塾で本領発揮、時々撃沈(6)
長男息を吹き返す
長男は今、学校から帰って30分だけ休憩したら、お弁当を持って塾に向かう生活を送っている。しかも週6でだ。それでも塾から帰宅すると、表情が晴れやかで、充実した時間を過ごしたことが伝わってくる。
帰宅が22時を過ぎるため、お風呂から上がったら速攻で寝かせようと思っていても、長男は疲れを微塵も感じさせない様子で「お願い!寝る前に〇と△だけ調べさせて!」と寝る時間を交渉して授業で疑問に思ったことを調べたがったりする。
塾の授業がない日にも塾に行くのは、宿題をやるためで、個人塾なので部屋数が少ないらしく、長男が宿題をやりに行くと大抵上のクラスが授業を受けていて、長男はその後ろの方の席に座って宿題をやっているらしい。
そうすると、理科などは長男が発言したかったら参加させてもらえるらしく、誰も答えられなかったりすると、先生の方から長男を当ててくれることもあるそうだ。
下級生が答えたら上級生に何か言われないのかと訊くと、「黙ってろ」と笑って言われることがあるらしい。「でもそういう事言うと、それ言った方が怒られるんだよね」とにこにこしている。長男は、異学年に混ざって知的な刺激を受けていた。
塾に通わせて良かったこと
長男は塾のクラスで中間くらいの位置からスタートし、徐々に成績を上げるようになった。そして模擬テストで数千人の中で総合1位も取った。この時は先生からも、クラスからも盛大に祝ってもらったそうだ。
帰宅して報告してくれた際、「〇〇先生と△△先生に教えてもらったから取れたんだと思う」と、先生への感謝の気持ちがすっと口をついて出ていた。長男の心の成長をとても感じた一言だった。
塾が長男にとって、知的好奇心を満たすことができたり、自尊心が高められる場所になっていることはとても幸運だったと思う。
長男に、公立の小学校と比べて塾は何がどう良いのか訊いてみたら、「考えさせてくれるところ」と言っていた。小学校だと先生が割と早めにヒントを出すと感じているようで、長男にとっては発言のチャンスなのにすぐヒントが出されてがっかり、と感じることになるらしい。長男にとっては自分がそこにいる意味を感じにくくなるし、他の生徒さんや先生からしたら、長男の独壇場ではつまらないということになるのだろう。
塾だと先生は時間を与えてくれて、生徒に考えさせようとするスタイルなので、問われているレベルも高く刺激的だし、考えて発言して良い線を行っていたりすると、たまらなく興奮するのだろう。それに「塾だと埋もれない」そうだ。”埋もれる”がちょっとしたバズワードになっているのだが、ここでは目立つことが出来るという意味で、考えたことを発言する機会に恵まれていることを言っているようだった。
他にも、塾で休みの子が多くて、長男含めて数名しかいない時に授業がいつもより早く進んだりすると、「今日いつもの2倍のペースで進んだんだよ!」と嬉しそうにしている。先生が子供たちのペースも見ながら授業の内容や進め方を柔軟に変えてくれるのだと思う。授業が型通りでなく、さらに双方向であることが良いらしい。
また、塾では長男のする質問は、「知的な脱線」と言ってもらえ、肯定的に受け止めてもらえているようだ。
そして塾の先生の指導によって、長男はそう簡単には投げ出さない忍耐力がついたのではないかと思う。今まではやりたいことはやるけど、やりたくないことはやらなくて済んでいた。それが、やりたくないことでも一度は意義を考えてみたり、自分の気持ちを克服する訓練もできたのではないかと思う。これは親だけでは身につけさせることが難しく、そのときは無理矢理やらせたとしても内面からの変化が伴っていなかったので、本当にありがたい。
親にとっても、宿題の管理からほぼほぼ解放されたと言って問題ないと思っている。塾で宿題を終わらせて、先生の確認ももらって返ってきてくれれば、その後にノートを無くしたとしても宿題をやっていないと疑われるリスクはなくなる。宿題の質に問題があっても、その場でなぜどのように問題なのか指摘してもらいやすく、長男も一人悶々と悩むことも減ったのだろうと思う。
日曜だけは家で宿題をやるので、まだ落ち着かないというか、ちゃんとやれているのかなと思って気にしてしまうが、以前のように宿題でもがき苦しんでいる様子は見なくなった。割と集中して取り組むモメンタムができているのではないかと思っている。一旦はめでたしで良さそうだ。
(完)