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東京都庭園美術館 YUMEJI展とインドネシア料理


生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界


東京都庭園美術館で今、竹久夢二の展覧会が開催されている。

 旧朝香宮邸1933昭和8年、皇族朝香宮家の自邸として建てられたアール・デコ様式を極めた芸術作品ともいえる邸宅で、戦後は吉田茂外務大臣公邸(のちに首相公邸)として使用され、その後白金迎賓館の役割を担い、結婚式場としても一般に開放されていたこともある。
1983昭和58年、東京都庭園美術館として開館、実に数奇な運命を持つ国の重要文化財だ。

そのアール・デコの館で竹久夢二の作品世界がどんな風に演出されているのか、芸術新潮7月号で展覧会の様子を写真でみたこともあり、実際にみてみたくて、高まる期待を胸に訪れた。

15:51
目黒通りから正門を入り
旧朝香宮邸(東京都庭園美術館)へと続くアプローチ
両側にはよく手入れされた緑の木立
右隣は自然教育園という緑に囲まれた立地
小鳥のさえずりに迎えられる


美術館入口から旧車寄せとアプローチを見返る
手前にはイヌツゲ、サツキ、キャラボクの植栽
ブロンズの狛犬は朝香宮鳩彦王が骨董店で自ら購入されたものだそうだ


正面玄関
第一応接室の扉に設置された展覧会ポスター
竹下夢二 花火 1924大正13年  木版画 


床一面のモザイクは細かい天然石で制作されている
天井の照明もアール・デコ意匠


「大正ロマン」を象徴する画家であり、詩人でもあった竹久夢二たけひさゆめじ
1884明治17年に岡山県で生まれた夢二は、正規の美術教育を受けることなく独学で自身の画風を確立し、「夢二式」と称される叙情的な美人画によって人気を博しました。
グラフィックデザイナーの草分けとしても活躍し、本や雑誌の装丁、衣服や雑貨などのデザインを手がけ、暮らしの中の美を追い求めました。

夢二の作品は、没後90年を経た今もなお多くの人々を魅了し続けています。

本展は、生誕140年を記念して、最新の研究に基づく新たな視点からその生涯をたどります。
このたび発見された大正中期の名画《アマリリス》、滞米中に描かれた貴重な油彩画《西海岸の裸婦》、そして夢二を看取った友人に遺したスケッチ帖や素描など、初公開資料を含む約180点の作品を夢二郷土美術館コレクションを中心にご紹介します。

展覧会HP 概要より引用


ポスターより アマリリス
1919大正8年頃 油彩、キャンバス


今回の展覧会が再発見後初の一般公開となる油彩画 アマリリス

長らく行方不明だったが生誕140年を前に発見されたというニュースを報じる新聞や雑誌などでその油彩画の写真をみたとき、ずいぶん暗い絵で手がとても大きくてさち薄そうな女性の絵だなという印象を抱いた。

会場に入り、まず目に飛び込んでくるのがこの作品。

アンリ・ラパンデザインの香水塔を左に眺め、大広間に設置されたブルーグレイのパネルに飾られたアマリリスが訪れた人々を惹き寄せる。

見事な展示。
作品を生かした展示がとにかく素晴らしい。
邸内のカーテンはすべて閉じられ、アール・デコ意匠の照明器具の灯りが邸内をやわらかく照らすタイムトリップしたような空間で、作品の持つ憂いと儚さが伝わってくる。実際に観る前に抱いていたイメージが覆った。
モデルはお葉といわれている。

大客間に進む。
設置されたすべてのパネルが邸宅空間にぴったりと馴染み、夢二の作品がまるで生命を吹き込まれたようにオーラを発散している。

旧朝香宮邸でのYUMEJI展開催を発案、企画され、見事実現された学芸員、展覧会関係者の方々に拍手を送りたいと思った。
またずらりと並ぶ夢二の掛軸の表装のモダンでかわいいこと!

扉から大食堂の展示を見る


憩い(女)
昭和初期 絹本着色
夢二が1924大正13年に建てた少年山荘のテラスで
お茶するモダンガール
葡萄棚、赤いワンピース、黒髪のショートヘア


大食堂
ルネ・ラリックのシャンデリア
アンリ・ラパンの壁画
レオン・ブランショの壁画レリーフ
それらの意匠を生かした作品展示


大食堂のルネ・ラリックのシャンデリア  パイナップルとざくろ
大食堂の意匠は食にまつわるモチーフでまとめられている


一座の花形(みなとや版)
1916大正5年頃 木版、紙


霜葉散る
雑誌「婦人グラフ」第3巻 第10号 口絵
1926大正15年 木版、紙


山・山・山
「婦人グラフ」第4巻 第2号 口絵
1927昭和2年 木版、紙


多くの女性を魅了した「婦人グラフ」
アール・デコを意識したモダンなデザインと鮮やかな色使い
和装の夢二式美人のなだらかなラインの横顔
夢二が描く女たちは瞳も魅力的だけど
睫毛がとてもチャーミング、特に下睫毛の描き方が好き
アイメイクは今でも真似できますね


湖畔舞妓図
昭和初期 紙本着色
小食堂での展示



天地は夢二の千代紙のデザインが使われていて
夢二ならではの掛軸に仕上がっている


第一階段を上り二階へ
手摺りと腰壁はジグザグラインで
ここにもアール・デコの意匠
床から天井までの高さに設置された照明もアール・デコの意匠


二階踊り場
右側にはソファが置いてあり
休憩することができる


封筒「どくだみ」「つりがね草」「菜の花」
大正期 木版、紙
拡大して展示


姫宮居間
サーモンピンクの大理石が使用されたマントルピース
その上には楕円形の鏡


千代紙「桜草」(みなとや版) 「蔓草つるくさ」(みなとや版)
夢二が1914大正3年に開店した「港屋絵草子店」で扱っていた夢二デザインの商品群
千代紙、半襟、浴衣、帯など
どれも大人かわいい
(展示は千代紙と半襟のみ)


多岐にわたり展示された作品は、やはり実際に目にしてこそ作品に宿る生命が伝わってくるというもので、小さなイラストひとつ、躍動感のある身体の線にまで魅入りながらの展覧会だった。
マルチアーティスト竹久夢二のほぼ全貌を知ることができた貴重な展覧会でもあった。

本館(旧朝香宮邸)から新館に通じる渡り廊下から芝庭を見る


ミュージアムショップ前のテラス
小雨がぱらついてくる

新館での展示を観て、正面玄関に戻る。

ルネ・ラリック 装飾パネル


正面玄関 扉 1933年
朝香宮邸のためだけのオリジナルデザインとして制作された正面玄関ガラスレリーフ扉
当初のデザイン案では裸体の女性像が描かれていたが、
日本側からの要望で着衣に変更されたそうだ


17:10
まるで大正浪漫の世界にタイムトリップしたようなひと時だった


芝庭から本館建物を撮る


日本庭園
小雨が池に降り小さな輪がひろがる


受付でもらったジュニアガイド
かわいいが詰まったリーフレット


東京都庭園美術館正門を出て、上大崎交差点の角の銭湯のあるビルへとほんの五分歩く。
CABEチャベ目黒店が見えてきた。


CABEチャベ目黒店


五時半予約、開店と同時に入店。
CABEチャベとはインドネシア語で唐辛子のこと。

ビルの階段を上って二階に上がりドアを開けると、ココナッツと大蒜やハーブ、スパイスが混じり合ったほのかに甘い匂いが私たちを包む。
「わぁ、東南アジアの香り!バリの香りだ」とテンションが一気に上がる。

雑然とした都会のビルのドアを開けると
お店はノスタルジックなアジアの空間


天井から吊り下げられたランプの灯りが
やわらかく店内を包む


壁に飾られた絵画、調度品、いい具合に馴染んだ木のテーブル
私たち、今インドネシアにいる?と錯覚する空間



メニューとえびせん Kerupukクルプッがテーブルに置かれる
フレンドリーな笑顔で気遣いも細やかなホールスタッフのインドネシア人女性
ジャワ島出身だそうで日本語会話はほぼ完ぺき



何はともあれBINTANG ビンタンビールでしょ
BINTANG ビンタンとはインドネシア語で星のこと
ビール瓶には赤い星のラベル✩
かるい喉越しで苦みもいい具合に残るビールです


夫のビール
GARGERYガージェリーX ale
飲食店でしか出逢えない、瓶内熟成ビール
フルーティーでコクがあって香り高いエールらしいビール


サテ ウダン海老
そりゃ頼むでしょ ほの甘なタレで焼かれた海老は文句なしのおいしさ


PASTELパステル JALANGKOTEジャランコテ
春雨、野菜、卵、鶏肉を包んだサクサクパイ生地フライ
マカッサル風ソース添え
やさしいふんわり味


これを食べたかったのです!
RENDANGルンダン SAPI  
牛肉のスパイス煮です
牛赤身肉を各種スパイスとココナッツミルクで煮込んだ料理
(孤独のグルメでCHABEとルンダンが紹介されたらしい)


アラック(インドネシア焼酎)が合う合う!
とろけるやわらかさの牛肉ではなくて
だけどしっかり煮込んである
口に含んだ後で辛さが追いかけてくるスパイシーさ


私たちはもっとスパイシーにしたくて
SAMBALサンバルMATAHマタ(バリ島の激辛生サンバル)を頼んでかけて食す
ほら、やっぱりこれで正解
ルンダンは2017年にアメリカのCNNが発表したThe world's 50 best foodsで1位に選ばれたらしい
これ絶対うちで作ろっと!


KAREDOK サラダ感覚の生野菜に自家製ピーナッツソースと木の実トッピング
もう少し塩気がほしいかな?


サテ リリッ 鶏つくねの串焼き
私はレモングラスの茎を串にして焼いたのが好きなんだけど
それはなかったですね
だけどもちろん美味しい!


6時過ぎには予約客や予約なしの客でほぼ満席となった店内
近くにインドネシア共和国大使館があるからか
在東京インドネシア人や欧米人客がかなり多かったです


久しぶりのインドネシア料理に懐かしさを抱き、また来たいねと七時になったので店を後にした。

えっ?まだほのかに明るい?

後日

アール・デコの邸宅での夢二の作品空間を 少女孫娘たちにも体験させたくて、16歳JKと10歳、大人三人の合計五人で金曜日夕方から再訪した。

午後五時目黒駅待ち合わせ、金曜日はサマーナイトミュージアムなので午後九時まで開館。
午後六時以降は仕事帰りの人たちが次々と来館、中々人気のようだった。

19:20
夕闇に包まれた館もまたいいものでした


日本庭園も照明で日中とは違う風情


サマーナイトミュージアムは8月23日金曜日まで開催されています
お薦めです
展覧会の後、近くのローマ伝統料理のトラットリアでディナー
さちいっぱいの佳き時間でした


夢二-千代ちょこの記事です。 ↓


2023年10月 東京都庭園美術館訪問記事です。↓



芸術新潮 2024年7月号 
特集 大正のマルチアーティスト 「愛され夢二の一生」

嫌われ松子の一生?を連想した意味深なタイトル



お葉というモデルがいた:夢二、晴雨、武二が描いた女

こちらもぜひ一読を!
膨大な資料から読み解いた、かなり辛辣な夢二像と自由恋愛などから大正時代が垣間見れる一冊です。

竹久夢二、責め絵の伊藤晴雨、洋画の藤島武二の3人の天才が愛した伝説のモデル・お葉。画家とモデルの抜き差しならぬ関係を、膨大な資料によって読み解き、大正という時代に生きたモデルの生涯を明らかにする。
画家たちは彼女のなかに何を見たのか。
大正という時代に生きた希有なモデルの女性評伝。

Content (from MARC Database)より引用


お葉をモデルにした藤島武二の「芳蕙」 1926年
画像はhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%B3%B6%E6%AD%A6%E4%BA%8C から引用



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