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「超絶技巧、未来へ!明治工芸とそのDNA」 「モネ 連作の情景」
気になっていた展覧会を三井記念美術館と上野の森美術館で観た。
高校時代の友人といっしょだから展覧会の後、日本橋でランチをして、最後は上野精養軒でお茶をするという贅沢時間。
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日本橋三井タワー1階アトリウム
三井記念美術館 「超絶技巧、未来へ!明治工芸とそのDNA」
午前11時、次々と来館者、圧倒的にシニア多し。
2017年9月、「驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ」での、気が遠くなるような長い時間がかけられたであろう作品が放つ存在感に圧倒されたことを今でもはっきりと記憶している。
今回もまた、若い作家や明治の匠の研ぎ澄まされた感性と唯一無二の 渾身の作品に感嘆したのだった。
「超絶技巧!明治工芸の粋」展、「驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ」展で多くの観衆を魅了した「超絶技巧」シリーズの第3弾。
金属、木、陶磁、漆、ガラス、紙など様々な素材を用い、孤独な環境の中、自らに信じられないほどの負荷をかけ、アスリートのような鍛錬を実践している現代作家17名の作品、64点を紹介。いずれも単に技巧を駆使するだけでなく、「超絶技巧プラスα」の美意識と並外れたインテリジェンスに裏打ちされた作品をセレクト。
これらの作家を刺激してやまない明治工芸の逸品も併せて展覧。進化し続ける超絶技巧の世界の展覧会。
【木彫】福田亨(1994年生まれ)
なんと精緻な作品なのだろう。
1994年生まれ。この時代の寵児である1994年生まれの超人たちを思った。
羽生結弦、反田恭平、大谷翔平。
アーティストもアスリートという言葉を使って賞賛することもあるけれど、まさしく稀代のアスリートだ。
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蝶の羽にはそれぞれの木材が持つ自然の色を組み合わせ、
彼が独自に編み出した立体木象嵌という技法で制作
(黒檀、黒柿、柿、真弓、朴、苦木、柳、ペロバローサ)
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さらに研磨を重ねツヤをあげて表現している
と書くは易し
蝶が載っている台座の部分は、一木で彫り出されている
【木彫】大竹亮峯(1989年生まれ)
月光 2020年
一年に一度、夜にだけ大輪の花を咲かせる月下美人を表した作品。
超絶技巧の木彫りの月下美人だけでも驚くのに、この花が固い蕾から開花するというからくりに、常人は理解不能となり、ただ、う~ん凄い、凄すぎると唸る。
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水が注がれた蝙蝠の2枚の羽根をモチーフにした花器に生けられた月下美人は
蕾の状態から大輪の花が開き、鹿角の花弁の独特な質感を放っている
【ガラス】青木美歌(1981–2022)
あなたと私の間に 2017年
「この作家さん、若いのに亡くなっていらっしゃるのね」と友人。
「ほんと、41歳とは、なんて若い」
モノクロの深層な世界から輝きを放つ作品の前で立ち止まる。スマホを向けて写真を撮る。
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その裏からは根が下に向かって伸び、
作品自体が空中に浮遊しているような作品
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繊細極まりない透明ガラスのインスタレーションで表現される
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卓上のバーナーでガラスを溶かしながら制作していく
バーナーワークの技法で作られた作品
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あなたと私の間に / Between YOU and I
-あなたがただいてくれたことに感謝できた日から、あなたと私の間に根づいて育っている-
地下室のような部屋に、ガラスのテーブルと窓が構成されている。
テーブルからは粘菌のような透明な植物が増殖し、テーブル下面からはその根が下に向かって伸び、床にしたたり落ちまたそれが新しく伸び始める。その胞子が漂着したのか、窓からも植物が生え、後面からは同じく根が伸びている。
人と人の関係性は、何かをしてくれたから、何かをあげたから、という物質的やりとりによって深まるのではなく、ただ自分と共にいてくれる、そのことに感謝する気持ちがあればそこに根づき、育っていくものだと考える。関係性は、双方から生まれたものではあるが、双方に対して直接的には何も与えない。生まれ、変容を受け入れながらもただそこに在り続ける。
「作品を観た瞬間、萩原朔太郎の竹という詩が脳裏に浮かんだのよね」と友人。
さすが45年間、高校国語教師を務めたひとは知識量が違う。私はいつも刺激をもらうばかりだ。
たまたま作品の近くに青木美歌さんのお母様が友人の方たちと来館していらっしゃり、少し話をすることができた。
作品から感じとったことを友人と二人、言葉で伝える。
合唱と英語を教えていらっしゃるそうで
「だから美歌という名前を付けたのです。美香は札幌で育ったんですよ」
とおっしゃる。
「作品を観て、バロックという言葉が浮かんできました。雪の結晶が美歌さんの幼いころから感性として育まれたのでしょうか」
と私が感じたことも伝えた。
「巡回展のすべての会場に足を運び、娘に会いに行くんですよ」ともおっしゃる。
「多くのかたたちに娘の作品を観てもらいたいのです」ともおっしゃった。
早逝の作家さんの生きた証である作品とお母様の想いに胸が熱くなった。
写真撮影が出来なかったけれど、盛田亜耶さんの切り絵作品「ヴィーナスの誕生II」も自己の内面や世界を凝視する哲学のオーラが漂っていて、素晴らしかった。
また円山応挙「虎図」(大英博物館所蔵作品)に刺激を受けて制作された明治の刺繡画「虎図」(無名)の横に展示してあった応挙「虎図」のインパクトあるキュートさにも参ってしまった。
※2024年も巡回展は続きます。
ぜひ足をお運びください。
<巡回先>
富山県水墨美術館 2023年12月8日(金)〜2024年2月4日(日)
山口県立美術館(予定) 2024年9月12日(木)~11月10日(日)
山梨県立美術館(予定) 2024年11月20日(水)~2025年1月30日(木)
その後、予約していた近くのレストラン Farsi largo!へ
午後12時半の予約。
ネットでの高評価とコスパのよさでチョイス、ここが大正解の隠れ家的美味レストラン!
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国産木材テーブルは秩父の木工作家牛腸公男氏
一輪挿しも日本のガラス作家作品
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柿入りのシャキシャキリーフサラダ
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illyのデミタスカップには魚のスープ~アーリオオーリオソーストッピング
エボダイのフリット
金目鯛カルパッチョ
どれも魚の旨みを最大に引き出した料理!
二人とも「どれもとってもおいしい!」
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国産の旬の浅利のスパゲッティ
器は一輪挿しと同じ作家さんの作品
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浅蜊のエキスをスパゲッティがちゃんと纏っている
下に自家製トマトソースが潜んでいて自分でパスタと合わせていただく
これもきちんとおいしい
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手打ちタリアテッレの国産合いびき肉と生椎茸のミートソース
濃くなく脂っぽくなく
最後まで味わい深い手打ちタリアテッレ
生椎茸がいい脇役です
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北イタリア・ピエモンテ州の郷土菓子 Bonet
洋梨のコンポート
私はカモミールティー
まったく予備知識もなく伺ったレストランだったから余計に満足感も高く、日本橋に来たら再訪したいお店。
オーナーシェフの辻 秀永さんの料理のファンになりました!
次に上野の森美術館 「モネ 連作の情景」へ向かう。
午後2時30分からの予約、夫も合流。
平日だというのにかなりの入館者、若い世代が多い。
展示作品がすべてモネ、”100%モネ”の贅沢な展覧会ということで、人気展覧会のようだ。
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建物の壁面に展示される大きなポスターパネルが好きです
会場に入ると、まず壁と床に投影されたジヴェルニーの庭の睡蓮池を歩いて渡る趣向。
池の水面を歩くと波紋が現れ、水音が聴こえるという凝った演出。
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立ち止まって全体写真を撮ることは出来ず
誰もいない一瞬、水面を写す
いいタイミングで11月11日の「【美へのまなざし】一歩前へ アトリエ舟から波間から モネの対象に迫る力」 という新聞記事を読み、なるほど、こういう視点でモネの作品に向かいあえばいいんだと納得、取り上げられた作品モネのアトリエ舟、ラ・マンヌポルト(エトルタ)の前に立ち止まり、一層深く観ることができた。
展覧会で実際に作品を前にしたときに感じるのは、カンヴァスに残る筆跡、絵の具の重なり方、作品の大きさなど、画像や映像画面からでは伝わり切らない作品の持つ生命とでもいえる気のようなものだ。
橋の向こうの川岸には工場の煙突が並び、煙がたなびいている。
展覧会で実物を観るまでは(ああ、工場の煙突風景か、そう好きではない風景画だな)と思っていたけれど、連作を前にすると、時間や気候と共に変わりゆく橋を包む光の粒子が見事にカンヴァスに写し取られていて、曇り、夕暮れ、日没の色彩の中で揺らぐ空気や風を肌に感じ、魅せられた。
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テムズ川に架かるウォータールー橋を
モネはわざわざ霧の深い冬に訪れて
霧の中で変化する光を観察して描いている
会場では三作品が展示されている
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掲載した作品の画像は照明が作品のガラスに当たって
実際の作品とは色彩、濃度が違っています
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チャリング・クロス橋もテムズ川に架かる橋で
モネはチャリング・クロス橋も連作で描いている
第5章「睡蓮」とジヴェルニーの庭
モネは睡蓮を主題とした作品を約250点残しているそうだ。
睡蓮そのものから、季節や時間、天候によって刻々と変化する睡蓮の浮かぶ池の描写へと彼の興味は移っていく。
1897年頃から1900年までの第1シリーズとそれ以降の第2シリーズ。
睡蓮の花と葉がクローズアップされた1897年から1898年に制作された「睡蓮」も、実物を観るまでは、粗くて彩度も暗い絵だなと思っていたけれど、実際に観るとモネの睡蓮への視線と観察の集中力の凄さに圧倒された。
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白の絵の具の筆跡がヴィヴィッド
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赤茶色や紫、青で描かれた花の輪郭から生命感が伝わってくる
第2シリーズに描かれているジヴェルニーの花の庭と水の庭も好きな作品だ。
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葉の質感や水に浸かった感じまで伝わってくる
ジヴェルニーでの生活で絵の制作とともにガーデニングも、モネが情熱を注いだという。
世界中の珍しい植物の種を取り寄せていたともいう。
日本各地にはジヴェルニーの庭を模したガーデンが作られているぐらいだから、日本人のモネ人気は絶大だ。
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睡蓮の花が楚々と可憐
夢中で鑑賞した。
ジヴェルニーとオランジェリー美術館へと心は誘われている。
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1870年のサロンに落選した作品
希少な「モネの黒」を味わえる初期の代表作
それにしても後ろの黒いドレスの来客の女性を描いたほうがよかったのかしら、と凡人は思う
よく歩いたから上野精養軒でお茶しよう。
午後4時前。上野精養軒本店レストランがいいねと上野恩賜公園を歩いてお店に向かう。
陽射しが暖かいのでオープンテラスの席でお茶。
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超豪華 ♪
シャインマスカット好きにはたまらない旬パフェ
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「何十年ぶりかしら 懐かしくておいしいわ」
深まる秋のころの不忍池を眺めながらの、ゆったりお茶時間。
そろそろ陽も傾いてきたから帰りましょうか。
今回も名画と美味なる料理、潤いのある佳き一日でした。
帰宅して萩原朔太郎の「竹」を読んだ。
竹
竹ますぐなるもの地面に生え、
するどき青きもの地面に生え、
凍れる冬をつらぬきて、
そのみどり葉光る朝の空路に、
なみだたれ、
なみだをたれ、
いまはや懺悔をはれる肩の上より、
けぶれる竹の根はひろごり、
するどき青きもの地面に生え。
竹光る地面に竹が生え、
青竹が生え、
地下には竹の根が生え、
根がしだいにほそらみ、
根の先より繊毛が生え、
かすかにけぶる繊毛が生え、
かすかにふるえ。
かたき地面に竹が生え、
地上にするどく竹が生え、
まつしぐらに竹が生え、
凍れる節節りんりんと、
青空のもとに竹が生え、
竹、竹、竹が生え。
○
みよすべての罪はしるされたり、
されどすべては我にあらざりき、
まことにわれに現はれしは、
かげなき青き炎の幻影のみ、
雪の上に消えさる哀傷の幽霊のみ、
ああかかる日のせつなる懺悔をも何かせむ、
すべては青きほのほの幻影のみ。
長文noteです。
二回に分けるべきかもしれませんが、美術展評などという大それた内容ではないですし、大人のお出かけの一日という記事なので、ランチと二つの展覧会記事にまとめました。