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通学路タイムトラベル

 今日久々に、帰り道で母校の前まで来た。数年前の学生生活に思いを馳せつつ、ふと昔帰り道でよくやっていたやつをやることにした。
 その名も「活字歩行法」その名の通り、学校からの帰り道を小説を読みながら歩くという、なんとも危険な道楽だ。実際、当時は何度もコケた。
 案外コツは忘れていないようで、一応歩きながらでも読める。ただなんとも、労力の割に恩恵が少ない読書法だ。風でページは捲れるは、寒さが手に沁みるはであんまり良いものじゃない。
 それでも半ば意地になって読み歩いていると、だんだん周囲が暗くなってくる。どうすれば本に光が当たるか、辺りをキョロキョロ見回す。
 月と目があった。雲に遮られていても真っ直ぐこちらを見つめてくる。なんだか随分久々にあった気がする。本を持つ右手が、数年前の自分とピッタリ重なった。
 本に栞を挟んでポケットにしまう。家で読めばいいや。

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