人生にもしも...なんてないけど ⑭夢 3人乗りの船 母が決めた最後
あの長いものが、すれ違いざまに”ぴとーーーっ”とくっついてきたけど、あれは母だったのか?(①)
母もへビが大嫌いだったけど巳年、あの時、思わずぞぞぞーってしたけど、母がありがとうね~とすりよってお別れをしていったようにも思えてきた。
確か、土曜日に寝てみたはず。今日は月曜だから、1日前か?
急いでいるように見えたのは、あの世への渡し舟に間に合うようにだろうか?
以前、病院に勤めたことがある方が、
「あの世へ渡るお船には席が3つあるんだって、だから、人が亡くなる時3人続くことがあるんだよね」って言ってたっけ。
医師が区切っていた8分はとうに過ぎている。
処置室から「体から離れてください。離れてください。」という合成音の繰り返しが聞こえた。
ああ、母は自分で決めて旅立つのか…。
生死は自分で決めてくるって聞くもんな。
寿命なんだね。
母が決めたんだね。
そんなこんなことを考えていたら、父と弟が到着した。
状況を説明するのを聞きながら、いつか…とは思いながら、でもまだだと思っていただろう”母の終り”が現実味をおびてきているようだった。
別室で誰かに状況説明をしていた施設のナースさんも廊下に現れ、処置室の医師に家族がそろったことを伝えてくれた。
医師はすぐでてきて、
「さっき、一瞬復活した感じがあったんだけど、やっぱりその後も自発呼吸はないですね…」と父に状況を説明すると、父と弟も招き入れ、母の状態を確認させた。
「さっき、注射もしたからこんな状態ですが、心臓マッサージはすでに1時間以上続けているし、これはもうやめてもいいですかね?」
と父に確認すると、ゆっくり救急隊の方達が母から離れた。
救急隊の方達に軽く会釈をして、再び家族は廊下にでた。
ちょっとして、再び中に呼ばれると、いよいよ、最後のお別れだ。
母の周りに3人が散らばって立った。
生気のない表情の母を見た。もう肉体から離れて天井のあたりに浮いているのかな?
そして、そばにあるモニターの波打っている線の動きをチラッと見た。
すると、医師は(そうこれがね、という感じで)モニターの波線を指さし、
「これがだんだん…とね…」
と、皆が医師の指先のモニターを凝視し息をのむ。
ピーーーーと。
モニターの波線が緩んだかと思うと一本の線となった瞬間、今度は一斉に皆が壁時計を見上げた。医師が時間を読み上げたが、モニターの時計の時間と違っていたのでナースがその時刻を読み上げたが、医師は壁時計の時刻を死亡時刻とした。
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