跡に故人の為人を想像する楽しさよ。
午後一時少し前になったので、二階へと上がる。
高校卒業以来の再会の友もありで、よく会っている三人以外とは何十年振りに会った同期の友、時間の隔たりは関係なく、話が弾む弾む!
そろそろお開きにしよういね。
また会おうねと各自帰路につく。
私は湯田方面に帰る友人の車に乗せてもらってホテルへ帰る。
さてさて
一人の晩ごはんをどこにしよう?
もう一度行って見たかった小熊屋咖喱に決めた。
一年振りの再訪です。
一時間少しのディナー。
一人でじっくり楽しめたディナー。
旅三日目
中原中也記念館
中也小学生のころの習字、日記、添削の跡が残る草稿、初版本など、中也の30年の生きた息吹が伝わる資料を見て、書棚から中也関連の書籍を取り出して読書をする。ここはそんな時間が過ごせる場所。
二階で放映されている中也の生涯を描いたDVDを観てからまた資料を見て回るのもおススメ。吉行和子のナレーションが秀逸。
向かいの狐の足あとでお茶時間
ちょうど防府駅行きのバスの時間となり、バス停に急いだ。
どうして山口市が選出されたのかという記事を読んだ。
山口市を推薦した米国出身で鎌倉在住のライター、クレイグ・モドさんの
「山口は日本の素顔を見るのに向いている」
「その国の文化や住民と静かに向き合えることが大事」
という発言に、ああなるほどねと頷いたのだった。