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6歳 1度目の転機・祖父編

比較的ここまでの人生は記憶は無いなりに平和だったんだと思う。
6歳の時、母方の祖父が死んだ。
定期的に会ってはいたはずだがこれもまた記憶は無い。

死因はダムへの転落死だった。

村中で知らない人は居ないと言われていた祖父だった。
昔話でも何でも無く1kmは並んでいるだろうと思われる、自宅に面した道路に飾られた葬式の花輪の写真がアルバムに残っている。

祖父は自営業を営んでいた。
1度倒産し1億程の借金を抱えたそうだが、それをトラックの運転で数年で完済した。
また祖父は2枚目だったようで飲み屋街にあるクラブではファンクラブがあったと母は語る。
アルバムに写された祖父の姿は、ベージュのスーツに同色のハットを合わせ俯き加減でタバコを咥えていて、ヤクザを思わせるような渋さがあった。
更に猟師としても猟友会の親方のように精を出していたらしく他県にまで渡り猟をしていたようだ。


ダムに転落してから約1ヶ月の捜索を経て遺体が引き上げられた。
皮肉なことに生前では無く、捜索に着いて行ったことや引き上げられた後泣き叫ぶ親族に見送られながら救急車が走り去る瞬間の記憶があるくらいだ。
顔の皮膚がべろりと剥げていたとか、包帯でぐるぐる巻にされたとか生々しい話もやはり聞く。


記憶すら無い人だけど、祖父を誇らしく思う。
私の中にもその猛々しい血は生きているのだろうか。

そんな名の通った稼ぎ手でしかも2枚目であり、悲劇的な死を遂げた祖父へ、私の人生、産まれ、この家の因果のようなものを考える時、彼の記憶は無くとも、思いを馳せずにはいられない。

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